サービス・マネジメント論第7回
質問への回答
エンパワーメント
・マクドナルドの場合小さい部分でのエンパワーメントといえるのでしょうか。
・ディズニーランドのような大勢の人が働く場所でも権限委譲はありますか。
いずれもYESです。
・権限を委譲された人が失敗した場合、責任は経営者が取るのですか。
・権限委譲にはリスクがあると思いますが、そのフォローはどのように行っていますか。
本人に故意や重大な過失があれば別ですが、そうでない時に本人にすべての責任をかぶせない、結果だけで本人を評価しないことが重要です。個別にはリスクが生じる場合があっても、それはいわばわりきって受け止めて、全体として権限委譲によって広がる多様な可能性をくみ出すことが重要です。
インターナル・マーケティング
・ハッピーな従業員は顧客満足を高めるとあるのですか、どのような顧客満足が高まりますか。
具体的にどのように顧客満足が向上するかはそれぞれによって異なるでしょう。「ハッピーな従業員」とは、仕事を通じて喜びややりがいを感じることができる条件のもとではじめて可能です。
・正社員とパート・アルバイトでは仕事に対する意欲や欲求、満足感にはどれくらい差がありますか。
いちがいにはいえないですが、正社員は身分保障があるのでそれだけ安心して仕事ができるという側面があります。
・公共サービスにおいても従業員満足度は必要とされますか。それにはマニュアルが多いなどの障害があると思うのですが。
今日創造性が強く求められている公共サービスにおいて従業員満足度は必要です。TDLにみられるように、マニュアル的な拘束があることと従業員満足度の向上は必ずしも矛盾しません。むしろ、基本的な業務がマニュアルで明確に規定されているからこそ安心して創造性を発揮できる側面もあります。きちんと台本があってこそアドリブが生きるようなものです。
・ハッピーな従業員をつくるために内部品質を高めるとのことですが実際には誰がそれを行っているのですか。
直接的な責任は管理者(マネージャー)にあります。
・従業員の質や意欲の向上は顧客との相互作用で生み出されるのでしょうか。
そういう面は強くあります。
・身近なサービス業でインターナル・マーケティングをうまく行っている企業はありますか。
よく取り上げられるのはTDL(OLC)、日本マクドナルドでしょう。
・従業員満足のためのインターナル・マーケティングはどの程度企業に浸透しているのでしょうか。
今日なお十分とはいえないでしょう。
スマイル0円
・マクドナルドの笑顔をただで提供しているが実際はただではないという意味がわかりません。
日本マクドナルドの店舗では、メニューに「スマイル0円」と表記してありました(いまはどうでしょう)。これはもちろん顧客に対するアピールですが、私が言いたかったことは、「スマイル0円」だからといって笑顔はただでつくりだせるものではなく、それにはコストがかかるのだということです。
・マクドナルドのスマイルにかけているコストは具体的にどのようなものですか。
いろいろなマニュアルづくりや、従業員がストレスなく動けるように人間工学的なものもとりいれた職場設計などがそれにあたるでしょう。
サービス・ホスピタリティ
・ホスピタリティとサービス・マネジメントの違いは何ですか、ホスピタリティはサービスの1カテゴリーでしょうか。
サービスは「活動や機能の提供」ですから、ホスピタリティはそのなかで「人をもてなす」というサービス内容をもつ事業分野を示す1カテゴリーといってよいでしょう。たとえばホテル、レストラン、リゾートなどがそれにあたります。
・東横インなどのビジネスホテルもホスピタリティ産業に位置づけられるのでしょうか。
そういえるでしょう。ビジネスホテルにはそれに求められるホスピタリティが当然あります。
・ホスピタリティが充たす基本欲求に公平があります。リピーターと始めてくる客とでサービスの差別化を図る場合、初めて来る顧客に与えるイメージは悪いものだけでしょうか。
公平は単純に同じように扱うということではありません。リピーターと初めての顧客とで扱いに違いがあるのは当然です。しかし、「違う」ことと「差別されている」ことは別な問題であり、それぞれの顧客に「不当に差別的な扱いをうけている」と感じさせないことが重要です。
・デパートなどで店員がしつこく寄ってくるのは日本の昔からの文化ですか、あまり客と接しないようにすることもサービスになりますか。
他国についてすべて把握していませんが、観光地のおみやげ屋のようなものは別として、店員が客につきまとうような文化はあまりないようですね。ただ、客とどのように接するのかというのはその店がどのようなサービスを提供するのかによって決まります。カウンセリング的な販売が求められている場合には、求める顧客にはいろいろな情報提供を行う必要があるでしょう。
ロイヤリティ
・顧客ロイヤリティを高めるためには顧客満足、スイッチング・コスト、人間関係の絆の3つすべてそろうことは必要なのでしょうか。
そうは言っていません。どれか一つの要因でも顧客ロイヤリティが高まる可能性はあります。
期待・満足
・セールだと期待させて、実際それほど安くなかった広告は満足度を下げるマイナスの働きになりませんか。
それはあるでしょう。
・満足をあげるためにあまり期待させない方法もあると思いますが、その場合人が集まりませんがどうしたらいいでしょうか。
そのバランスが難しいのは確かです。詳しい根拠は省きますが、顧客満足の研究では実際のサービス水準よりもやや高い程度の期待を持たせることが適切ではないかという指摘があります。
・アンケート以外に顧客満足度をはかる手段はありますか。
定量的な調査にはなりにくいですが、顧客へのインタビューや、顧客に直接接する従業員からの聞き取りなどがあります。
・顧客の期待とは消費者の視点から言うとイメージと考えていいでしょうか。
イメージに規定される要因はありますが、イメージだけでなく具体的・明確な期待を持っている場合もありますので、いちがいに期待=イメージとはいえません。
その他
・TDLでもいずれリピーターが減ることも考えられるのでしょうか。ウォルト・ディズニーの経営がうまくいっていないと聞きますがTDLも危ないのでしょうか。
アメリカのウォルト・ディズニー社とTDL(OLC)とは直接資本関係がないので、一方の経営状態が他方に直接影響するわけではありません。
・スイッチング・コストに代替性が弱いという意味がわかりません。
ほかの製品やサービスに簡単に代替できるのであれば、スィッチング・コストは下がります。
・ライフ・タイム・バリューについて、一生涯使われる商品やサービスでないと適応できないのでしょうか。
Life Timeとは人間の一生という意味では必ずしもありません。わかりやすいのでそういう例で説明しましたが、より一般的です。反復的な購買や、累積的な付属的・補助的な購買があるような場合をさしています。
・リピーターを生むためには、製品のよさよりもサービスのよさのほうが重要なのでしょうか。
コア・サービスとサブ・サービスのことを思い出してください。
・私はコムサイズムで働いたことがあります。そこではお客さんに必ずサポートをという理念がありどんなお客様でも話しかけなければなりませんでした。そういう理念には疑問も感じていましたが先生はどう考えられますか。
「お客さんに必ずサポートを」ということと、すべての来客に話しかけることは別だと思います。顧客が求めているサポートを的確に行うということであれば、顧客との多様なコミュニケーション・ツール(POP、ちらし、その他も含め)を通じて、あるいは顧客の質問に適切に答えられる条件を広げることを通じて、顧客の求めるサポートに適切に応えることが必要でしょう。
・リピーターが増えることで効率的な運営ができるとありましたがそれが当てはまらないことはありますか。
すべてにあてはまるわけではないのはもちろんです。