サービス・マネジメント論第8回
質問への回答
ホスピタリティ
・ホスピタリティが満たす3つの基本欲求のうち自尊は苦情対応にも応用されますか。苦情対応だった人が「ただひたすら苦情を聞いてひたすら謝る」と言っていましたが自尊になるとは思えません。
苦情対応において自尊は特に重要です。ただ自分の尊大さを示したいがために苦情をねじ込んでくる人がいないわけではないですし、そういう人にはひたすら謝るだけでもよいでしょうが、通常はきちんと対応することが適切です。
・ホスピタリティの3つのうち公平についてですが、常連も新規顧客も同じように扱われていると思わせるにはどうしたらいいのでしょうか。
一概にはいえません。ただ、たとえば常連と新規顧客の両方が店内にいるときに、常連ばかり対応して新規顧客をほっとくのはまずいでしょう。まったく同じように対応しなくてもよいですが。
サービス・リカバリー
・適切な苦情対応からリピーターの獲得になる仕組みがわかりません。
苦情に対して適切に対応できる、という信頼感が得られれば、それはプラスの評価になります。外的条件によって、苦情事案が常に起こりうることが一定の顧客には理解されている業種、たとえば旅行業などではこうした可能性は高いのです。
・苦情対応だけでなくミスを埋めることもサービス・リカバリーといえるでしょうか。
同じことです。
・苦情が財産とのことですがサービス産業すべてにおいて浸透しているのでしょうか。
浸透していないでしょうね。
・スーパーでは苦情を紙に書く形になっているのでお互いが一方的でずれやすいのではないでしょうか。
・ホテルの部屋にあるようなアンケートでは直接対応ができない場合、顧客満足とはならないのではないでしょうか。
立命生協のように、苦情に対する回答を掲示しているスーパーもあります。アンケートでも連絡先が書いている場合や、部屋番号によって宿泊者が特定できる場合個別に支配人が手紙を送っているところがあります。
・苦情により対応したけれど次回に「あの時はしてくれたやん」という風になった場合どういう対応が適切なのでしょうか。それによって不公平は生まれませんか。
それは、苦情に対する対応が場当たり的であったり、苦情を述べた人を特別扱いすることでごまかすような対応をしたケースで起こります。苦情を適切に処理するとはそういうことではないでしょう。
・苦情を改善してその改善によって新たな苦情が出た場合そのときはどのような対応をとるべきなのでしょうか
それは当然またさらに改善の参考にすることです。ある水準に達すればその水準ならではの苦情や不満が出てくるのは当然で、不断の改善が必要なのです。
・ホテルの従業員の対応が悪かったので置手紙をしてきましたが何の連絡もありませんでした。顧客の側が苦情を言う際に気をつけることがありますか。
意味のある苦情を言うためには、何が問題なのか、自分がどのような損失(物理的、金銭的、精神的)をこうむったのか、何を求めているのか(保障なのか、謝罪なのか、改善なのか)を明確にすることです。それでなんの連絡もなければ、その程度のレベルのホテルだと言うことです。
・苦情情報のフィードバックは会社にそういう問題解決の組織とかが存在するのですか。
あるところにはあります。
・失敗から学ぶことでコストがかかるかもしれません。改善でコスト以上の利益が出るのでしょうか。
失敗から学ぼうとしないことによって生じる損失のほうが、通常はるかに大きいのです。
・クレームを主張する人はあまり多くないのでその対応による口コミには限界があるのではないでしょうか。クレーム対応はサービスの中で相対的な重要度はそれほど高くないのではないでしょうか。
そんなことはありません。むしろ、表面化しない苦情や不満のほうが口コミで流れやすいことが、苦情を表面化させる努力が必要だという大きな理由です。。
・苦情対応では従業員満足を損なう恐れがあると思いますがそこから従業員満足を得られる工夫はできるのでしょうか。
苦情に適切に対応することがその従業員の評価を高めるような工夫が必要です。
・苦情を言いやすくするにはどんな工夫が必要でしょうか。
それは業種によります。
・テレビや雑誌以外で消費者に広がっている不満をいち早く認識するために企業ができることはありますか。
モニターの採用、アンケート、などもありますが、いちばん確実で重要なのはサービス・エンカウンターにいる従業員からのフィードバックです。
・本当に改善することが無くなり苦情が出なくなったらどうしますか。
そんなことはありえないでしょう。
客観的品質・主観的品質
・客観的品質は自分を含む周囲の人が感じる品質で主観的品質は自分自身が感じる品質と解釈してもいいですか。
違います。繰り返しますが、音楽を聴いたときに「いい音楽かどうか」を判断するのが客観的品質で、「自分が好きかどうか」を判断するのが主観的品質です。これは一人一人によって基準が違うことは当然あり得ます。
あるいは、テキスト201ページの事例にあるように、アメリカで、同じクルマをいっぽうで「アメリカ製」他方で「日本製」として発売したところ、概して日本製としたほうが評判がよかったという事例があります。自動車の場合、仕様やスペックは明確に示せるため音楽と違って客観的品質認識は誰が見ても同じですが、「日本製のほうが信頼できる」という思いこみがあるために、日本製のほうに評価が偏ることを示しています。このような思いこみの作用も主観的品質には関わってきます。
・主観的品質と客観的品質を足した評価と、客観的評価はとても低くて主観的な評価が高く、同じくらいになっても品質評価は同じだといえますか。
上記の回答からわかるように、主観的品質と客観的品質は性格が違うもので、合計するという発想はできません。
・品質が低くても自分の満足が高くて口コミで広げることはサービスのマーケティングに当てはまりますか。
客観的品質が低くても主観的品質が非常に高い場合、個人的に応援することはあるでしょうね。たとえば「あのバンドは演奏は実にへたくそだが、なにか俺には訴えかけてくるものがあるんだ。ぜひいっぺん聴いてやってみてくれないか」とかです。
サービス品質
・信頼品質がよくわかりませんでした
テキスト200ページを参照してください。
・サービス提供者は品質を高めることはできますが、意図的に満足感を高めることは可能でしょうか。
満足感だけを抽象的に高めることはできないでしょう。
・サービスの期待の構造のところで許容できる範囲と受け入れられる水準の違いがわかりません。
期待される最大限(望ましい水準)と、容認できる最低限(受け入れられる水準)の間が「許容できる範囲」です。テキスト204ページの図をみてください。
・サービスの品質が高いほうが会社の利益は高いですか。
品質を上げるためにはコストがかかります。上記のような顧客の期待水準を把握しながら、コストと顧客の期待に応えられる水準とのバランスでサービスの品質は決まってきます。
サービス品質の測定
・サービスを計るときに、主観的、客観的のどちらを重視していますか。
ここで重視しているのは主観的評価です。
・SERVQUALの期待値や実績はどうやって数字に表すのでしょうか(心を数で表すのは難しいのでは)。
SERVQUALについて詳しくはテキスト208~209ページを参照してください。
サービスの価格
・アンバンドリングの意味がわかりません。
・Dellのような方式もアンバンドリングに含まれますか。
アンバンドリングとは、通常パッケージで発売されている製品やサービスを個々の要素に分解して価格を明示し、可能であれば選択肢を示すことで、顧客がより価格と性能(品質)を納得して購入できるようにしようという考え方です。Dellのやり方は一つの例となります。
・価格設定において競合店との差別化を図るために価格を下げることによって顧客の目を引き、利益を後回しにして店のイメージ・話題性を向上させることはよいことですか。
限度はありますが、新規参入時の手法としてはよく使われます。
・アテネオリンピックで価格が7~8倍になっているとのことですが、このようなレアなケースの場合何を基準に価格は決定されますか。
ホテルの宿泊価格は、通常ヨーロッパではなにかイベントなどで利用者が集中する場合2~3倍になるのがふつうです。そのへんを基準に、需要と供給のバランスの崩れ方をみて判断するのでしょう。
・サービスの価格をあらかじめ設定するのではなく時価のような形で提供するのはどうでしょうか。
格安航空券の価格などは現にそうなっています。
・ホットペッパーに激安でクーポンを載せている美容室はどう考えているのでしょうか。
通常の低価格戦略でしょうが、クーポンを無料紙に掲載することで広告としての訴求力を強めようとしているのでしょう。
・値下げ競争が起こったときに価格を下げないことも戦略的手段といえるのでしょうか。
もちろんです。モスバーガーが典型です。
・価格によって商品・サービスの品質に対する信頼性を顧客に持たせる機能はありますか。
当然あります。価格の機能のところで説明しています。
・安い値段をつけると安物に見られやすいとのことですが中には安いけど品はいい店もあると思います。そういうイメージを作る場合やはり口コミが重要になるのでしょうか。
サービスのように品質を事前に確認しにくい場合、一般に人々が一定の価格水準を前提に認識しているサービスにおいて、それを大きく下回る価格を提示した場合、「なにかわけがあるのではないか」「品質がよくないのではないか」という疑念をうむということです。「安くてもよい」というイメージをつくるための宣伝や口コミ活動が重要になるでしょう。
・品質と価格が見合っていない場合需要が減る場合もありますか。
大いにあります。
・需要調整機能の点はよくわかりますがそういったことが実現できるのはどういった背景があるときでしょうか。
たとえばスキー場のホテルやリゾート地への航空便のように季節波動が大きい場合こうした手法がよく使われます。
その他
・旅行会社のようなサービス産業でもリピーターの確保は重要なポイントと考えられていますか。
もちろんです。ユーラシア旅行社のように現にそれで成功している企業がいくつもあります。
・オーダーメイド型の旅行代理店があると思うのですがオーダーメイドは高コストになりますか。
旅行業においては必ずしもそうなるとは限りません。詳しくは関連科目の先生に質問してください。
・旅行会社の経営状態を高い水準で維持するために有効なポイントは何であると考えられますか。
一般論ではいえないでしょう。戸祭先生に聞いてみてください。
・三菱自動車も今後の対応によって復活ということはあるのでしょうか。
不可能ではないと思いますが、あまり期待できませんし、そうなってほしいとも思いません。現場でまじめに働いてきた大半の従業員のみなさんには申し訳ないのですが。責任のある経営者や銀行は私財をなげうって被害者と社員に補償すべきでしょう。