サービス・マネジメント論
-第13回 非営利・公共サービスのマネジメント/まとめ-
 
 
 
1.非営利・公共サービスのサービス・マネジメント
(1)非営利・公共サービスとは
 広義のサービス業のうち
  ・「非営利組織」の行う事業
     *組織の目的によってさらに大きく二つに分類される
        公益組織:広く開かれた組織としてオープンな公共奉仕をめざすもの
               たとえば医療、福祉、文化、教育など
        共益組織:限られた会員のための組織として会員にのみ奉仕することをめざすもの
               たとえば労働組合、農協、趣味の団体など
             これについては「公共性」はない
  ・公的機関(国際機関、政府、地方自治体など)が行う事業
 
(2)非営利・公共サービスの特徴
①サービスは、それぞれの事業目的の達成のために行われる
  例)災害ボランティア団体:被災者の生活を支援する
    学生自治会:学生の要求や意見を集約して大学と話し合う
    趣味の団体:会員の趣味活動が発展することを支える
②サービスの「受け手」が市場原理では行動しないことが多い
  例)災害ボランティア団体:被災者へのサービスの提供は被災の度合いで決まる
    学生自治会:全学生が自動的に会員である(closed shop)
    行政:サービスは住民に対して一律に提供される必要がある。
  例外)医療:switching costは高いが、変えられないことはない。
③しばしば、サービスの「受け手」と「提供者」が重複・錯綜している
  例)災害ボランティア団体:被災者へのサービスが活動の中心だが、活動の参加者に対して
               も、達成感や充実感を提供することが求められる。
    学生自治会:要求を実現するのは執行部ではなく全学生の力である
④「従業員」に求められる独自の機能
  例)災害ボランティア団体:団体職員は、ボランティア参加者のコーディネイトやサポート               がしごとであり、団体の主体者ではない
    医療:通常の業務は営利的なサービスとあまり変わらないが、倫理性が強く求められる
⑤資金調達のためにマーケティングが必要である
  例)災害ボランティア団体:市民からの募金を集めるためのマーケティングが必要
    文化団体:企業からメセナ資金を、行政から補助金をとるための「営業」的活動が必要
    行政:予算獲得、議会説得などなど
⑥その他
 
(3)なぜ非営利・公共サービスでサービス・マネジメントが必要か
①目的達成のための事業活動には戦略が必要である
②サービスの構造、およびサービス・マネジメント・システム自体はおおむね変わらない   
③いずれにせよサービスの受け手には「よいサービス」を提供しなくてはならない
 
(4)非営利・公共サービスにおけるサービス・マネジメント・システム
 例)図書館
    ①セグメンテーション:子ども、子どもを連れてくる母親、昼間は働いている人etc
    ②コンセプト:読み聞かせ、大活字本、本の種類、さらに「情報ステーション」化など
    ③デリバリー・システム:夜間開館、出張、駅や幼稚園に返却ポストをおく
    ④イメージ:開かれた図書館・・・デリバリー・システムと特に関係する
    ⑤文化:地域に本を読む文化を作り出す(組織文化をこえて)
    ⑥従業員:本の整理屋ではなく、文化の伝道師
    ⑦資金調達(価格システムはない):地域の支持を得る、寄贈キャンペーンなど
 
(5)まちづくり、地域づくりにこそサービス・マネジメントを
 中心商店街、ニュータウン、中山間地・・・どこも「まちづくり」「地域づくり」の困難に直面
  →誰のために地域はあるのか、を考えることから。
 
2.「サービス・マネジメント論」のまとめ
 
(1)よいサービスとは何か-もう一度、SASにたちかえって
①顧客(利用者)=セグメントに対応したサービス・コンセプト
   セグメント:「ひんぱんに旅行するビジネス旅行者」
   コンセプト:↑のセグメントに対して、「世界最高」
   デリバリー・システム:ユーロクラスの導入
              ビジネス客の利用に応じた運行時間(時間厳守を含む)
                 →このために、機体の変更、発着場所の変更などやりきる
   結局、セグメントをどう理解するか、がコンセプトやデリバリー・システムを決める。
    *同じ航空会社でも、セグメントが異なれば全く異なったサービスとなる
      例)サウスウェスト、スカイマークetc
 
②コア・サービスとサブ・サービス
   コンセプトに応じたコア・サービスを明確にし、そこをまず充実させる
       SASの場合:定時性、安全性、利便性
   サブ・サービスで不要なものは思い切って切っていく
   顧客によるサービスの評価に関わるようなところは重視して投資もする
       例)ビジネス利用者に対してチェックイン手続きを大幅に簡略化
 
③顧客(利用者)の捉え方
  a)顧客(利用者)もサービス生産に参加している
  b)顧客(利用者)の主観的な評価によってサービスの品質ははかられる
 
 
(2)よいサービスを支える「システム」の重要性
①明確なコンセプトが従業員の意識を変える
  目標が明確・・・達成感がある
②従業員への権限移譲の重要性
  現場の判断が尊重される組織風土
    *この二つの要素が、「雪の日のコーヒー」の伝説を生んだ
③そうでなければ、従業員を演技者として教育する
  これはディズニーランドやサウスウェスト航空の例
 
(3)あらゆる分野で「サービス・マネジメント・システム」の発想を