2001/5/21
サービス・マネジメント論
−第6回 サービス・マネジメント・システム(2)−
4.具体的なサービス提供の仕組み〜サービス・デリバリー・システム(p228)
(1)サービス・デリバリー・システムとは
製造業における生産と流通(販売)のシステムと同じ。しかし、サービスの特徴のところで述べたように、サービスはたいていの場合生産と消費が同時であるから、これを一体のものとしてとらえることが重要である。
例)生産と消費が同時であることを利用して品質を管理する・・・オープン・キッチン
(2)サービスの戦略とサービス・デリバリー・システム
(3)サービス・デリバリー・システムの構造(p229図)
・フロント(フロント・ステージ)
顧客に直接接するサービスを提供する従業員
(提供する「場」に着目した「サービス・エンカウンター」という言葉もよく使われる)
・バック・オフィス(バック・ステージ)
フロントの仕事を支援する
*フロント・ラインとバック・オフィスの関係〜映画「スーパーの女」
(4)サービス・デリバリー・システムの構成要素
@人材〜「真実の瞬間」を実現する従業員とは
「真実の瞬間」・・・顧客(利用者)にとって本当に価値のあるサービスを、サービスを提供するがわが個人と組織の能力を発揮して顧客(利用者)に提供しようとするその瞬間が決定的である。
*SASの「雪の日のコーヒー」のエピソードは、決して個人プレーではない
a)人材育成のいくつかの方法
ア)外側から従業員の行動を望ましい方向へ矯正する
イ)従業員が自ら内発的に望ましい行動がとれるように持っていく
・マニュアルや訓練によって「望ましい行動そのもの」を身につけさせる(形式陶冶)
・状況やコンテキストを理解して「望ましい行動」を自らつくりだしていくようにする
できれば、そうすることで従業員自身の成長、自己実現、満足へつながるように
b)従業員の役割
もちろん、サービス活動自体を行うことが第一義的な役割だが、そのうえで・・・
ア)顧客(利用者)のカウンセラー〜顧客の真の要求を理解し、明確化させる
例)「おいしいものが食べたい」のウラには
イ)顧客(利用者)のコンサルタント〜顧客に情報を提供する
例)ショウルダイス病院の患者オリエンテーション
ウ)客(利用者)とサービス提供組織との仲介者〜特殊な要求にどう対応するか
例)SASのチケットなしで乗客を通したチェックイン・カウンター
→重要なことは、これを判断できるできる従業員がいたこと(能力)
+
これができる職場の風土であったこと(組織)
エ)サービス活動のプロデューサー
例)あるデパートで・・・他の売場にお客を引き渡して、あとでさりげなく声をかける
オ)サービス活動の演技者
例)小さな温泉宿で
A共同生産者としての顧客(利用者)
顧客(利用者)もサービス・デリバリー・システムの構成要素である。
a)間接的参加:その場にいることの効果・逆効果
例)雰囲気作り
b)直接的参加:実際にサービス活動に加わること
ア)仕様の決定 例)理髪店
イ)共同生産(狭義の直接的参加) 例)セルフサービス
ウ)品質管理 例)オープン・キッチン
エ)エトスの保持:従業員のやる気を維持・喚起する
オ)サービスの発展:利用者側からの情報提供など
カ)マーケティング:要するに口コミ
よくできた直接的参加の例〜ベニハナ・オブ・トウキョウ
B技術と物的要素
サービスだからといって形のあるものの役割が小さいわけではない。
5.イメージ〜顧客を引きつける「心理装置」
効果的なイメージづくりは、サービス・マネジメント・システムを構築する上でも(忘れられがちだが)重要な要素である。
(1)イメージというものの意味
・イメージは簡単に変化しないうえ、実態がなくても人はイメージに縛られる
例)贈答品におけるデパートのランク
・人はしばしばイメージを消費している
例)四駆(RV)の持つイメージと実態
(2)イメージは何によってつくりだされるか
*すでにあるイメージははっきりしないことも多いという面はあるが、分析は必要
a)サービスの特性で決まる
例)マクドナルド(たぶん、今日ではテキストp237とは違った意味で)
b)従業員のありよう(組織風土や文化を含む)
c)市場セグメント 例)フィットネスクラブ〜顧客を絞ることによるイメージ
d)その他
(3)イメージを作る
イメージは作り出しうるし、現につくられている
ただし、実態にそぐわないイメージを作ってもいずれ露呈する
例)カナダのある島の観光開発
6.組織理念と文化〜どんな目標へ向かうのか
(1)組織理念・文化とは
組織理念:その組織において構成員の判断の規範となるような明示的な価値観
例)リッツ・カールトン・ホテル
「ザ・リッツ・カールトン・ホテルは
お客様への心のこもったおもてなしと
快適なご滞在を提供することを
もっとも大切な使命とこころえています。」
組織文化:その組織において構成員の判断を深部で規定する非明示的な規範や価値観の総体 「文化」というからよいものとは限らない。官僚主義も組織文化の一形態である。
(2)サービス組織が持つべき理念とは
@品質と卓越性(excellence)への志向
「最高レベルを志向する」(テキストp120)の意味
〜この場合の「卓越性」とは、セグメントとコンセプトが前提されている。
例)マクドナルドがファストフード・チェーンのなかでどう「卓越している」か
A顧客志向
日常のサービス提供における意思決定が、「顧客価値」に基準をおいていること
*「お客様第一主義」ではない→「人材」の従業員の役割、参照
B人的資源への投資
単にいい人材を集めると言うことだけでなく、従業員の意欲・能力を高めるために
(3)理念・文化の持つ意味
@従業員に対して決定的な意味をもつ
・日常のサービス活動の規範
・従業員自身が内発的にサービス活動を積極的に展開していくための基盤
「どうがんばれば、組織において役割を果たしたことになるのか」
Aイメージの源泉
7.ディズニーランドはなにがよいのか?〜まとめにかえて(p243)
◎ディズニーランドの10の謎
(1)サービス・コンセプト
テーマパーク一般において「非日常的な経験」
ディズニーではさらに「ファンタジーとノスタルジー」「ファミリー・エンタテインメント」
(2)セグメンテーション
大人の鑑賞にたえる遊園地
(3)サービス・デリバリー・システム
@施設・技術:わくわく
「どこかヘン」・・・非日常への入り口
「裏方」をみせない。どうしても見えるところはそれもアトラクションにする
A従業員:「キャスト」=映画の「キャスト」とおなじ。
さまざまなパターンの接客のために膨大なマニュアルがある。
B顧客:顧客自身が参加している・・・アトラクション、「悲鳴」
口コミの役割の大きさ
(4)イメージ
これは、キャラクターがすでに浸透していることの効果を最大限利用している
(5)理念と文化
@理念:SCSE〜safety,雨の日もちゃんとテーブルなどを拭いて、安全性に配慮
coutesy,自然、上品、簡素、清潔
show,ディズニーランド全体が舞台
efficiency 企業だけでなく入場者の効率も考える
ex)列を曲げる・・・曲がり角で達成感を感じてもらう
背後にある「卓越性」への志向
A文化:「キャスト」をあえていえばカルト的に動員する(つくられた「文化」)
(6)弱点はないのか
あまりに作られすぎている・・・顧客が常に「受け身」になってしまうことの是非