2001/5/28
サービス・マネジメント論
−第7回 サービス・マネジメントの展開(1)−
サービスの特徴をふまえたサービス事業の経営のためには、サービス・マネジメント・システムを基礎にしながらもさらにいくつかのポイントについて特に注意を払う必要がある。これらの点についてこの後の講義では解説していく。
1.顧客ロイヤリティと顧客満足(テキストp257)
(1)利益の基礎はリピーターである(→第4回)
なぜリピーターが利益を生むのか
@新しい顧客は最初はむしろ費用を生むが、反復利用してもらうと経費より収入が増える
例)クレジットカード
※顧客維持率・・・
Aリピーターはサービス内容を理解しているので、サービス提供側の手間が省ける
サービスへの期待水準も安定しているし、サービス活動への参加もスムーズである
Bリピーターは口コミをつかって宣伝してくれる
C関連の商品を買ってくれる
例)ほかで安く売っていることを知っていても、いつもいく美容院で化粧品を買う
(2)どうやればリピーターが作れるのか〜顧客ロイヤリティの向上
顧客ロイヤリティ:たとえば、「ラーメン食べに行こう」と思ったら何も考えずに「天下一 品」というような感じ
顧客ロイヤリティを高める前提
@顧客満足→後で説明
Aスイッチング・コスト:顧客・利用者がサービス提供者を変更するときに必要なコスト
*金銭的というより肉体的・精神的負担 例)かかりつけの医者
B人間関係の絆
*三つの要因の影響力の大きさは、問題となるサービスの性格によって変わってくる
顧客ロイヤリティはなぜ重要か・・・テキストp263
(3)顧客満足(CS)
顧客満足=顧客(利用者)のサービスに対する主観的な評価の結果
「飢えや渇きをいやす」という客観的な生理的充足感とは異なる
なぜ顧客満足が重要か:
@「買い物が楽しかった」というような主観的充足感自体も消費の目的になる
A充足感は、次への期待を生み、リピーターを生み出す原動力になる
*顧客満足を高める原動力はサービス品質の向上・・・これについては次項以下で説明
注意)しばしばCSは誤解されている
2.従業員満足とインターナル・マーケティング
(1)「ハッピーな従業員は顧客満足を高める」(テキストp273)
人材の重要性(→第5回)からすれば従業員が意欲を持って働ける職場づくりが必要である
満足感を持って働く従業員が顧客満足を高め、そのことで従業員の意欲も向上する
(2)どうすればハッピーな従業員を作れるか〜笑顔ほど高いものはない?!
内部品質を高める・・・ @従業員が個人的欲求を満たすことのできる人事配置と制度
*マズローの欲求段階説
A仕事のしやすい職務の構造や仕事の流れ
B設備・道具が十分である
Cやる気を引き出す組織の風土
Dもちろん、適切な報酬や評価
*サービスは一般に低賃金・不安定雇用労働者によって支えられることが多いが、
それでよいのか
(3)インターナル・マーケティング
特に重要なのは従業員のエンパワーメント(p279)
3.ホスピタリティ
顧客満足を高める従業員の顧客・利用者への接し方−「真実の瞬間」−をどのように考えるのかというところで、はじめて顧客への態度や姿勢といったホスピタリティ(文字通り訳せば「もてなし」)の重要性がでてくる。
(1)ほんとうのもてなしとは
・日本では、もてなす側の主観的な姿勢が重視される・・・「顧客本位」ではない
また、もてなす側の一方的「奉仕」によるある種の擬制的な上下関係・・「お客様は神様 です」
→これは下手をすると押しつけになる 例)デパートなどの店員
・「押しつけ」から顧客(利用者)の主体性の尊重へ
例)ホテルオークラのタオル(テキストp179)
必要条件・・・複数の選択肢の提示と顧客(利用者)の自己決定
(2)どのようなもてなしが必要か〜ホスピタリティが充たす三つの基本欲求
@安全・安心:身体的・心理的・経済的脅威に脅かされないこと
例)「時価」のすし屋
A自尊:顧客に恥をかかせないことが非常に重要である
*「顧客が信じたことは、顧客にとっては真実である」
〜納得しがたいが、そう考えないといけない
B公平:顧客によって態度を大きく変えるべきではない
*顧客に「公平に扱われている」と信じてもらうことが大切。
4.サービスの品質 (テキストp133)
(1)マーケティングの中核としての品質
サービスのマーケティングにおいて「品質」の持つ意味
=サービスはそれを消費した「以後」が重要である
・口コミによるマーケティング
・リピーターの確保
(2)サービス品質とは
@「品質」の構造
・探索品質:消費者が製品(サービス)を購入する前に評価できる品質
・経験品質: 〃 して後に経験する品質
*サービスの場合は「購入と同時に」と理解してもよい
・信頼品質:購入後も時間が経過しないと評価が難しい品質
例)医者の診断
→サービスは経験品質、または信頼品質に偏るので、消費者は他の消費者の経験
(つまり口コミなど)に頼ろうとする。
例)テレビ番組の企画で「ネタがつきたらラーメン屋」
A客観的品質と主観的品質
マーケティングという視点から見た場合には、主観的品質が重要
理由1:顧客の消費行動に大きな影響を与えるのは、顧客が自ら認知し判断した評価である
*客観的品質は重要でないわけではなく、いわば前提である。
→クルマのエピソード
理由2:サービスでは結果だけではなく、サービスの提供過程も評価される
B品質と満足感
同じように主観的な評価だが、概念としては異質。 *混同が多いので注意。
品質:合理的な認知、知覚。長期的な評価。
主観的ではあるが、評価した本人としてはいわば「きっちり」評価している
満足感:感情的・感覚的反応。合理性はない。
例)「いい演奏」と「好きな演奏」は違う
通常は、品質への評価が満足の前提になる
(品質への評価が低いのに満足ということはあまりない)
(3)サービス品質の測定
@SERVQUAL
ここでは、サービス品質を期待と実績との対比から測定する方法がある、とだけ。
サービスへの期待の構造
Aサービス品質の五つの側面
・物的要素 ・確信性
・信頼性 ・共感性
・反応性