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「特殊講義(専門Ⅰ)ハリウッド映画におけるCG史」(現在進行中!)研修レポート①

2017.09.12

【現地レポート①】

 映像学部の海外留学プログラム「特殊講義(専門Ⅰ)ハリウッド映画におけるCG(以下、北米研修)」が2017年度もスタートしました。この講義では、近代ハリウッド映画において、CGがどのように発展してきたかについて、最先端のCG制作現場を視察し、世界で活躍するクリエイター、プロデューサーとしてのマインドを醸成することを目的としています。

 今年は、8名が参加し、96日(水)〜14日(木)までの日程でロサンゼルス、ラスベガスにて現場研修を行っています。

 研修の様子を現地からレポートします!

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【研修1日目】

 今年は台風等の影響も一切なく、順調にロサンゼルス空港に到着。気温は33度。それでも、空港付近は海岸に近いため、とても気持ちのいい風が吹いています。慣れない長距離飛行機で睡眠不足のメンバーですが、早速研修がスタート!


 

 最初の見学先は、ソニーピクチャーズスタジオ

1915年に創立されたこのスタジオでは、数々のハリウッド映画の撮影場所になっています。この北米研修では毎年訪れ、日本の撮影所と比較にならないほどのスケールの大きさに圧巻されてきましたが、今年はなんと、201612月に大掛かりなリニューアルがなされ、スタジオ内に設置されたミュージアムも見学できました。

実際に撮影で使用された小道具、衣装、備品もあり、感激しながら観る学生たち。


 セットが組まれた撮影スタジオ、音響・編集施設等も丁寧な説明をしてもらいながら、ハリウッド映画の撮影現場をじっくりと見学しました。

 

 

 かなりじっくり見学をしてしまったため、夕方の渋滞に見事に巻き込まれる事態に・・。

 やっと到着したハリウッド&ハイランドは、滞在時間30分!

 駆け足で、ハリウッドサインを遠望できるバビロン・コート、著名俳優の足型が残るチャイニーズ・シアター、アカデミー賞受賞式の会場であるドルビー・シアターも走って、撮影&見学。


 

   ハリウッドサインが望めるテラスの道には、若手監督や俳優、ミュージシャンといったハリウッドで夢をつかみたいと願う人たちの、その思いがつまったメッセージを見ることができます。いつか、映像学部のみなさんも足跡をここに残したいですね。


 PM9:00。車窓見学をしながら、やっとアナハイムホテルへ到着。

 初日の晩餐はみんなで近くのレストランへ。この後、振り返りミーティングを終え、長い一日がやっと終了。長旅の疲労もピークに達していましたが、みんなこれからの9日間に期待が高まっています。


【研修2日目】

 研修2日目は、企業訪問へ。

まず、VFX制作会社である「Frame Store」へ。

1986年に創立されたこの会社は、ロンドン、ニューヨーク、モントレオール、ロサンゼルス、シカゴ、北京に事務所を構え、1500人の社員が働き、「キャプテンアメリカ」や「ミッションインポッシブル」など多くのハリウッド映画のVFX制作に参加しています。

ロサンゼルス支社では、主に広告業をメインとした映像制作をしており、ロンドン、モントレオールでは長編映画の制作をしているとのこと。創業30年ではあるものの、この5年間で大きな成長を遂げており、現在はモーションキャプチャやバーチャルリアリティに特化した施設を建設中でした。

 

 訪問当日はまさかの計画停電と指定された地域であったため、アーティストの方々は仕事ができないということで、学生の質問に熱心に応えていただきました。

 「映像制作の現場は常に、複数のプロジェクトが同時に走っており、クライアントによって要求も様々である。会社としてはCGクリエイターの確保・管理が重要な業務の一つである。とはいえ、だれでもOKではなく、「Potential(可能性)」「Personal(人間性)」を重要視している。個人プレーでは、ハリウッドではやっていけない。チームでよいものを作ろうという意識があるか、業界で10年以上仕事ができる素養があるか、クライアントが抱えるニーズや課題に対して、新しいテクノロジーをどのように使って解決するのかロジックをもっているかが大切なことだ。新しいスキルは常に習得しなければならない。でも、何かを作ろうとするときに、本当に良いものを提供し続けようという情熱があるかどうか問われている。Challengeこそ、新しいスキルを発展させる成長の場である。忘れないでほしい。」

  続いて、「Method Studio」へ。

 1998年に設立したこの会社は、主に映画やCMVFXを制作しており、ニューヨークやバンクーバー、インド、オーストラリアなど国内外に8社の制作拠点をもっています。

 この会社は、クライアントが心地よく一緒に仕事ができるように、職場の空間をデザインすることも大切にしています(撮影禁止のため、おしゃれな会社の模様をお伝えできず残念)。

「アーティストとして必要なものは、自分がやりたいことがはっきりしているかそしてチームワーク。ハリウッドの現場は、アナログな人間関係で成り立っていることが多い。また一緒に働きたい、共に制作をしたいと思わせることが大切。また、就職活動をするうえでは、みなさんのポートフォリオは、できるだけ簡潔で見やすく、良い内容の作品だけをいれるようにした方がよい


 「作品の質も大切だけど、作品数も重要ではないのか」と思いがちですが、ハリウッドの現場では、選考するだけでも時間を要するため、ポートフォリオは、クオリティの高い作品だけをいれている方がどんなアーティストかを見極めてもらうのに、有益とのこと。なるほど。

  次の訪問は、「Third Floor」。

 Third Floorは、世界最大のプレビズ専門プロダクションとして2004年に設立。シーグラフのメイキング映像やアメリカ映画のほとんどに参加しています。

 この会社には、この研修で2015年にも訪問しましたが、昨年事務所を拡張され、プロジェクトを多数抱え、ハリウッド映画界に非常に影響力のある企業に成長されていました。

案内をしていただいたのは、設立者の一人でもあるHiroshi Mori氏。
最近は、アニメ出身のクリエイターが多くなっている。経営は順調に見えるが、課題としてはアーティストはビジネスが苦手ということ。常に複数のプロジェクトを抱えていると、このマネジメント、人材育成(チームビルディング)も大きな柱である。また、プレビズはあくまで、監督の考え方をサポートするツールにすぎない。映画で一番大切なものは、『シナリオ』。テクノロジーは誰でも手にはいる。シナリオライターとエディター(編集者)の仕事ができるアーティストを求めている。」


  ハリウッドの制作現場では、守秘義務が非常に厳しく求められており(実際、Method Studioは監査日でした)、会社内の撮影・録音は一切禁止されているため、現場風景を伝えることができませんが、どの企業も多くのクリエイターが作品を制作している姿は文字に表せない程の緊張感に包まれています。日によっては36時間連続労働、徹夜漬けの日々もあるようですが、それでも「これまでにない良いものを作って人を楽しませたい」「クライアントの思いを映像にして世の中に広めたい」という情熱が根底にあるからこそ、続けていられるとのこと。この偉大なアーティストたちに、参加メンバー全員感銘を受けていました。

 (おまけ)

 どの企業に訪問しても、とても素敵なキッチン(ダイニングルーム)やフカフカのソファが常設されています。これは、長時間労働や時には徹夜で作品を制作するクリエイターができるだけリフレッシュできるようにという思いがあるようです。時には、クライアントを招いて試写会もするので、空間をできるだけ居心地よく、リラックスした雰囲気でクリエイティブなアイディアを出し合える場を創っているとのこと。


 また、チームワーク向上、心身をリフレッシュさせるためにThird Floorでは、毎月金曜日の夜はBBQパーティが開催されるようです。プレミアムフライデーと同じですね!

 まだまだ続きます。

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