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周年式典 成山校長挨拶

本日は立命館中学校・高等学校創立110周年ならびに立命館小学校創立10周年記念式典を開催しましたところ、山田京都府知事様はじめたくさんの御来賓のご臨席を賜り、心から感謝申し上げます。

立命館中学校・高等学校は、西園寺公望公が私塾「立命館」を興され、中川小十郎先生が「京都法制学校」を創設された5年後の1905年に「清和普通学校」として設立されました。以来110年、建学の精神「自由と清新」のもとに子どもと社会の要請に真摯に向き合いながら教育を進めてまいりました。振り返りますと、そこには常に西園寺公望公の「自由主義と国際主義」の理念が脈打っているように感じられます。西園寺公は若くして明治の始めにいち早くフランスに留学され、世界の息吹を吸収されて、わが国の近代化に寄与されましたが、その自由な発想に基づく進取の気風は今も本校において脈々と流れております。

近年、立命館中高におきましては、SSHを軸にした科学教育と国際教育の融合的発展を遂げ、昨年度よりはSGHに指定され、全分野でのグローバル・リーダーの育成をめざす学校へと発展してまいりました。

一方、立命館小学校におきましても、創設以来、斬新な学習指導方法の実践による基礎学力の確実な定着とともに、小学校1年からの英語教育とオーストリア・ターム留学をはじめとする国際交流に取り組むなど、我が国の初等教育の在り方に一石を投じてまいりました。

併せて、立命館小中高は、10年前より12年間を4年ごとに区切る4-4-4制の小中高一貫教育を追究してまいりました。それは、子供の心身の発達が早期化するとともに、中1ギャップという言葉に代表されるような教育課題が噴出している現状を見るとき、学習面でも生徒指導面でもこれまでの6-3-3制の枠組みは、すでに現代の子供には適応できなくなりつつあるという問題意識に基づいたものでした。

今や、その流れは全国的にも小中一貫教育として数多くの学校で実施されてきており、その結果、本年6月には法改正がされ、義務教育学校が制度化されました。中高一貫教育と合わせて今後さらに一貫教育や教育制度の見直し議論は高まるものと思われます。

もちろん、戦後70年馴染んできた6-3-3制度の下で、新しい枠組みとしての4-4-4制に取り組むことには種々困難や壁が伴います。しかし、既成の観念や慣例に縛られていてはイノベーションはあり得ません。私たちは幾多の壁を乗り越えながら新しい価値を創造することによって、はじめて次の100年をリードしうる新たな伝統を築くことができると考えております。それこそが、立命館スピリットとしての「自由と清新」であり、Beyond orders としての誇りでもあります。

私たちは、長岡京キャンパス移転を機に、4-4-4小中高一貫教育をより本格的に展開すべく、今年度は5年生から8年生までの教育を運営する第二ステージ推進室を設けるなど小中高を一体的に運営しておりますが、次年度は、さらに小中高の学校組織の一体化について検討してまいります。また、小学校5~6年生は各学期に2週間ずつ長岡京に登校し、学習をしておりますが、今後、長岡京キャンパスを拠点に学校生活を送りながら、中高生との交流を通して多様な価値観を学ぶことができるように、早急に教育プログラムの確定や環境整備に努めてまいります。

同時に、私立の総合大学の附属であるからこそできる独自な教育を大学との連携・接続によって創造してまいりたいと考えております。立命館は多様性を何よりも重視しております。多様な能力や個性を持った子供がお互いを尊重し学び合う中で、それぞれの夢と希望を実現できるような教育システムを創造していきたいと考えております。

かつてユネスコの「教育開発国際委員会」は報告書『未来の学習』の中で、「知識は絶えず修正され、『革新』が更新される。」「未来の学校は、教育の客体を、自己自身の教育を行う主体にしなければならない。」と提言しました。

さらに、『学習こそ宝』という報告書の中では、知識基盤社会に相応しい新しい学力像として、「民主的な社会参加」「市民性」「シチズンシップの実践」を重視し、生涯学習の柱として「learning to know」「learning to do」「learning to live together」「learning to be」を掲げました。今まさにグローバル化する現代世界にあって、かつ18歳選挙権が成立したわが国にあって、めざすべき学びはその「未来の学習」であります。

2020年には大学入試制度が変わり、学習指導要領も改訂されますが、それは戦後70年世界をリードしてきた日本の教育が、グローバルスタンダードに照らしたとき、今や通用しなくなりつつあるという危機感の表れでもあります。これまで当たり前とされてきた一斉講義方式による受け身の学習では世界に通用する人材は育ちません。これからのグローバル時代に求められる学力は、自ら課題を発見し、深く探求し、自分なりの解を見つけて、自らの言葉で英語も駆使し、海外の若者と意見を交流し合える力です。そのために、私たちは学びの形を生徒の主体的で能動的な学びに転換してまいります。

戦後、立命館が教学理念として掲げた「平和と民主主義」が、今ほど必要とされるときはありません。末川先生が「未来を信じ未来に生きる」という言葉で表現された「未来」は平和的で民主的な社会であります。その「未来」の担い手である子供たちが「未来の学習」を通じて、自分の力で深く考えて判断し、責任を持って行動できる主権者として育つように、本校教育の充実に努めてまいります。皆様方には、これまで以上にご指導ご支援を賜りますようお願い申しあげまして、式辞といたします。

2015年6月27

立命館小学校・中学校・高等学校

校長 成山 治彦