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立命館大学 国際関係学部 国際関係学部 校友会
 立命館大学国際関係学部 校友会 校友会業種別懇談会 #3「国際協力分野懇談会」
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松本 卓巳 さん
松本 卓巳 さん
国際関係学部3回生
矢口 真琴 さん
矢口 真琴 さん
2001年立命館大学大学院国際関係研究科修了
公益財団法人ジョイセフ勤務
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藤善 奈美 さん
藤善 奈美 さん
2004年3月立命館大学大学院国際関係研究科修了
学校法人創志学園勤務
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不破 麻理子 さん
不破 麻理子 さん
2005年3月立命館大学国際関係学部卒業
公益社団法人日本国際民間協力会勤務
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浅川 祐華 さん
浅川 祐華 さん
2007年立命館大学大学院国際関係研究科修了
独立行政法人国際協力機構(JICA)勤務
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国際協力の仕事のやりがいは

松本:国際協力の関する仕事は、タフでハードなイメージがあります。モチベーションを保つ上でも、やりがいは欠かせないものだと思います。やりがいを感じるのは、どんな時ですか。

やりがいは現場につながっていると感じる瞬間

浅川:JICAでの私の役割は、プロジェクトが現場でスムーズに進むようコーディネートすること。そのため、現場で手足を動かして仕事をしているJICA専門家やコンサルタントの方々のような直接的なやりがいは見出しにくいのが正直なところです。自分がいるのは東京の本部で、支援の現場はその本部のパソコンの向こうにある在外事務所の、またその先にあるプロジェクトの現場ですから、物理的にはすごく遠いところです。でも書類をつくったり、調整したりといった私の仕事が、現地に適時に専門家を送ったり、必要な機材を届けたりすることにつながり、ひいてはプロジェクトが現場で成果を出すことにつながるんだと感じられた時にはやりがいを覚えます。

 原体験になっているのは、JICAに入って1年目、OJTの一環として7.5ヶ月間セネガル事務所で勤務した際に、あるプロジェクトのサイトに1ヶ月間滞在して、専門家の仕事について回り、現場を見せてもらったこと。受益者の女性たちが、「こんな野菜ができた」と嬉しそうに見せてくれたことが印象に残っています。目標を見失いそうになる時、「あの人たちのために仕事をしているんだ」と思い出すようにしています。

 その他、日本にいても、日本でJICAの研修を受けるために来日した研修員が帰国する頃にすっかり意識を変え、「研修の成果を活かしてこういう活動をするんだ」と帰国後の活動計画を語る姿を見たりすると、仕事では辛くても、研修担当として関わることができて良かったなと感じることができました。

政策提言が国の政策に影響を及ぼした時は嬉しい

矢口:私の仕事は政策提言なので、国の政策に影響を及ぼせた時に一番やりがいを感じます。私の所属する公益財団法人ジョイセフは、主に女性の「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」の課題にかかわる支援を行っています。2008年のG8洞爺湖サミットに向けて、「国際保健に関わるイシューをサミットの議論の卓上に乗せてください」と政府に提言し、実際に採用されたことがありました。サミットのアジェンダに乗せてもらい、サミットで議論された結果、国連の「ミレニアム開発目標」の8つの目標のうち、4「乳幼児死亡率の削減」、5「妊産婦の健康の改善」、6「 HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」について、これまで以上の強化が必要だという合意にいたったんです。1年以上かけて外務省に足を運び、細かい調整作業を経た末のことだったので、その成果を見た時には、大きな達成感を味わいました。

 政策提言が実を結んだエピソードがもう一つあります。国連が母子保健分野に力を入れるという戦略を打ち出し、G8とそれ以外の国、民間の財団を含めて、5年間で73億ドルを拠出するというコミットメントが出されたんです。それに引き続き、日本でも「管コミットメント」に保健分野全体に5年間で50億ドルを拠出する」という内容が盛り込まれました。それに向けても、2度官邸に赴き、「日本も国際保健の分野に資金提供するべきです」と提言を続けてきました。コミットメントの内容そのものには、不足に感じるところもありますが、一定の成果を出せたことは嬉しかったですね。

プロジェクトが現地に根づいた時は苦労も吹き飛ぶ

不破:私がやりがいを感じるのは、やはりプロジェクトを実施して、目標を達成できた時。とりわけ取り組みが一時的に成功するだけでなく、さらにシステムとして私たちが去った後に定着した時は、どんな苦労も無駄ではなかったという気持ちになります。

 ヨルダンでイラクからの難民を対象に、早期幼児教育をサポートするプロジェクトを実施したことがありました。彼らは難民といっても、難民認定されていないため、教育も保障されないし、働くこともできません。そのためどうしても小学生以下の教育はおろそかにされがちでした。そこで私たちは、親子でできる早期幼児教育として、親が絵本を手作りし、子どもに読み聞かせるというプロジェクトを立ち上げました。まずワークショップを運営するトレーナーの育成からスタート。並行して実際にワークショップを催しながら、実施場所はどこがいいのか、定着させるにはどうしたらいいのか、検討を重ねました。最終的には、幼稚園の先生たちがトレーナーとしてのスキルを身につけ、親子での絵本づくりと読み聞かせを幼稚園のプログラムに取り入れることに成功しました。さらに、活動のコンセプトや具体的マニュアルの一部は教育省にも認められ、複数の幼稚園に導入される仕組みを作ることができました。最初は、「ふれ合う時間が増えた」と喜ぶ親子の姿を見られたことはもちろん、それ以上に、私たちがいなくても、彼ら自身で子どもの笑顔を作れるようになったことが嬉しかったですね。

松本:プロジェクトはまだ現地で残っているんですか。

不破:はい、しっかり根づいています。最初はモデル校だけで実施していたのが、他の地域でやりましょうと、活動が広がっているようです。

 もちろん災害などの緊急事態に、必要なものを必要としている人に届けられた時には、睡眠時間を切りつめてでもやって良かったと思います。

 間接的には、現地スタッフの成長を見た時にもやりがいを感じます。パキスタンで勤務していた頃のこと。試用期間中、満足な仕事ができなかった現地スタッフが、プログラムが終了する頃には、ベテランスタッフを引っ張るまでに成長。さらに2年後、彼が自分でNGOを立ち上げるまでになりました。同じ「思い」を持った人を育てる一助になれることも、大きなやりがいです。

子どもに国際理解の種をまけた時がやりがい

藤善:発展途上国の現状について知っている人は少なくありませんが、ともすれば「かわいそう」と思ったり、「上から目線」でとらえがちなんです。啓発活動の一環として、小学校に赴き、国際教育について話すといった活動も行います。子ども達にわかりやすく説明し、「かわいそう」ではないときちんと理解してもらった時、「何かの種をまいた」という手ごたえを感じます。やりがいを感じるのは、そんな時ですね。

 小学生に「世界では食べ物がなくて困っている人がいるのに、日本ではすぐに捨てたり、キライだからと食べなかったりする。どう思いますか」などと語った後、子ども達から「これからは、好き嫌いを言わずに食べようと思う」といった感想をもらうことがあります。「小さいながらも種をまけたかもしれない」と思える、そんな瞬間を楽しみに仕事をしていました。

 「伝える」というのは、とても難しいこと。私自身は親しみを込めて話したことが、相手には「かわいそう」と受け取られることもあります。ましてや小学校では、45分程度の時間で、子どもに理解してもらわなければなりません。難しいからこそ、やりがいも大きい。国際協力には、そうした道もあるということを学生さんにも知ってほしいですね。

 
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