私は他大学・他学部出身で社会人経験者だったため、入学当初は自分よりも若い国際関係学部出身の同級生たちが皆とてもインテリジェントに見えたのを覚えています。自分と異なる考え方を持つ人とのディスカッションもまた、貴重な体験でした。
修士論文に向けては華人文化や他民族国家の研究をテーマとするゼミに所属しました。博士前期課程に進む学生はそれぞれ強い関心を持つ事柄を胸に秘めているものの、論文のテーマを決めて具体的な調査を開始するまでは手探りの状態がしばらく続きます。自分と同じ分野を取り扱う書籍や先行研究に当たったり、同級生の研究対象と比較したりする中で、ふと目にしたテレビのニュースがきっかけで着想が深まっていきました。指導教官は素人がなかなか入手できない資料が手に入った際に貸し出してくださったり、数々の助言で励ましてくださいました。
私の研究テーマは戦後台湾の教育からアイデンティティの多様性を探っていくものでしたので、過去と現在の教科書資料の収集と現役教員へのインタビューのため、休暇を利用して在学中に二度台湾を訪れました。留学時代にできた台湾人の友人のお姉さんが小学校教諭をされていたため、インタビューと現行教科書の提供を快く引き受けてくださいました。
ちょうど2度目の訪問の準備をしていた頃、博士後期課程に在籍する台湾人の先輩と授業外のセミナーで知り合い、台北師範大学の博士後期課程で研究生活をされている知人を紹介してくださいました。その方がご好意で師範大学の校友会館(校友とその友人のみ安く宿泊できる施設)を予約してくださり、教育資料センターでの資料収集を心置きなく行うことができました。また、校友会館のロビーで偶然、日本統治時代に義務教育を受けた年配者に声をかけられ、貴重な体験談を伺うこともできました。台湾史を知るうえで重要な二二八記念館を訪れた際には、日本語ボランティアガイドの年配者と出会い、当時の様子を聞きながら資料を見学することもできました。
お世辞にも秀作とは言えませんが、様々な皆さんのお力を得て集めた資料を基に頭の中を整理し、無事に修士論文を書き上げて修了することができました。
図書館等での資料収集ももちろん大切ですが、手探りでも自分から一歩動き出してみると、不思議といろいろな方が現れて縁や情報を繋いでくれるものです。入学や進学を迷っておられる方がいらっしゃったら、ぜひ一歩前に踏み出してみることをお勧めします。 |