教員紹介

  • 哲学・思想

人間研究学域

「生きていることの不思議」を深める人間学研究
キーワード :
人生、物語、ユーモア、かなしみ

鳶野 克己教授

所属専攻:
教育人間学専攻
専門分野:
教育人間学、笑い学
生まれ、育ち、老い、死にゆく人間の生涯の歩みを、総合的に捉え直す「教育人間学」を研究しています。
「自分はどんな人間か」を説明する際、人は自分の人生の物語を語ります。「物語」は、納得できる筋立てで人生を意味づける力を持ちますが、特定の筋立てに私たちの生き方を縛りつけもします。人間は「物語る」生き物ですが、生きることは決して物語り尽くせません。「物語」が人生を硬直させるとき、それを緩めるのが「笑い」です。また「かなしみ」は、生きることのままならなさと物語りきれなさを感じ続ける力の源泉となる感情です。「物語」を軸に、人間として生きることの不思議さについて考えを深めていく。それが私の研究です。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

「生きることの意味」への問いは、客観的で正確な知識や情報、最終的な確答を求める問いではありません。私たちは、「生きることの意味」への問いを抱え込むことで、そうした答えのない問いを問わずにいられない人間という生き物の不思議さへと改めて目覚めるのです。さあ、この目覚めを分かち深め合う研究の旅に一緒に出かけましょう。

COLUMN

慣れ親しんだ「人生の物語」を再考し、人はなぜ生きるのかに丁寧に向きあう

教育人間学専攻

鳶野 克己

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人間研究学域

「美と教育」という謎
キーワード :
教育、美・芸術、物語、超越

西村 拓生教授

所属専攻:
教育人間学専攻
専門分野:
教育人間学、教育哲学、教育思想史
たとえば犬の赤ちゃんは生れた時から犬。猫の赤ちゃんは生れた時から猫。でも人間だけは、教育によって初めて「人間」になる存在です。そのことの不思議さ、おもしろさ、哀しさ、そして難しさを考え、深く感じるのが教育人間学です。そのように人間が「人間になること」にかかわる無限に豊かな出来事の中で、私は特に、美や芸術の体験が人間の生成・形成にとってどのような意味をもつのかを、思想史を手がかりに考えることを研究テーマとしています。ドイツの詩人シラーが「人間の美的教育」について書いた不思議な書簡の解釈史を中心に、思想史の研究をする傍ら、美や芸術を教育の根幹とするシュタイナー学校の実践にも関心をもっています。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

人間が教育によって「人間」になるように、私たちは教育によってつくられて、それぞれの今の「私」になっています。では、あなたはどのように「あなた」になってきたのでしょか? その豊かな不思議を、私たちと共に学び、考え、味わってみませんか。

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人間研究学域

子どもの嘘や秘密は教育的ではない?
キーワード :
教育言説、解釈学的方法、レトリック

山内 清郎准教授

所属専攻:
教育人間学専攻
専門分野:
教育人間学、臨床教育学
子どもの生活世界にどうアプローチすることができ、またアプローチすべきなのかを方法論的側面から追及しています。例えば子どもの「嘘」や「秘密」は誰もが当たり前に知っていることかもしれません。ですがその意味を考え出すと、単純にいまいましく思ったり、一方で、ほほ笑ましく思ったりするだけでは済まない別次元の意味が見えてくることもあります。こうした意味志向の人間学的哲学的アプローチは抽象的考察に終わらずに、わたしたちが当たり前として疑わずにいる教育観を揺さぶり問い直すきっかけになる場合もあるかもしれません。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

「教育的」は不思議な言葉です。「受験勉強は教育的」なのか、それとも「教育的でない」のか。勉強させる先生の立場からすると当然教育的であるはずでしょうし、生徒の立場からすると短い期間我慢するだけの苦行(非教育的)かもしれません。さて、本当のところは? 学問的に「教育」を研究する材料は、こんなところにも転がっているのです。

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日本史研究学域

近代国家の権力構造と人間との関係
キーワード :
近代主権、立憲制、政党政治

小関 素明教授

所属専攻:
日本史学専攻
専門分野:
日本近現代史、日本近代思想史
私の研究テーマは近代国家の権力構造と人間との関係を解き明かすことにあります。その近代国家の権力を統轄しているものが主権です。しかし主権とは何なのでしょうか。憲法学者の著作には、主権の定義ないし主権の作用について論及はなされていますが、主権の威力の源泉(法源ではない)とは何なのかということに関してはほとんど何も記されていません。これは研究するに難しい対象です。そもそも形があるものではありません。ゆえに研究方法も定まっていません。しかし、社会で重要なものは、このように形がなくても大きな意味をもっているものです。私の研究は、こういうものを解き明かす醍醐味を味わうことです。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

「多様なものの見方ができないとダメだ」ということがよく言われますが、私はあえて全身全霊をかけた「独断」ができるようになることを勧めます。必要であれは、その「独断」を真摯に更新していきましょう。それが色んなものを深く吸収するということです。そうすれば、自分と異なるものを大切にしている他の人たちの気持ちが深く分かります。

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日本史研究学域

トランスナショナルな徳川思想史の構築をめざす
キーワード :
徳川思想、民衆思想史、民衆宗教史

桂島 宣弘教授

所属専攻:
日本史学専攻
専門分野:
日本思想史、徳川時代史
「鎖国」という言葉は、志筑忠雄が1801年にケンペル『日本史』を抄訳した際に用いたもので、「鎖国完成」といわれる寛永期には、その言葉すらありませんでした。しかもこの寛永期は、中国では明清王朝交替が進行しつつある激動期で、江戸幕府は「鎖国」どころか中国大陸の動向に気を配っていました。ところが、長い間、わたくしたちはこの時代を専らオランダなどヨーロッパとの関係において「閉ざされた鎖国の時代」と捉えてきました。何故でしょうか。近代以降の欧米中心主義で江戸時代を捉えることで、アジアの中に存在していた江戸時代が捉えにくくなっていたのです。わたくしの研究は、そうしたことがらを思想史的に再検討するものです。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

私たちの多くは、「日本人」として、「日本語」で生活しています。しかし、江戸時代まで、「日本人」「日本語」という意識は存在していませんでした。私の研究は、その形成過程を、東アジアを舞台に明らかにするものです。東アジアの人びとがどのように「日本」を見てきたのかを知ることで、「グローバルな歴史像」を共につくっていきませんか?

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日本史研究学域

日本史上の変革期における、メディア編制の構造変動
キーワード :
社会的排除と包摂、再-中世化する日本社会

東島 誠教授

所属専攻:
日本史学専攻
専門分野:
メディオロジー、〈つながり〉の精神史
歴史学は、現代社会を生きる我々が直面している、いまなお解決されていない諸問題について、深層から照らし出す光源となりうる学問です。かつて何が問題とされたのか、そして今何が問題なのか。
関心の基底には、日本社会はなぜ変わらないのか、という問いがあります。変革の必要性はしばしば認識されるにもかかわらず、なぜ大きな運動にまで至らず、すぐに冷めてしまうのか。
しかし一方、歴史上には、変革可能性の芽が大きく花開こうとした時代が三度あります。それぞれの背後にあるのは、メディア編制の構造変動です。その時代固有の論理を大事にしながらも、時代を軽々と越えて論じることのできる点が、私の研究の面白さです。

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受験生へのメッセージ

歴史学では、根拠(史料)と論理に加え、根拠と根拠の隙間に拡がる未知の領域に対し、豊かで謙虚な「想像力」を持つことが重要です。たとえば、幕末の坂本龍馬と南北朝時代の禅僧義堂周信にはある共通点がありますが、想像がつきますか? 豊臣秀吉と帝国京都博物館(現・京博)の共通点は? しなやかに思考することを始めてみましょう。

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東アジア研究学域

古代兵学思想の源流をさぐる
キーワード :
銀雀山漢墓竹簡、古代兵書、兵陰陽

石井 真美子教授

所属専攻:
中国文学・思想専攻
専門分野:
古代中国思想、出土文献
『孫子』等の古代兵書について研究しています。『孫子』は今から2500年ほど前に書かれたものですが、戦に関する極意がつまっていて、後世の兵書に大きな影響を与えました。「いかに効率よく勝利をおさめるか」に加え、前提として「戦わないことが最善」の重要性が説かれています。戦乱の時代において、従来の大義名分を掲げる立場とは異なり、実際の経験にもとづき「戦とは騙し合いである」「戦には多大な出費と犠牲がともなう」と現実主義の立場で説き、結果としてむしろ反戦の内容になっているのが奥深い点です。最近は古代兵法の一種である、呪術を応用した「兵陰陽」について、実際のどの地理・風習等に源流があるのかを研究しています。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

世界は皆さんが思っているよりずっと広く深いものです。私の研究分野である古代中国についても、日々新たな資料の発見があり、学説が変わっています。大学ではぜひ多くのことを貪欲に学び、固定観念や利害等に縛られずに、広い視野を育んでほしいと思います。

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東アジア研究学域

中国近世の学術と思想
キーワード :
清代、経学、考証学、朱子学

尾﨑 順一郎准教授

所属専攻:
中国文学・思想専攻
専門分野:
中国近世思想、儒学史
中学生の頃、クラスの中で『三国志』が大流行。そんな小さなきっかけから、僕は次第に中国の古典に興味を抱き始め、大学に入ったら本格的に中国の古典を学んでみたいと思うようになりました。当初は春秋戦国時代や三国時代に興味がありましたが、大学入学の前年、清代にイギリスに割譲された香港が中国に返還されるというニュースが大々的に報じられ、それ以来、清代という時代に興味を持つようになりました。現在は清朝の成立前後から全盛期にかけての学術・思想について研究をしています。研究対象によっては、国内外で数点もしくは一点しか存在しない資料もあり、各地の図書館を訪ねるのは宝探しをしているようでワクワク感が止まりません。

MESSAGE

受験生へのメッセージ

文系の人も、理系の人も、オープンキャンパスなどで大学を訪れる機会があれば、文学部を訪れてみることをお勧めします。高校までで学ぶ文系科目は、ほとんどが文学部の領域に属しており、皆さんにとっては最も身近な分野です。教科書で学んだ事柄の背景や原典などに触れることで、新たな気づきを得られるはずです。

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