A群社会・経済と統治

 この分野は、経済社会の維持とその発展を促してきた諸学問分野を中心とし、それに関連する科目を幅広く包含して提供します。現代社会は、政治と経済の関係だけでなく、社会システムの全体が変化しています。世界のボーダレス化はいっそう進展しており、今や世界のどの国や地域も政治経済上の再編の枠外に留まることはできない事態となってきています。国際化の進展とともに法制度の再編が国際的レベルで進行しており、日本では不公正な利益追求を防止し、紛争を事前に解決するために法の遵守も強調され始めています。第2次世界大戦後の日本経済の成長を実現してきたシステムの全体が従来とは質的に異なったものとなろうとしています。このため、これまでの日本社会のありようを法律、政治、経済、経営等の多面的な側面から検討する必要があります。
 現代日本の経済社会とその統治の態様は大きく変化しつつありますが、これらについての学生の知的関心が広がり、深化することを目指します。また、国際社会における地域主義の台頭などによって、国家統治の基礎となってきた法律や諸制度も変化しており、各国レベルでみても発展途上国の急速な都市化と都市環境の悪化などの社会問題などが深刻化しています。そこでは、統治の主体であるべき市民の参加システムとそれを通じての生活の保障が不可欠の課題となっています。それらについて過不足なく講義します。

開設科目名、配当回生および概要・到達目標

※一部の学部は以下の科目群・分野の構成を適用していません

現代社会と法

1回生以上

現代社会において、日々さまざまな法的問題が発生し、それらはときとして深刻な訴訟になることもあります。また、社会の変化の中で、従来の夫婦、男女の役割分担、労働の形態等も大きく変わりつつあります。この科目ではこうした現代の市民社会の中で身近に接するさまざまな法的問題を理解し、自分の頭でこれらの問題を考えることができるようになることをめざします。

1.現代の市民社会の中で身近に接するさまざまな法的問題の背景・性格を正しく理解し、説明できること。
2.現代の市民社会の中で身近に接するさまざまな法的問題に関し自らの考えをまとめ、提示できること。
3.現代の市民社会の中で身近に接するさまざまな法的問題に関心・興味を持ち、自ら調べ考える態度を涵養すること。

市民と政治

1回生以上

政治や国家は私たち市民から遠い存在のようにも見えますが、政治は市民の日常生活に影響し、逆に市民が政治に参加する制度や機会も増えてきています。この科目は、政治と市民の関係とくに民主主義について考え、政治学の基礎に接近します。身近な素材を用い、具体的な政治問題から出発しながら、政府の機能、民主主義の理念、民主主義の制度としての選挙や政治参加について、現状の理解と問題点の検討をうながします。内容と関連づけて、諸外国の政治状況、近現代の政治史や政治理論について扱うことがあります。

1.政府の機能、民主主義の理念、選挙、政治参加、および講義で扱われたその他のテーマについて理解し、説明できるようになる。
2.ニュースなど、現実の政治問題に興味関心を持つ。

経済と社会

1回生以上

現代社会をその基礎的な部分で動かしているのは経済活動です。この講義では、まず経済活動を分析するために必要な経済学の基礎理論を学びます。その上で、経済社会を歴史的に発展変化するシステムとして捉えていく見方、考え方を素養として身につけます。その上で、現代経済において起こっている国内経済問題や国際経済問題を具体的に整理し、学んでいきます。

1.現代の経済社会が抱える諸問題について具体的に理解し、解説することができる。例えば、グローバリゼーションの中で発生している国際経済問題など。
2.現代経済の仕組みを捉える基礎理論を習得している。例えば、商品と価格の関係。貨幣の機能、資本の運動など。
3.経済社会が歴史的に発展し、変化する社会システムであることを理解し、その視点から現代経済社会を捉える素養を身につけている。

企業と社会

1回生以上

資本主義社会においては、企業は自由な経済活動を通じて、利潤を得ることは、非難されるべきことでありません。むしろそれによって、経済活動の質をたかめ、多くの付加価値を生み出して、経済社会生活を豊かにすることにつながります。しかし、市場経済の野放しの展開は、競争の結果を重視するあまり社会的な公正、正義を損なうことも少なくありません。本講義は企業と社会の関係に焦点をあてて、企業が社会のなかで果たしている役割、社会の中で企業が原因となって引き起こしている課題を考察し、真に豊かな社会を作るために企業とどのようにかかわるのか考えます。

1.企業が国民経済の中で果たしている役割を理解する。
2.企業が現代社会のなかで直面している課題を理解し、そのためにはどうすればよいか考える。
3.現代社会のなかで企業が果たしている役割を理解する。

日本国憲法

1回生以上

できるだけフレッシュな事例を取り上げながら日本の憲法問題を概説します。外国人の選挙権付与問題や、検定教科書問題など現代日本の社会が抱えている問題を深いところでつかみ、憲法の原理や解釈がそれとどのようにかみ合うのか、あるいはかみ合わないのか、法的にはどのような解決策があるのかについて考えます。

1.憲法の基本原理について正確な知識をもつこと。
2.国家権力のコントロールと人権保障について日本国憲法が果たしている役割を考えること。
3.日本国憲法が現時点で直面している問題点を考察すること。

国際化と法

1回生以上

法学の分野においても、国際化の潮流は、大きなうねりとなっています。とりわけ、第二次世界大戦以降は、古典的な国家間の法問題もさることながら、人権思想の普遍化とあいまって個人の活動範囲も広がっています。その結果、国際取引、国際結婚、国際犯罪、金融・サービスの自由化、外国人労働者といった個人のレベルでの法の国際化の課題が顕著となってきています。本講義では、国際社会における人権問題を総論としながら、担当者の専門領域における国際化問題を各論とし、伝統的な法理論を踏まえたうえで、日々生起する国境を越える問題を法学上正確に位置づけ議論する力を涵養することを目的とします。

1.この講義を通じて、受講生は、国際社会に生起する諸問題の法学的位置づけを認識し、体系的に説明することができるようになる。
2.法学の基礎的な考え方を、必須の専門概念・用語を用いて理解したうえ、他者と議論することができるようになる。
3.判例、条文の読み方ならびに法律情報の収集手段を修得することができる。

現代日本の政治

1回生以上

現代の日本政治は、先進国に共通する構造と問題をもちつつ、日本的な特徴も見出されます。この科目は、日本の政治について、基礎的な知識と検討のための視点を養います。取り上げるテーマは、日本政治の全体の構造、および選挙、政党、行政官僚制、利益集団、地方自治、市民参加などの制度と活動の実際です。内容と関連づけて、政治学の諸理論、政治文化、国際比較、日本の近現代の政治史などを扱うことがあります。

1.日本政治の全体の構造、選挙、行政、および講義で扱われたその他のテーマについて理解し、説明できるようになる。
2.ニュースなど、日本政治の現実の問題に興味関心を持つ。

現代の国際関係と日本

1回生以上

だれもが平和を願い生活の安定を望んでいるにもかかわらず、世界では紛争や戦争が絶えません。また、グローバリゼーションの深化にともない、飢餓、貧困、環境破壊などの諸問題は、国民国家の枠組みを超えて一層の深刻化を見せています。本講義では、まず、現代の国際関係の構造と動態を分析します。そして、これを通して、現代の国際関係が抱える諸問題の解決に主体的に関わっていくための、想像力・発想力・構想力を養います。

1.現代の国際関係(日本を含む)の主なる特徴について説明することができる。
2.現代の国際関係および日本が直面している諸問題を把握することができる。
3.国際関係学の諸理論についての基礎知識を持つ。
4.21世紀の国際関係に主体的に関わっていくための想像力・発想力・構想力を持つ。

日本経済概説

1回生以上

第2次世界大戦後の日本経済を主たる対象とし、歴史的発展プロセスを整理しつつ、日本経済の変化を画した重要な問題に対する解説を与えること、現在の日本経済が抱える主要な課題に対する見通しを与えることを目指して講義します。こうした内容に関しては開講学部に関わらず共通でありますが、講義に対する導入としての経済学の入門部分の説明、具体的に取り上げる経済問題に関しては、開講学部に応じて取捨選択します。

1.現実の日本経済の活動を理解する上で必要となる基本的な用語を身につける。
2.第二次世界大戦後の日本経済における主要な変化を説明することができる。
3.経済活動は複数の要因が相互に影響し合っていることを把握する。

現代の世界経済

1回生以上

国際分業の理論として、リカードの比較生産費説は、絶対的に生産性水準の低い国でも比較優位部門が存在し輸出可能であると解きました。この、基本的理論ベースの上に、IMF-GATT体制およびその崩壊後のWTOによる戦後の自由貿易推進過程が存在します。しかしながら、この過程は同時に不均衡拡大過程でもありました。それは、貿易摩擦問題、オイル・ショックと債務危機問題、多国籍企業の直接投資と新興工業国の台頭、アメリカの双子の赤字問題と基軸通貨問題、通貨危機の発生、そして国際環境問題などの形態をとって現れています。このように、現在の世界経済を概観するとともに、経済統計や制度・政策等を参照・比較しつつ世界経済の現状を理解する基本的な視点を学びます。

1. いわゆる「国際経済学」の入門レベルの理論と現代の世界経済の成り立ちの骨格である諸制度の習得。
2. IMF-GATT体制崩壊後の為替レート並びに国際収支不均衡の原因と対策についての習得。
3. 特に最近の資源価格の高騰およびアメリカのサブプライム問題に端を発する金融危機のメカニズムと原因把握。

現代の経営

1回生以上

本講義は、「現代の経営の仕組み」とそれをとりまく「社会・経済」についての基礎的な知識を獲得すること、それを通じて今日、「現代の経営」に社会的に何が求められているのか学ぶことを主たる目的としています。このため、講義では基礎的な知識の内容そのものも、もちろん展開されますが、あわせて「現代の経営を学ぶ上で何を知っておかなければならないのか」を理解することが重視されます。そして、この講義では、単に教科書的な知識をつみあげるだけではなく、実際の「現代の経営」について具体的なイメージをもてるようにトピックス(企業事例)から理論学習にはいるように工夫されています。

1. 現代の経営の仕組みについての基礎的な知識を獲得する。
2. 現代の経営に社会から何を求められているかを学ぶ。
3. 現代の経営に関わる経済・社会の仕組みやその社会的課題や問題点について理解する。

社会と福祉

1回生以上

社会福祉の歴史的展開をたどるとともに、人間らしく生活することへの基本的理解を深め、現代における社会福祉の意義や問題について考察しますが、その際には国際比較の視点から福祉制度における先進的な取り組みについても認識し、今後の福祉社会を展望できるようにします。

1.社会福祉を必要とする私たちの生活問題への関心と認識を深める。
2.現代社会における社会福祉の歴史的意義を理解し、説明できる。
3.現代社会の基本的な社会福祉制度や社会福祉サービスについて説明できる。
4.国内外の社会福祉の新しい動きについて説明できる。

災害と安全

1回生以上

災害が人間生活、国土にどのような影響を及ぼすかを事例(自然災害・都市災害など)を通じて論じ、災害の発生原因、メカニズム、被害構造、補償制度について自然科学的・社会科学的に、総合的に理解します。その際、地域レベル、政府レベル、地球レベルでの防災システムのあり方を、国連・政府・自治体・民間の活動を通じて学びます。

1.災害と安全について社会科学及び自然科学の方法論を用いて説明できる。
2.受講後の実践的活動に必要な防災知識を習得する。

特殊講義(ソーシャルデザイン論)

1回生以上

日本の地域社会は多くの課題を抱えている。そこでの解決策(ロールモデル)を提示することは、これからの日本の目指すべき道を示す事にも繋がる。これまで様々な主体によって数多くの対策が講じられてきた。彼らはどのように課題を乗り越えてきたのか、そこには多くの視座・視点がかくされている。
そこで、本授業はインプットとアウトプットの2つの特徴を持つ。まずインプットとして、困難かつ複雑な地域社会の課題に対する解決策の事例を理解する。次にアウトプットとして、これまで学習してきた内容を踏まえてワークショップ(グループワーク)を実施する。最終的には、地域社会の課題解決に関するソーシャルデザイナーのコンピテンシーを理解する。

(1) 論理的・批判的思考に関する基本的なスキルとマインドを体得できる。
(2) 学際的な観点より実践的なソーシャルデザインの事例(戦術面)を理解する事ができる。
(3) 地域課題解決について深く高度な専門的知見を持ち、様々な分野を横断的に捉える俯瞰力を理解する。
(4) ソーシャルデザイナーとしての責任感を持つ。
(5) 授業終了後には、自分にでもできるネクストアクションを起こしたくなる。

(留)日本の社会・政治

1回生以上※

※2016年度以降入学の留学生対象

日本社会の現状について広い視野で学ぶ科目。日本社会の成り立ちをその歴史的形成とも関わらせて考察し、具体的社会問題や国際比較なども通じて認識を深める内容、または、日本政治の現状と歴史的背景を踏まえつつ、日本の政治に関する基礎事項を学ぶ内容の、何れかを含む。

・日本社会に関する基本的知識を身につけることで、日本に対する理解を深めるための教養的基盤を拡げることができる。具体的内容により、以下の何れかの到達目標を達成する。
・現在の日本社会が抱える諸問題を多角的に認識・理解し、母国と比較して日本社会の特徴を理解できるようになる。
・日本の政治文化や政治制度を説明でき、母国と比較検討できるようになる。

(留)日本の経済・経営

1回生以上※

※2016年度以降入学の留学生対象

日本の現状について経済学的視点から学ぶ科目。日本経済史を踏まえつつ、現在の日本経済が直面する諸問題について考察する内容、または、日本の企業経営の歴史的展開と日本的経営の特徴を踏まえつつ、現在の企業経営について考察する内容の何れかを含む。

・日本の経済に関する基本的知識を身につけることで、日本に対する理解を深めるための教養的基盤を拡げることができる。具体的内容により、以下の何れかの到達目標を達成する。
・日本経済についての基礎的知識を有し、その説明が可能であるのみならず、現代日本経済が抱える課題について自分なりの捉え方や考え方を表明できる。
・日本の企業経営の特徴について基礎的知見を有し、その変遷や課題について理解できる。