TOPICS

MBA女性院生によるクロストーク<座談会>
~女性のキャリアについて~

クロストーク メンバー紹介

  • 水野 由香里 教授
    立命館大学ビジネススクール
  • 三井 貴子さん
    立命館大学ビジネススクール マネジメントプログラム1回生/三和化工紙株式会社 代表取締役社長
  • 中内 由佳さん
    立命館大学ビジネススクール マネジメントプログラム2回生/独立行政法人 中小企業基盤整備機構 近畿本部 企業支援部 中小企業アドバイザー(経営支援)
  • 水野 由香里 教授

  • 三井 貴子 さん

  • 中内 由佳 さん

水野:
今回は、RBS(立命館大学ビジネススクール)の在学生である中内さんと三井さんと一緒に、それぞれの経験談なども交えながら、女性のキャリア形成についてお話をしていきたいと思います。初めに、私の経歴と女性のキャリアについて考えていることを簡単にお伝えします。
女性研究者の数は多くありません。学会に行くと自分の周りが全員男性ということもありました。その背景には、研究・仕事・育児のすべてを完璧にこなすことの難しさがあると思います。私自身、大学院生の頃に第一子を妊娠し、つわりに苦しみながら修士論文を執筆。その後は休学などを挟みながら大学院時代を過ごしました。最終的には、2019年に論文博士で博士号を取得しました。紆余曲折あった中で、私が重要だと感じているのは「人間万事塞翁が馬」「ケセラセラ」「事後的合理性」などの言葉に表れるような、楽観的な思考パターンです。完璧主義を捨て、自分がやらなければいけないことと、余力があればやることを分類して、自分にしかできないことをしっかりこなす。これが、私が大変な日々を乗り切ってきた秘訣です。もう一つ、大切なのは味方の存在です。自分一人で仕事をしているわけではないですし、自分だけが大変な思いをしているわけではありません。何でも一人で乗り越えようと思わないこと。子どもやママ友、職場の同僚などと助け合い、情報交換を欠かさないことが重要だと考えています。
それでは、中内さんに自己紹介も兼ねてご自身の経歴などをお話しいただこうと思います。
中内:
私が社会に出たころは「短大卒が華」と言われる時代で、私自身も短大を卒業後、金融機関に事務職として入りました。3年間働いた後に結婚し、翌年には長男を出産しています。「お嫁に行くことができれば、三食昼寝付きのバラ色の人生が待っている」。そんな価値観が常識の時代ですので、キャリアについて考えることはありませんでした。転機は、夫がアパレル業界で会社を立ち上げたことです。私は事務や経理を手伝い、次第に生産管理や営業などについても学ぶようになりました。十数年にわたり取締役として会社を支えていましたが、経済不況のあおりを受け事業をたたむことに。ゼロからの再出発ということで、私は取締役時代に得た知識を生かし、中小企業の販路開拓を支援する仕事を始めました。企業と企業のマッチングを担うコーディネーターの仕事をしているのは、大手企業の元社長の方々がほとんどです。私は兵庫県信用金庫協会主催の中小企業支援事業に唯一の女性として参画していました。関わる企業OBの方々はいわゆる団塊の世代で、女性に対するアンコンシャスバイアスが強い人もいます。初めはボランティアからスタートし、時には「こんな小娘に何ができるんだ」と否定され、認められるまでは時間がかかりました。しかし、今思うと、それが私のモチベーションでした。この人たちに認めてもらいたい。その一心で、過去の経験で得たアパレルの知識をファッション業界に関心のある企業に還元し、未知のさまざまな知識をインプットし続けました。逆境を自分の力に変えていったのです。その中では、先ほど先生がおっしゃっていたように、周囲の人の協力を仰ぐことがとても大切だと思います。企業のOBの方々は博識で、知らないことは知らないと言うと快く教えてくれます。自分一人で何とかしようとするのではなく、周りから知識を盗めるだけ盗んで、前へ進んできました。
その後、経済産業省直下の独立行政法人 中小企業基盤整備機構に移籍しました。私の目標は、そこで現場のアドバイザーを管理するチーフアドバイザーになること。しかし、これも女性の前例がない。周りに認めてもらうための方法を考え、私が出した結論がMBAへの進学でした。そして入学した年に、目標であるチーフに就任できました。MBAで学んでいるということが私の経歴に箔をつけてくれたのです。何歳になっても遅いなんてことはありません。何歳でもやり直せるし、やろうと思えば夢は叶います。
水野:
ありがとうございました。それでは、三井さんもお話しいただけますか。
三井:
はい。私は現在三和化工紙株式会社の代表取締役をしています。大学卒業後すぐにIT企業に入社し、製造業の経理部や中学校の国語教師を経て、実家の会社を引き継ぎました。会社経営は22年目です。長きにわたり会社や学校に勤めた中で感じるのは、やはり女性に責任のある仕事を回してもらうことは難しいという現実です。勤め先の社員は多くが男性で、事務や経理にいる女性はアイドルのようにかわいく振る舞うことを求められる。そして、歳をとると価値が減る。そんな見方しかされない昭和・平成の価値観を、身をもって体感してきました。そんな中で自分の軸をしっかりと立ち上げ維持していくため、私の支えとなったのが学びへのモチベーションです。私は仕事をしながら教員免許の単位を通信教育で揃えました。教員免許状が手元に届いた時の喜びはひとしおで、何かを目指して学び続けることが私の生きる力になっていました。MBAへの進学を決意したのも、経営者としての成長を求めていたからです。私が下す判断を、従業員の方々に受け入れてもらうためには、私の経験則ではなくアカデミックな論拠がほしいと考えたのです。入学して4ヶ月ですが、社員と共有する情報が増え、社員の学びへの関心も高まっていると感じます。
令和においても根強く残る、「女性は華があればいい」という男性中心社会の古い価値観に萎えてしまうのではなく、そうではない自分もここにいると確かめるためにも、学び続けることが大切だと私は思います。中内さんもおっしゃっていましたが、人生で今日が一番若いです。まず立ち上がること。それが肝要です。
水野:
ありがとうございました。私自身、企業における男女共同参画の取り組みを多く見てきましたが、その中で感じるのは、多様性を一つの方向性にまとめあげることの難しさです。従来のモノカルチャー的な企業風土では対応できません。MBAには、中内さん、三井さんをはじめ、さまざまなご経験をされてきた方々が集まります。さまざまな人々が集まり、多様な視点で物事を捉えられるという点に、ビジネススクールへ通う意義があるのではないかと私は思います。
そもそもお二人はなぜ、立命館のMBA、RBSを選ばれたのでしょうか。
中内:
一番大きかったのは立地です。家事や仕事がある中で、キャンパスが遠いと往復でエネルギーを使ってしまいます。ここは梅田の中心でアクセスがとても良いので、通うことへの心理的なハードルが低かったのです。もちろん公開講座や説明会は受けたうえで決めていますが、私の中で最も大きかったのは立地でした。実際に通ってみると、学びの内容は非常に実践的で、すぐに自分の仕事に生かすことができます。入学を後悔したことは一度もありません。
三井:
私も立地はとても重要だと思います。あと、決め手になったのは、オンライン説明会に参加した際の先生の対応の丁寧さです。私が大学に通っていたころ、大学の先生は研究一筋で学生にはそっけないイメージだったのですが、RBSの先生方はとても親切で驚いています。
水野:
ありがとうございます。
話は戻りますが、お二人から見て、女性が活躍できる組織とはどのような環境でしょうか。三井さんが経営をされる中で気をつけていることは何かありますか。
三井:
男女問わず、社員が輝いているかどうかは、本人がやりたい仕事をできているかだと思っています。未来が見えないまま単純作業を続けることがないよう、面談をこまめに設け、新しい発見をしてもらえるよう配慮しています。
水野:
中内さんはさまざまな中小企業を見てこられたと思いますが、女性が輝く環境についてどのようにお考えですか。
中内:
私がお会いして話をするのは経営者の方が多いですが、三井さんがおっしゃったように、やはり自分のやっている仕事に納得のいっている人は、輝いていると感じます。ある企業と一緒にプロジェクトを推進することになった時、企業の社員から見ると私は完全に外部の人間です。初めはやる気が無く不遜な態度を取られる方々もいます。しかし、意見を求めたり、責任のある仕事を担当してもらったりする中で当事者意識が芽生えてくるのです。大切なのは意思疎通です。私の伝えたいことを意図通りに伝え、相手の伝えたいことを意図通り汲み取る。そのような円滑なコミュニケーションが、仕事における協働に楽しさを生むのだと思います。
水野:
ありがとうございます。
関東のあるスーパーでは、パートさんに長く働いてもらうための工夫として、売り場の配置やポップ作成などの裁量権を与えて、結果が出た人はちゃんと評価し表彰するという取り組みを行っています。もちろん、やりがい搾取にならないようにする必要はありますが、しっかりと目標を持ってやりがいを感じながら仕事をしている人は輝いていると言えそうですね。
中内:
みなさんは女性に生まれて損をしたと思うことはありますか。
三井:
私は損をしたと思いませんが、セクハラやパワハラは深刻な問題だと感じています。私自身、取引先の工場長にパワハラを受けて、誰にも相談できず泣いて帰ったことを覚えています。大切なのは、一人で抱え込まず、誰かに相談することです。
水野:
私は、何かあると必ずエビデンス(証跡)を残すようにしてきました。今は自分が加害者になってしまうリスクもあると思うので、学生と一対一になる時は教室のドアを開けておくなど配慮しています。
セクハラやパワハラの問題、ガラスの天井という言葉もあります。これらも含めて女性の出世にはいろいろな議論があります。お二人はどうお考えですか。
中内:
日本の文化として、女性が家庭を守るものという価値観が根づいていたので、私たちの世代では、短大卒で数年働いて寿退社というのが当たり前とされていました。そのような文化はかなり根が深いのではないかと思います。社会で働いていると男性中心社会の古い価値観に直面する場面は多々ありますが、今ではそれも多様な考え方の一つと受け入れることができるようになりました。一方で最近は、頭数を一定数揃えて女性を登用するという取り組みが進んでいますよね。賛否ある取り組みですが、私はポジティブに捉えています。もらったチャンスを最大限生かして、女性だってできるんだということを社会に示していければいいと思っています。
三井:
そうですね。中内さんがおっしゃったような古い価値観がベースにあると、やはり女性は結婚し出産のタイミングで辞めてしまうから投資をするなら男性というのは、企業としては合理的な判断だと思います。ただ、今の若い人たちは、転職をしながらキャリアアップをしていくというキャリア観が当たり前の世代ですから、そのあたりは経営者側が男女関係なく捉える必要があると感じています。
水野:
ありがとうございます。
女性の社会進出が進んできている現代ですが、中内さんや三井さんのご経験にもあったように、社会に認められるためには時間がかかったり、軽視されてしまったりする現実もあります。ただ、忘れないでほしいのは、頑張りを見ていてくれる人は必ずいるということです。私自身でもそうです。先輩からたくさん論文を書いているのだから本を出しなさいと言われ、出版社の編集長を紹介してもらった経験があります。そしてその本で中小企業研究奨励賞をいただきました。必ず応援してくれる人、後ろから支えてくれる人がいるので、どんどん巻き込んで、自らのキャリアを開拓していただきたいと思います。
これでクロストークを終わります。ありがとうございました。

取材日:2022年8月6日