木村敏氏(京都大学名誉教授・河合文化教育研究所主任研究員)
 
西田哲学の必要性を説く木村氏
 
 
文学部人文学科開設記念連続講演会〜人文学とその未来〜 第3弾「西田幾多郎と精神病理学」
 
 12月10日(水)衣笠キャンパス末川記念会館ホールで、木村敏氏(京都大学名誉教授・河合文化教育研究所主任研究員)の講演会『西田幾多郎と精神病理学』が行われた。

はじめに木村氏は、ドイツ留学中に日独での精神病患者の病的体験の違いに気づき、日本独自の精神医学の必要性から、日本の哲学者西田幾多郎の著作を読み始めた経験を語った。精神医学における患者の一人称的体験を直接に理解するために「現象学的精神病理学」が必要であると主張する木村氏は、西田幾多郎の「直接経験」「場所」「絶対無」の概念が、離人症や統合失調症における「自己」の在り方の困難を理解する上で非常に有効であることを、具体的な症例と西田幾多郎の文章をもとに平易に語られた。一人称的な患者の心を直接知る経験を得るためには、「個は個に対して個である」という西田哲学の他者論が重要であることを力説された。
1時間30分を越える講演と熱心な質疑応答に、満席の聴衆から大きな拍手が寄せられた。

なおこの連続講演会は、今期5弾に続き、来春にも後半部が企画されている。
詳細はこちら