監督の阪本順治氏と安齋育郎氏の対談
 
 
立命館大学国際平和ミュージアム主催 映画『KT』上演会
 
 7月3日(土)、立命館大学以学館1号ホールで立命館大学国際平和ミュージアム主催による映画『KT』の上映会が開催された。映画『KT』は、1973年に日本で実際に起こった「元韓国大統領 金大中氏拉致事件」を描いた作品であり、金大中事件に関する綿密な調査・証言をもとに、関係した日韓全ての人物の心理と行動を大胆に描き切ったノンフィクションドラマである。日韓共同開催ワールドカップを目前にした2002年に公開され、歴史に迫る日韓合作として話題を呼んだ映画である。

 上映の合い間には、『KT』の監督である阪本順治氏と立命館大学国際平和ミュージアム館長 安齋育郎氏の対談が行われた。
阪本氏は『KT』を撮影するにあたってのきっかけや苦労話を話したのち、映画の中で何度も描写される日韓の関係について安齋氏と語り合った。安齋氏は、日韓における若者の意識の違いについて「日本人学生は耳塚があることさえ知らない。しかし韓国の留学生はよく知っている。この違いは侵略国と被侵略国という歴史的な背景にあるのでは」と投げかけた。それに対して、阪本氏は「私が交流した韓国人は、愛国心というより、自分の国について『ここが良い点、ここが問題点』と自分の言葉でコメントできる人が多かった。韓国映画が面白いのは、根幹にそのような意識が流れているからではないか」と返した。

 続いて、作品の中で触れられる自衛隊の意義についての話に移った。この映画の主人公の富田は自衛隊員で、映画の中では「自衛隊」という組織のあり方や意義をさまざまな形で問いかけてくる。阪本氏は「この映画を作るに当たって、自衛隊員と話をしたが、本人たちの意識は人それぞれ。それを聞いて、結局は我々の意識の問題ではないかと思った。自衛隊の意義を批判するより、自分に何ができるか考えるべきであり、行動主体性をもっと持つべきだ」と強調し、対談を終えた。
 当日の2回の上映があり、のべ120名の学生や一般人の来場があった。