シンポジウムの様子
 
多和田葉子氏(向かって右)
 
 
シンポジウム「エクソフォニー−異言語への欲望」開催
 
 10月8日(金)、立命館大学末川記念ホールで国際言語文化研究所・先端総合学術研究科主催のシンポジウム「エクソフォニー−異言語への欲望」が開催された。あいにくの雨模様ながらも70名の参加者があった。

 はじめに、作家である多和田葉子さんの講演があった。多和田さんはドイツに在住していることから、現在では日本語よりドイツ語を使う機会が多い。彼女はドイツ語で生活することで母語との距離を感じたという。そんな中、あるシンポジウムで「エクソフォン」という言葉を初めて耳にし、それが「母語の外に出た状態」と定義づけされていたことから、彼女の中での母語への挑戦が始まった。彼女の言葉を借りると、『それは母語の外に出る旅』が自分の中で明確になったと述べた。

 その後、四人のパネリストが小説における国語(ここでは母国語の意)での表現や、国語から飛び出し異言語に触れることの有意義性について話し合った。
 パネリストの一人が示したとおり、彼女の小説は従来の「日本語」の形を打ち崩し、新しい形を見出している。彼女はまさに今、母語と異言語の間を行き来し、異言語に浸透していく反面、母語を改めて見つめなおすという作業を行っている。それが彼女の小説から伺える。グローバリズムが進む中、文学の非国民性、すなわち国境を越えた文学の発展を支えるこの「エクソフォニー」という概念は、文学の中だけにとどまらず、すべての場面で当てはめることができるのではないだろうか。

 今回のシンポジウムは、10月7日(木)から2日間にわたって開催された。初日は、「朗読とピアノ 多和田葉子朗読会―言語的冒険」ということで芥川賞作家である多和田氏の作品朗読をドイツで活躍されるピアニスト高瀬アキ氏の演奏に合わせて行われた。