講義の様子
 

 
 
立命館大学大学院先端総合学術研究科 特別公開講義『アメリカは世界に何をもたらすか』第2回 「現在 『帝国的ナショナリズム』」
 
 2004年12月17日(金)、立命館大学衣笠キャンパス内にある末川記念会館において、立命館大学大学院先端総合学術研究科 知の潮流を創るパート4「新たな研究者のあり方を求めて―特別公開講義『アメリカは世界に何をもたらすか』」が行われた。
 今回は、第2回「現在『帝国的ナショナリズム』」と題して、京都大学助教授 大澤真幸氏が学術的な内容を身近な事例を交えながら分かり易く講義を行った。

 大澤氏は、ナショナリズムは、グローバルな世界<帝国>の中では、不必要なものになると考えられてきたが、現在逆に強固なものになっている。この矛盾はなぜ生じているのか、そして世論がアメリカに協力的でありながら、一国独裁的なアメリカを同時に批判するのはなぜかと問題を提起した。
 そして、大澤氏は「現代の資本主義世界では、実体のない不定・未定な<帝国>に国家は支配されている。逆に言えば、明確に表現できるものは<帝国>に支配されているあらゆる共同体だけであり、だからこそ現代のナショナリズムは小さな共同体から国家・国民へ統合するものではなく、小さな共同体へ分解していくものに変化してきた」と述べた。
 つまり、「実体のない<帝国>に支配されているからこそナショナリズムが強固になっている」と語り、「もしくは、小さな共同体へ分解していく民族的ナショナリズムが強調されるからこそ、実体のない<帝国>に支配されていることを表すことができる」とナショナリズムの2つのベクトルを暴き、両者の補完的な関係を説明した。
 そして、イラク戦争を例に挙げ、「時には世界の平和のためにと普遍主義的にもなり、石油資源支配へと動く利己主義的にもなるアメリカの行動は、矛盾しているように見えるが実はリンクさせることが可能なのだ」と述べた。

 講義後も<帝国>の定義を巡る議論など、聴講者との意見交換が盛んに行われ、会場は「知の潮流を創る」というテーマに相応しく熱気に満ち溢れていた。