日蓮宗池上本門寺の早水日秀執事長
 

講義の様子
 
 
2005年度連続リレー講義「現代社会と宗教」
第12回目「一滴の水も集まれば」
 
 6月27日(月)衣笠キャンパスにおいて、連続リレー講義「現代社会と宗教」が行われた。第12回目となる今回は、日蓮宗池上本門寺の早水日秀執事長が「一滴の水も集まれば」をテーマに講義を行った。

 早水氏は冒頭、身内の葬式など儀式としてしか繋がりのなくなった今日の寺の姿は問題であると指摘した。その象徴として、一連のオウム関連の事件の際に被告らが「寺は風景にすぎなかった」と表現していることに触れ、季節・情緒あふれる空間としての本来のお寺の姿を取り戻すためには、より開放感あふれ、敷居の低い場として、お寺を見直していかなくてはならないとした。

 そうした問題意識に立ち、立教開宗750年を機に、より多くの人たちに寺を身近に感じてもらいたいとの思いから「イキイキ本門寺」を合言葉にはじめた「満月の十三祭り」の取り組みを紹介した。早水氏は「1年に13回ある満月の毎夜に多彩なアーティストを迎えて開催するこのイベントを通じて、今まで寺とあまり縁のなかった人たちも加わっていただいた。こういう取り組みを通じて世界中にイキイキの輪を広げていきたい」と述べ、小さなことでもみんなで頑張れるような「事起こし」の場としてのお寺が重要であるとした。

 講義後、学生からは「こういう取り組みを通じて集まった人たちは、寺そのものに何を見出したと考えるか?」との質問が寄せられた。これに対し早水氏は「お寺そのものがこれまで遠い存在だった。そのお寺に寄り集まり、携帯カメラで坊さんと写真を撮る姿が見られたり、イベント後に手紙が寄せられたり、悩みの相談を持ち掛けられたりと少しずつ反応が出始めている。たった一滴の水でも、それが集まれば世の中を潤す大きな力になるので、時間はかかるが各々がお寺を身近に感じてもらえるように努力したい」と答えた。