秋山具義  さん
アートディレクター
コミュニケーションマークを制作
  2007年10月10日、立命館学園のコミュニケーションマークが発表されました。このアルファベット一文字で表されたコミュニケーションマークには、実に様々な思いが込められています。
今回は、コミュニケーションマークをデザインされたアートディレクターの秋山具義さんに、「R」に織り込まれたメッセージについてお伺いしました。
   
   
Q_

最初にコミュニケーションマーク「R」のコンセプトをお聞かせください。

   
秋山_

まず一番大切にしたかったことは、「シンプルである」ということです。在学生、生徒、児童や教職員、校友、受験生や保護者など、立命館と関わる人全てが、このコミュニケーションマークを見ることで同じイメージを共有できるかどうかを大切にしようと考えました。
色味も同様で、立命館のスクールカラーのえんじ色以外を用いた場合、どうしても違和感が出てしまいますよね。「R」と言えば立命館、誰が見てもそうイメージできるようなマークであることを重視しました。シンプルな「R」ロゴですが、これが人と人との心をつなぐツールとなってほしいですね。

   
Q_

このコミュニケーションマークにより、みんなの立命館へのイメージが共有されるのですね。では次にコミュニケーションマーク「R」の特徴を教えてください。

   
秋山_

大学のコミュニケーションマークであるからには、「知性」や「品位」を感じることのできるようなものにしたいという思いを持っていました。そのなかで、このコミュニケーションマークの最も大きな特徴と言えるものは、黄金比です。黄金比とは、人間がもっとも美しいと感じる割合、5:8の事を言います。ギリシャのパルテノン神殿やオウムガイの殻など、人類が美しいと共通して感じられるものは、5:8との割合で生み出されていることが多いのです。コミュニケーションマークが長い時間、飽きずに使用され続けるために、人々に自然に受け入れられるよう「設計」しました。また、フォントはオリジナルのものを制作しました。よく見ると一般的なゴシック体とはちょっと違うんです。さっぱりと綺麗なフォントを使用することで、大学としてのインテリジェンスを表現しました。

   
 
 
   
Q_

デザインにも黄金比やオリジナルの書体など、秋山さん独自のこだわりを感じますね。このデザインを立命館から依頼された時のお気持ちはいかがでしたか?

   
秋山_

このデザインを依頼された時、気合いと緊張感を同時に感じました。通常の広告が掲出される場合、1週間や1ヶ月というように、世の中でデザインが使われる期間が短く限定されていることが多くあります。
しかし、大学のコミュニケーションマークとなれば、これから50年、100年と長い間利用され続けるもの。大きな使命感を感じるとともに、アートディレクターとして刺激的な仕事ができると思いました。それと同時に「日本にある大学の中で最もシンプルで美しいマークをデザインしよう」と決意しました。また私自身、京都が大好きでプライベートでも訪れたりしています。東京や大阪などとは違った時間の流れを感じることができるところが京都の魅力だと感じており、都市として大変気に入っています。そんな都市に位置する立命館大学と仕事ができるのはとても幸せでした。

   
Q_

立命館のイメージを深めるために、実際に立命館大学のキャンパスを来訪されたそうですが、印象はいかがでしたか?

   
秋山_

私は立命館大学のOBではないのですが、当初から知的なイメージを持っていました。実際に2007年7月に衣笠キャンパスとBKCを訪れたのですが、大学としての規模の大きさにまず驚かされましたね。BKCではキャンパスに入ってすぐの、くぼんだクインススタジアムのデザインが印象的でした。講義では、情報理工学部のアイボを使ったプログラミングの授業を見学しました。とても難しそうな内容だったのですが、学生の目が輝いていて、在学生のエネルギーを感じることができました。
衣笠キャンパスでは、BKCとはまた違った、ゆるやかな空気が流れていたことが印象に残っています。趣のある建物が密集していて、とても静かな雰囲気。同じ大学なのに、これほどまでに雰囲気の違うキャンパスを持つ大学は珍しいのではないでしょうか。そんな多様性のある立命館を一つにまとめられるようなマークを設計したいと現地に足を運んで感じました。

   
 
 
   
Q_

立命館大学を実際に肌で感じられ、デザインをされたのですね。ではこの「R」というデザインを思いついたのはいつごろなのですか?

   
秋山_

もともと開発コンセプトの段階で「シンプルさ」を念頭においていたので、斬新すぎるマークは浮かびませんでした。このコミュニケーションマークは、これから立命館に関係するすべての人の身の回りで目に入ることと思います。このマークを見た人に「前からあったかも」と思わせられるような親近感のあるマークにしたいとの思いを持っていました。
Rits、立命、立命館…一口に立命館大学と言っても、呼び方は人それぞれです。そこで、どんな呼び方をしても最初に来る頭文字、「R」をデザインに使うことに決めました。後はこの「R」をどのように表現しようか考えぬきました。自然となじむようにえんじ色を使ったり、人類の共通の美しさのある黄金比を用いたのもそのためです。「R」のどの部分にも、根拠があるのです。これからこのコミュニケーションマークを使っていくとき、この「R」に込めた思いを感じながら使用して欲しいですね。

   
Q_

最後にこのコミュニケーションマークを学生にどのように受けとめ、利用してほしいとお考えですか?

   
秋山_

学生のみなさんにはこのコミュニケーションマークを身につけることで立命館のパワーを感じてほしいです。例えば、大学スポーツの応援で「R」の入ったグッズを使うことにより、応援する人みんなの気持ちが一つになる手助けを、このコミュニケーションマークが担えたら良いですね。
また、コミュニケーションマークが立命館大学を受験したいと思う高校生や社会の中で憧れの存在となることで、学生がコミュニケーションマークへの誇りを持つようになってほしいです。自分たちの生活の一部にさりげなくあることで、気持ちがポジティブになるだけでなく、どこか背筋の伸びるようなパワーを与えてくれるものとして受け止めてください。今後、このコミュニケーションマークを学生がどのように利用するか、学生のみなさんのセンスにも大いに期待しています。

 
取材・文辻 健太郎(経済学部4回生)