「Rs be ambitious!」
佐藤友美子氏(1975年 文学部卒業)(財)サントリー文化財団 上席研究フェロー
あなたの一生を通して「本当にやりたいこと」は何ですか?
立命館大学を卒業し、各界で活躍するOB・OGが
在学生の皆さんにエールを送る「Rs be ambitious!」。
今回は(財)サントリー文化財団 上席研究フェロー 佐藤友美子氏(1975年文学部卒業)にインタビュー。
入社15年目にしてやりたい仕事に就くことができたという佐藤氏に、
働くということや学生時代の過ごし方について伺いました。
(2008年7月25日掲載)
 

在学中は文学部で日本文学を学びました。しかし、私はみなさんのお手本になるような熱心な学生ではありませんでしたね。テニスの同好会に所属していて、学生時代をエンジョイしたという感じ。また、図書館が好きでよく行き、たくさんの本を読みました。旅行も好きで、信州や、アメリカなど色んなところへ行きましたね。当時は、今のようにみんなが大学へ行くという時代ではありませんでした。恵まれた環境に感謝しつつ、与えられた自由な時間だと思って、4年間の大学生活を謳歌しました。

 

私がサントリーに就職を決めたのは、「ものをつくる」ことに魅力を感じたから。サントリーは商品だけでなく、新しいメッセージを発信していました。例えば当時、「金曜日にワインを飲もう」といったCMを流していました。ライフスタイルの提案をCMで行うことは今でこそ普通ですが、当時は斬新なことだったんです。私はそのCMから、サントリーが「ものと関係した新しい文化をつくっている」というイメージを強烈に受けました。とてもかっこよかった。「女性の視点や生活者の視点を活かして何かできるんじゃないか」という思いが強くなり、門をたたきました。

 

 

 

私の最初の配属先は、大阪の島本町にある研究所の総務課。「なぜ私だけ研究所に配属なんだろう」と考えることもありましたが、働いているうちに「仕事って面白いな」と感じるようになりました。働き始めて3ヶ月ほどで、「ずっと仕事をしていこう」と思うようになりましたね。仕事では求められることはどんどん変わっていき、それに対して自分がどう工夫するかで全然違った結果になるんです。総務課時代の先輩から「次工程はお客様」という言葉を教えられました。書類を一枚書くときも相手をお客様だと思ってわかりやすく書く。そうすれば仕事がスムーズになるんだ、と。それが直接返ってこなくても、必ずどこかで活きてくるんです。また、仕事にドラマのような面白さも感じましたね。

 

入社15年目、私に転機がやってきました。サントリー不易流行研究所の準備チームに入らないかと声をかけていただいたんです。入社当初からやりたいと思っていた「ものと関係した新しい文化の提案」ができると感じ、とても嬉しかったですね。不易流行研究所では「生活の中の楽しみ」をキーワードに生活文化の研究をしました。研究所は2005年に次世代研究所と名称変更します。次世代研究所では若い人達が生きやすい社会にするにはどうすればいいのか、などをテーマとしました。なぜなら、今の社会は昔に比べて選択肢が多く、なんでもできる。しかし、選択肢が多すぎるゆえに悩んでしまう。そのような多様な選択肢に溢れた社会を生きるには、若い人たちの自立を支援する必要があると思ったからです。もちろん大人にも柔軟な姿勢が求められます。

 

その次世代研究所は所期の研究目的を達成し、今年の春に活動を終えました。現在はサントリー文化財団に在籍しています。サントリー文化財団では、学術研究に対する助成や地域の文化向上に貢献した人たちを顕彰しています。私は新しい研究テーマを2つ担当する予定です。1つ目は「これからの“働く”ということ」。昔は働く=労働でしたが、今では好きなことや社会のためになることを仕事にするというスタイルに変わりつつあります。そしてグローバル化も進んでいます。経済原理だけでは解決しない労働の問題を総括的に研究してみようと考えています。もう1つは「社交と交流」です。今の世の中は、一見コミュニケーションを取りやすくなったようで、逆に難しくなっています。メールの返信に縛られるということもその一例だと思います。そうではなく、もっと深く関わり合って、信頼関係を築くにはどうすればいいのかを考えていきたいですね。

 

仕事をしていると、ばらばらだと思っていたものがつながって見える瞬間があります。答えが出ないと悩んだ末に「ああ、こういうことだったんだ!」とふとした瞬間に問題が解けるんです。そんな時はとても楽しく、やりがいを感じます。また、この仕事では多様な分野の方のお話をお聴きしたり、様々な場所へ行く機会が多いので、勉強になることがたくさんあります。生き方の勉強というのでしょうか。

 

私が入社当初から思っていたやりたい仕事に就けたのは37歳になったときでした。最近は3年で離職する方も多いようですが、本当にやりたいことには、そんなに簡単に巡り会えないんだと思います。だからこそ、長期的なスパンで仕事をするべきだと思いますね。面白い仕事には信頼関係は必要不可欠です。その信頼関係は、長く仕事を続けないと生まれないものですから。

 

女子学生の中には仕事は数年経ったら辞めて家庭に専念しようという人もいるかもしれませんね。私も学生時代はそんな風に考えていました。しかし、仕事をするうちに長期的な関わり合いの中で成長し、成果をあげたいと思うようになりました。ですから、子どもができたからといって仕事を辞めようとは思いませんでしたね。仕事を辞めて主婦業に専念したのでは自分のエネルギーが余ってしまい、決してプラスにはならないということもよく分かっていたからです。専業主婦になっていたら、恐い母親になっていたでしょうね(笑)。もちろん、子育てをしながら働いているときはしんどいこともたくさんありました。けれど、今となっては忘れてしまうようなことばかりです。ですからみなさんも、自分の体力・気力や家族との関係をよく考えた上で、自分の人生をどのように生きていくかを決めていけばいいと思います。一生を通して、自分が「本当にやりたいこと」を見つけ、それに取り組んで行ってほしいですね。

 

学生のみなさんには先のことばかり考えるのではなく、今という時間を大切に、自分の本当にやりたいことをやってほしいです。就職のために資格を取るというのは一見わかりやすい目標です。ですが、それが本当にあなたのやりたいことなのでしょうか?学生生活の中でやりたいことが見つからないという人も多いと思います。そういうときは、心を開いて、社会へ一歩踏み出してみることです。立ち止まらないことが大切です。外へ出てみれば、出会いがあり、人によって自分自身を知るということもたくさんあります。

 

今の若い人たちは「社会は変わらない」と思っていますよね。けれどそんなことはありません。社会は確実に変わります。例えば、私のころは育児休暇なんて考えられなかったことですが、20年経った今では普通となっています。このように、社会は変わっていくんです。変わらないと感じるのならば、自ら変えて行けばいいんです。そのために働くのですから。

 

最後に、学生時代は自分の感受性を全開にして、人がどのように考えているのか、社会はどのように動いているのかを想像し、それを受け止めてほしいです。クリエイティブだけではなく、イマジネーションも大事にしてほしいのです。そのためには様々な経験が必要です。大学生のときにしかできないことに積極的に挑戦してほしいと思います。

 
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[学生広報スタッフ取材後記]
今回お話を伺って、自分は「本当にやりたいこと」を選択しているのか、大学生活だけでなくこれからどう生きるのかということを見つめ直すことができました。また「社会は変わる、変えられる」という言葉がとても印象的で、希望を持てました。
私も今を大切に、毎日を丁寧に生きていこうと思いました。
 
取材・文/遠藤伊与(産業社会学部2回生)
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