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GIS(地理情報システム) 新時代 | |
ワールドワイドに展開するGISの これまでとこれから | ||
●文学部 矢野 桂司 助教授に聞く● |
昨今のめざましいIT分野の進展とともに、国家・地域・環境・災害対策・軍事・商用、日常生活といった社会のあらゆる場面でGIS(地理情報システム)が普及し開発・活用されている。様々な業態で行動計画を立案するための情報分析をおこなう上で、戦略的システムとしても必要不可欠とされるGISについて、地理学科で地域情報コースを担当されている矢野桂司先生に、概要をご説明いただいた。 Q 最近の新聞や雑誌で、近年官公庁や地方自治体、民間企業のエリアマーケッティングの戦略ツールとしてGISが積極的に開発・活用されていると報道されています。GISの理解を深めるために、その歴史的背景についてお教え下さい。
A あらゆる科学技術の発展は、軍事利用と平和利用の目的という二つの側面を持っています。それは人類の未来に向けて、常に諸刃の剣となりうる可能性を有しています。コンピュータで地図(地形)情報を扱う最初の試みは、米軍によって第二次大戦後間もなく開発された北米防空システムであるといわれています。飛行機の位置をデジタル地形図上に表示するシステムでした。記憶に新しい湾岸戦争は、本格的なGIS戦争であったといわれていますね。 Q 最近のGISブームとの直接的な関連でいいますと?
A 現在のようなGISブームの最大の原動力となったのは、1988年の米国における全米科学財団(NSF)の巨額の基金による国立地理情報分析センター(NCGIA)の設立です。NCGIAは産官学プロジェクト型複合研究組織であり、その使命としてより広いアカデミックと関連分野への知識の普及がありました。ほぼ同時期に同様の目的で英国でも地域研究ラボ(RRL)が設立され、全世界へのGISの普及に大きく貢献することとなりました。 Q 先生はこの分野における第一人者として、GISによる地理学的現象のモデル化を手がけてこられました。GISはこれからも様々な分野で大衆的に拡がりをみせるわけですね。
A 社会のあらゆる分野と地理学を結びつける試みは、GIS革命により決定的になっています。とりわけ応用地理学はGISを介して社会に貢献する地理学として展開されつつあります。教育におけるGISの大衆化は、私の使命とする、学問としての地理学の復興をもたらし、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)での活動にみられるような、空間情報科学としての新しい空間認識のとらえ方のさらなる進化が予想されます。 Q GISをめぐる環境のこれからの方向性についてお教えください。
A 国内では産業経済省が年内を目処に、GISの規格をG-XMLとして国際標準化することに取組んでいます。またインターネットでも、モバイル化を含めWEBブラウザを介して様々な地理情報を提供するWEB GISが普及してきています。このような動きは社会のあらゆる分野を対象として広がっていくものと思われます。空間に時間次元を取り込み四次元GISとして、パソコン上でデジタル地図が動態化され、地図をみる人の視点を自在に変えることができるようなものが近い将来必ず到来します。 |
矢野桂司助教授(都市地理学、数理地理学、地理情報システム) | |
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東京大学空間情報科学研究センター客員助教授
■主な著書・研究論文
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