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新エネルギー

●政策科学部 周瑋生 教授に聞く

「21世紀エネルギーの主役は?」
 

化石燃料の大量消費で支えられた20世紀、エネルギーは人類の発展に不可欠であることを教えてくれた。現在、地球上には様々なエネルギー資源が存在している。地球環境との共生が叫ばれるなか、21世紀の主役を担うエネルギーとはどのようなものだろうか。持続可能な開発戦略を構築すべく、エネルギーをご専門に研究されている政策科学部の周瑋生教授からお話を伺った。


 

Q 現在のエネルギーの中心は石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料でありますが、その理由とは?また、化石燃料の利用には課題はないのでしょうか?

A:エネルギー政策には「経済性」、「安定性」、「環境性」といった、3つの基本原則があります。化石燃料は「経済性」と「安定性」に最も適していたものです。そのため、化石燃料が世界のエネルギーの中心として現在まで発展してきたと考えられます。産業革命以降、我々の物質文明を作り上げたのは化石燃料のおかげだとも言えるでしょう。しかし化石燃料には大きく2つの問題点があります。ひとつは「枯渇性」の問題。3年前のIEA(国際エネルギー機関)のデータによると、今世紀中は石炭、石油、天然ガスは枯渇しないと示されていますが、その先の世紀を視野に入れた場合、何らかの対応が必要なのは明らかです。次に、これは最近になって表面化してきたのですが、「環境」の問題。特に石炭や石油は、大量の二酸化炭素を排出するため、温暖化や酸性雨など、地球環境に大きな影響を与えています。

Q エネルギー資源のひとつである天然ガスに対する期待が高まっている、と聞きます。

A:天然ガスも化石燃料のひとつですが、石炭や石油と比較すると非常にクリーンなものであるため、今後の活用について期待が高まっています。日本でも、1997年の地球温暖化防止京都会議で、2008年までに二酸化炭素を1990年比6%削減する目標を立てていることから、二酸化炭素排出量の少ない天然ガスに注目が集まっています。

しかし、エネルギー資源の中心である化石燃料の大部分を輸入している日本は、世界の先陣を切って化石燃料に頼らないエネルギーを開発することが必要だと思います。経済性と安定性を主軸にエネルギー政策を打ち出してきた日本では新エネルギー資源の開発にそれほど積極的ではありませんでした。しかし、長い目でエネルギーの安定供給を「確保」するためには、今から新エネルギーの研究・開発・導入に力を入れる必要があると思います。

Q それでは今後、どのようなエネルギーが主役になると思われますか。

A:様々な前提条件をもとに考える必要がありますが、例えば化石燃料が当分枯渇しないという前提を置くならば、まだまだ世界のエネルギーシステムの主役は化石燃料であると思います。環境面での問題はありますが、安定性、経済性は他のエネルギー資源よりも秀でていますから。現在のところは、この可能性が最も大きいでしょう。

しかし今後、二酸化炭素の排出が厳しく規制され、化石燃料の使用が制約されたなら、日本では原子力が主役となることも考えられます。

もちろん近い将来、新エネルギーが登場する可能性もあります。デンマークなどでは風力をエネルギー資源として積極的に利用していますが、日本でも風力、そして太陽などに注目が集まっています。しかし日本には特有の気候条件が存在するため、導入にはさらなる研究・開発が必要です。また宇宙太陽光を利用した発電も考えられます。これならば天候と時間に影響されず発電できます。

今後のエネルギー構造は、一種のエネルギー源ではなく、経済性、安定性と環境性を考慮した多種のエネルギー源のベストミックスであると考えられます。大切なのは21世紀よりも先の世界を見据えること。次世代を担う世代が安心して暮らすためのエネルギー開発です。

周 緯生 教授
専門分野:エネルギー・環境政策学
■主な著書・論文
  • 『地球を救うシナリオ―CO2削減戦略』
    (共著『日刊工業新聞社』 2000.8)
  • 『日中比較からみた日本のエネ・   環境技術―地球温暖化防止への貢献』
    (『日本機械学会誌』101-951、P.9-11、98.2)
  • 『Analysis of Energy Demand and Potential of CO2 Emission Mitigation in
    China in Global System』
    (『RITSUMEIKAN JOURNAL OF INTERNATIONAL RELATIONS AND AREA STUDIES』16,P.129-141,2000.3)


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