産業社会学部 奥村 信幸 助教授に聞く
ひろがる「ケータイ」の可能性

 いまや私たちの日常生活に欠かすことのできない携帯電話。その登場から約20年が経過し、形・機能などの面で様々な変貌を遂げて、現在の小型・多機能情報端末へと発達していった。アナログからデジタル、デジタルから世代交代していった第3世代携帯(3G)は、2001年にサービスが開始され、高速大容量のインターネット通信を利用して様々なコンテンツを使えるようになった。3Gはただ最先端の機能を備えるだけでなく、一般のユーザーにとってもメールの高機能化、パケット通信料の引き下げなどのメリットがあることも魅力だ。
そこで今回は、第3世代携帯の現状、そしてその今後について、産業社会学部の奥村信幸助教授にお話をうかがった。
「第3世代携帯」とは、どのようなものですか?

 第3世代の「ケータイ」は「Generation(世代)」のGをとって、「3G」などと呼ばれます。15年くらい前の携帯を覚えている方も多いと思いますが、肩にかけて持つ、百科事典くらいあったあれが「第1世代」です。アナログだったので、盗聴されやすく、ある周波数帯を独占してしまうので、効率が悪いなどの欠点を補い、デジタル化したものが「第2世代」です。そのころには、だいぶ小型化されて、ポケットに入るようになりましたが、通話と短いメールに簡単な携帯用ホームページを見るくらいがせいぜいでした。そして「第3世代」、3Gですが、半導体技術などの発達によって、「ケータイを使ってできること」の幅が飛躍的に広がりました。主に2つの側面があります。ひとつは、「ネットワークの高度化」、つまり様々なネットワークに接続して利用する機能です。NTTドコモのFOMAで使えるテレビ電話機能や、音楽やゲームのダウンロード、カーナビのようにGPSを使って地図を見たり、現在の位置がわかるようなもの、海外で利用できるものも増えてきました。携帯を使って家のお風呂を沸かしたりするようなホームセキュリティなんていうのもあります。もうひとつは小型化が進んで、「ケータイ」自身にいろいろ便利な機能がついてきたということです。「非接触型ICチップ」を埋め込んだり、「2次元バーコード」というものを使うことで、個人のデータを蓄積して、身分証明書代わりとか、一部にはもう「おサイフケータイ」などと呼ばれていますが、ちょうど改札機でお財布などをかざせば通れるJRのスイカやイコカのような使い方ができるもの、さらに進んでクレジットカードの決済機能もつけられるものもあります。血圧や体温などを測り、健康維持に役立てられるものも開発されているそうです。スペックが向上して、ネットワークをいろいろに使いこなせるようになってきたというわけです。
この「第3世代のケータイ」の普及は、私たちの
生活にどのような影響をおよぼしますか?

 「使いこなせば」便利になりますよね。「本当に必要な機能だけを選ぶ」ということが必要になってくると思います。さっき言ったテレビ電話機能付携帯ですが、実は思ったより売れていないそうです。そこまで、あまり必要なかったということかもしれません。それから、機能が増えるとそれなりにリスクも増えます。セキュリティの問題です。身分証明書やプリペイドカード、クレジットカードやマンションのカギ機能などを満載したケータイを落としてしまったら、どうなるでしょう?もし失くさなくても、機種変更の時はちょっと怖いですよね。携帯電話会社が、個人重要情報を全て握ってしまうのです。金融機関の顧客情報などが漏れる事件が、このごろ多発していますが、それより多くの大事な情報を携帯電話会社に引き受けさせるのは、現状では問題がありそうですね。それから、デジタルデバイドの問題もあります。便利な機能は、特に導入されるときには複雑な操作を伴うものです。便利な機能を満喫する人、使いこなせない人、世代間のギャップが深刻になるかもしれません。
これからケータイはどのように進歩していくと
思いますか?

 「第4世代携帯」(4G)といわれるものも構想されているそうです。小型化やマルチ機能化がさらに進むのに加え、無線LANなどの機能を加えるといったアイディアらしいのですが、具体化はしていない状況です。当面は、現在いろいろ試されている機能の中で、必要なものと、いらないものの選別が進んでいくということです。例えば私たちは、たくさんの写真を撮ってはみたが、あまり残るものはなかったかな、なんて考え直してみたりすることが必要ですし、一方メーカーのほうは、インターフェースを使いやすくしたり、例えばパケット通信料をどこまで安くできるかなどという努力をしながら、採算がとれる分野をどうやって発展させて残していくかというプロセスが必要ですし、実際そうなっていくと思います。それから、電池をいかに長持ちさせるかということも大きな課題なんです。テレビを見る機能などが使えるようになるには、それが大きなカギとなります。最近面白いアイデアだと思ったのは、アメリカのメーカーのMP3プレーヤー付きのサングラスです。弦のところにあるダイヤルで選曲などを操作するんですが、そんな奇想天外なデザインがいろいろ出てくる一方で、最近登場したツーカーの「話すだけ」のシンプルケータイとユーザーが二極分化していくような気もします。

            おくむら のぶゆき
産業社会学部 奥村 信幸 助教授


専門分野/ジャーナリズム論、政治とメディア
 
◆主な著書・論文
  • 『日本外交、仲間はずれの構図―北朝鮮をめぐるシミュレーションが警告するもの』(公共政策研究会pranj)
  • 『外交と防衛−北朝鮮・ジレンマから危機へ、イラク問題における日本の立場』
    「2003年の日米関係−ライシャワーセンター年次報告書海図なき航海」
    ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究所ライシャワーセンター編(共著)
    国際大学研究所著 井上明子ほか訳 ジャパンタイムズ2003年9月

戻る



Copyright(c) Ritsumeikan univ. All rights reserved.