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政策科学部 小杉 隆信 助教授に聞く 炭酸ガス排出削減のために今できる小さな一歩 近年、エネルギー消費量の増加に伴う地球温暖化やヒートアイランド化の影響で猛暑が続いている。現在、温暖化・省エネ対策の一環として、日本でもサマータイムの導入が検討されている。すでに欧米など多くの国で実施されているサマータイムであるが、環境問題の対策だけでなく、余暇の拡大などの効果も期待されている。そこで、このサマータイムとはどのようなものなのか、地球環境問題を専門とされている政策科学部の小杉隆信助教授にお話をうかがった。 |
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サマータイムとはどういった制度ですか?
日の出が早く、日照時間が長い春から秋にかけて、時計の針を1時間ないしは2時間進め、日が明るく涼しい早朝の時間帯を有効的に使おうという制度です。夏が近づいている今でも、午前5時ぐらいから日が明るくなっていますが、多くの人はまだ活動する時間ではないですよね。この普段私たちが無駄にしている早朝の陽の光を有効に利用すれば、照明を減らし、冷房を抑えることができ、省エネにつなげることができるのです。 日本では今、サマータイムの導入が検討されています。一番の目的はなんと言っても「二酸化炭素の削減」です。京都議定書の排出目標を達成する一環で、サマータイムも二酸化炭素排出量抑制の一助となるものとして何年も前から注目されてきました。現在、2007年の導入に向けて法案整備が進められています。 |
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サマータイムの歴史についてお聞かせください。
第一次世界大戦のころ、燃料を節約するためにドイツで導入されたのが始まりです。それに追随するようにヨーロッパ各国で広がっていきました。ヨーロッパは緯度が高いので、夏は朝早くから明るくなりますが、そういった地理条件が導入を促進したのかもしれません。現在では、欧米を中心に約70カ国で導入されています。いわゆる先進国といった国々ではほとんどの国で導入されているので、むしろ日本が例外的と言えるかも知れません。すでにサマータイムが定着している国々では、家電製品にもサマータイム対策がされていて、時間の切り替わりが自動的にされるようになっていたりします。 日本でも、1948年にGHQ(連合国軍総司令部)の指示のもと導入されたことがあります。しかし当時は、労働関係の法律整備がなされていなく、昼間の時間が長くなった分、長時間労働を強いられたりする事態になってしまいました。世論調査でも過半数が反対し、4年後には廃止されるといった結果となりました。 最近では、滋賀県の県庁で実験的にサマータイムの導入をした例があります。短い期間だけ体験した人の中には、体調を壊した人もいたようですが、長い期間サマータイムを取り入れた人には概ね好評だったようです。 |
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サマータイム導入によって、どのような効果がありますか?
サマータイムの導入によって、省エネ効果があり、石油の使用量を年間50万キロリットル削減することができると予測されています。石油の使用量を抑えると当然、二酸化炭素の排出量が抑えられるわけです。サマータイムの導入で、日本では年間44万トンの二酸化炭素の排出が抑制できると試算されています。これは日本だけで年間何億トンも排出している二酸化炭素の量からすれば微々たるものですが、京都議定書で2008年から2012年までに温室効果ガス排出量を、平均値として年6%削減(1990年と比較して)とする目標があり、それに向けて様々な政策が考えられています。サマータイム単独で削減される効果は少ないですが、他の政策との相乗効果が期待できると思います。 またライフスタイルの変化として、夕方の明るい時間が長くなるわけですから、余暇の選択の幅も増えることが期待できるでしょう。これまで仕事の後に外が暗くなっていて使えなかった時間が、サマータイムの導入によって楽しむことができるかもしれません。 一方で、企業などでは時間切り替えに対応する新たな設備投資が必要となったり、適応できず体調を壊す人が増えたりすることも考えられるので、導入に懐疑的な意見もあります。今後日本で導入する際には、様々な混乱が起きることが予想されます。交通機関などは特に気をつけなければなりません。しかし当初の混乱も、今後サマータイムを定着させていくにはやむを得ないことで長期的な目で見ていく必要があるでしょう。 サマータイムの導入は、実質的な省エネ効果だけでなく、ライフスタイルを見直すよい契機として、家族との交流を深める時間を作ったり、また環境問題に対する意識を高めることにつながるのではないでしょうか。 |
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