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政策科学部 岸本建夫 教授 に聞く 〜日本のエネルギー政策の行方〜 「海底に眠る“燃える水”」といわれる「メタンハイドレート」。石油、天然ガスに代わるエネルギーとして期待され、日本政府は20年前から日本近海の調査を行ってきた。2006年2月に試掘に成功。実際にその存在が確認され、実用化への目処へ一歩を踏み出した。しかし量産までの道のりは険しい。エネルギー不足に悩む我が日本。現状と今後のエネルギー政策について岸本建夫政策科学部教授にお話を伺った。 |
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メタンハイドレートについて教えてください
メタンハイドレートは約百万年前に堆積物の中で生成されたメタンが地中や海底の高圧と低温で氷の結晶に取り込まれ固まったもので、一立方メートルのメタンハイドレートに約百七十立方メートルのメタンガスが凝縮されていている化石燃料です。日本政府は20年前から調査を行なってきましたが、これまで理論的にはあると言われてきたメタンハイドレートの層が実際に日本近海で見つかり、試掘に成功したことは一歩前進です。政府は平成28年度までに量産技術の確立を目指していますが発掘コストや地球温暖化への影響などまだまだ遠い道のりのようです。 | |||
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日本のエネルギー利用状況と問題点
現時点では石油、天然ガス、原子力が主流です。かつては石炭や水力が主流でしたが、今は補助的です。風力・地熱・太陽・バイオなども実用化されていますが発電量が低いのがネックとなっています。原子力は一基で100万キロワットの発電力がありますが、風力発電一基の出力はフル回転して1千キロワットというのが現状で、しかも風まかせで、電力の供給が不安定です。例えばトヨタ自動車の工場や新幹線の稼動など、日本経済を支えていくには規模が小さすぎます。 日本が頼っている石油、天然ガス。これらは化石燃料なのでゆくゆくは枯渇しますし、なにより地球温暖化の大きな原因です。また近年原子力が主力になりつつあります。今や日本の発電量の4割は原子力でまかなっています。原子力はCO2が出ないという利点がありますが、決定的な問題は廃棄物が処理できないことです。有毒な放射性の廃棄物を最終的に無害にすることができません。そのまま地中に保管しているという状況です。地震の発生、テロ、事故など政府は徹底した安全管理を行なっているとはいえ、リスクが伴います。しかし今はこれらのエネルギーに依存するしかありません。 | |||
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エネルギー開発の未来は?
収縮エネルギーを利用するもので理論上は成り立つことが証明されています。現在、共同研究施設の誘致合戦を日本や各国が繰り広げていますが、膨大な研究費がかかることからまだ本格的に研究には着手されていません。最も有力なのは燃料電池です。ホンダ自動車やトヨタ自動車などが技術的には実用化に成功し、また自家発電にも利用可能です。一番の課題はコストがかかりすぎることで量産段階ではありませんが、燃料元が水素で二酸化炭素が出ないことから環境にもやさしいエネルギーとして注目され、非常に期待されています。しかし商業化のメドがついたわけではありません。 | |||
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日本のエネルギーの今後の展望について ここまでの話で、日本のエネルギー政策の未来は前途多難であることがお分かりになると思います。化石燃料や原子力に量的、コスト的に代替できるエネルギーは今のところありません。今後のエネルギー政策で重要なのは国家的な研究投資による新エネルギーの開発、そして「石油を中心としたエネルギーをめぐる国際情勢の把握」と「有効な外交政策でエネルギーリスクを回避する」ことでしょう。日本になぜ安定して石油が供給されているかというと、太平洋とインド洋の制海権を事実上握っているアメリカと「日米安全保障条約」を結んでおり、その同盟関係の下でアメリカの空・海軍力によって石油がある中東から石油を運ぶ日本のタンカーの安全が守られているからです。中東エリアは世界各国が注目し、昔から不安定な地域です。アメリカの中東政策は覇権的で問題がありますが、アメリカの関与で日本にとって死活問題である石油が確保されています。中国は近年の急速な経済成長により石油・天然ガスの確保に必死です。太平洋、インド洋ルートを確保するためにアメリカを意識した海軍力の増強を行なっています。如何に情勢を見極めて臨機応変に諸外国へ対応を取っていくか。自国の資源として自由に活用できる可能性がある「メタンハイドレート」が注目される背景にはこの様な複雑な事情が絡み合っているのです。
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