輝いています、ときの人 #101 上田紗弥香さん(政策科学部3回生)書道部 部長 日中学生文化交流に参加
国を越え、分かり合えた「書」のこころ
3月10日(月)~16日(日)、中国政府が日本の学生を招き「日中学生文化交流」が開催された。
立命館大学からは、応援団チアリーダー部・応援団吹奏楽部・舞style・囲碁部・書道部など多数の学生が参加。
今回はその中から、書道部部長の上田紗弥香さん(政策科学部3回生)にスポットを当て、中国学生との書道交流の様子や
胡錦濤・中華人民共和国国家主席(以下国家主席)と交わした握手のエピソードについてお話を伺った。
(2008年4月25日掲載)
Q

中国での日中学生文化交流や日中青少年友好交流年開幕式に参加されたきっかけを教えてください。また現地での交流内容や様子はどのようなものだったのですか?

上田

学生オフィスで中国政府が立命館大学の学生を招待するという話を聞き、「書道部も日中学生文化交流に参加してみないか?」と声をかけていただいたのが始まりでした。メンバーにその話を伝えたところ、是非中国の学生と書道交流してみたいという部員9名が中国に行くことに決まりました。

 

最初に交流した上海交通大学では、双方の学生が自由に文字を書き合いました。どのような書き方をするのかなど、会話を交わしながらの交流でした。しかし、初めての経験だったのでどうしても緊張してしまい、ぎこちなさが残るまま交流が終わってしまいました。次に訪れた北京航空航天大学では、「日中世代友好」という文字を私たちと中国の学生がそれぞれ書きました。この作品は、交流後に開かれた文化交流フェスティバルのホール会場の入口に展示もされ、最後に作品を交換し合いました。北京航空航天大学では上海交通大学のときより緊張もほぐれ、書道のことばかりでなく日本の文化の話でも盛り上がり、積極的に交流が出来ました。ここでの交流時に「開幕式で是非、日本の書道を披露してくれないか」と依頼を受けました。日中青少年友好交流年開幕式とは、日中平和友好条約締結から30年を迎える2008年を日中青少年交流年とし、中国側の招待で日本青少年代表団約1000名が、中国の青少年約1000名と共に交流の幕開けを祝った式典のことなんです。元々、わたしたちはこの開幕式に観客として参加する予定だったので驚きましたが、貴重な経験になると思い、引き受けることにしました。

 

 

開幕式の様子はテレビでも放映

 

 

リハーサルなどを終え、開幕式当日には中国の学生と一緒に今年開催される北京五輪のテーマ「同一介世界・同一介梦想(ひとつの世界・ひとつの夢)」を書き上げました。その場にこられた胡錦濤・国家主席から歓迎と励ましの言葉を頂き、握手もしてもらいました。その瞬間に「自分は今、すごい経験をしている」と感じました。実は、胡錦濤・国家主席が来られることは聞かされておらず、ただ「中国の要人」が来られるとだけ聞いていたので本当に驚きましたが、自分にとって忘れられない経験になりました。

Q

日中学生文化交流に参加するにあたって、事前に何か特別な練習や準備はされましたか?

上田

日本の書道を中国の人達に知ってもらいたいという想いから、事前に縦2m・横5mのパネルに紙を貼り音楽に合わせて書くという書道パフォーマンスを披露することは決めていました。「せっかくだから、中国にちなんだ言葉を書こう」ということになって、2通りの書道パフォーマンスを考え準備を進めました。1つは、『蘭亭序』という中国の古典書物から引用した「恵風和暢」という一文をL’Arc~en~Cielの曲に合わせて書くという、春をイメージしたパフォーマンスです。もう一つは、「互いに手を取り合って今後も交流を続け、友好な関係を育んでいこう」という日中関係への想いを込めた言葉を中国語で女子十二楽坊の曲に合わせながら書き上げるパフォーマンスです。この2つの書道パフォーマンスは、最後に訪れた北京大学での文化交流フェスティバルと日中青少年友好交流年開幕式の書道交流会で披露しました。中国の人達にとって、このような書道パフォーマンスは珍しかったようでとても喜ばれ、大きな拍手を頂きました。私たちの書道が中国の人達に伝わった気がして、嬉しかったです。

 

 

好評だった書道パフォーマンス

 

 
Q

交流を通じてどのようなことを感じましたか? また、今回の経験を踏まえた今後の目標を教えてください。

上田

交流を通じて一番強く感じたことは日本と中国の書道の違いです。中国の学生の使っている墨が日本のようにサラサラしたものでなく、絵の具のようなものだったことにびっくりしました。また、日本では作品を書き上げる時、紙の下部分が上部分よりも多く残っている方が美しく見えるとされているのですが、中国はその反対で上部分が多く残っている方が美しいんだと学生が話してくれました。同じ書道なのに国が違うと道具や書き方、そして作品の構図や見せ方まで変わってくることを初めて知って、新鮮な気持ちになりました。ただ、「書道が好き、もっと上手くなりたい」という想いはお互い共通して持っている心だと感じました。

 

また強く印象に残っているのは、中国の学生はとても熱心に練習しているということです。書道に対する真面目な姿勢は私自身、見習うところが多くあり、日々の練習の大事さを改めて認識しました。実際に現地に行ったことで、その国の習慣に触れ、日本では知りえない中国の文化を肌で実感することが出来ました。限られた時間の中での交流でしたが、「書道を通じて分かり合えた!」そんな気持ちでいっぱいです。

 

今回の日中学生文化交流の経験を今後にどう活かせれるかはまだ分かりませんが、日々練習しながらこれからも書道と向き合う時間を大切にしたいです。そして、いつかまた中国の学生と書道について語り合ったり、お互い作品を一緒につくりあげるなど交流の機会が持てればと思います。

取材・文/東田悠希(政策科学部2回生)
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