輝いています、ときの人 #105 二階英生さん(政策科学部3回生)、伊藤奏美さん(政策科学部3回生)木屋町の英語版ガイドブックを制作
木屋町から発信するKYOTO コトバの壁を超える学生のチャレンジ
2007年から政策科学部で開始した地域貢献型英語教育プログラム、「Decoding Kyoto」。
2008年3月にはこのプログラムの一環として、同学部の13名の学生により
木屋町の英語版ガイドブック「KIYAMACHI WALKER」が発行された。
これは京都の中心部である木屋町の飲食店や歴史を外国人旅行者に向けて英語で紹介したガイドブックで、
ホームページでも公開されている。
今回のインタビューではこのガイドブックが完成に至るまでの経緯やエピソードを、
代表者である二階英生さん(政策科学部3回生)と伊藤奏美さん(政策科学部3回生)に伺った。
(2008年5月30日掲載)
Q

まず、「Decoding Kyoto」に参加したきっかけと、このプログラムがどういったものなのかを教えてください。

二階

私がこのプログラムに参加した理由は、英語を使って外国の方と交流を持ちたいという思いがあったからです。「Decoding Kyoto」とは、2007年から始まったプログラムで、国際都市・文化都市である京都における言語の壁を取り払い、「言語のバリアフリー化」の実現を目的としています。このプログラムの名前にもなっている‘Decode'とは、暗号を解読する・理解するという意味があるんです。外国からいらした方々にとっては、ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字などの多様な文字が混ざり合う日本語は、暗号のように感じると思います。そんな日本語を解読して伝えることで、日本にもっと親しみを持ってもらいたいという思いがプロジェクトの名前に込められています。このプログラムはまさに、自分がやりたかった外国の方との交流ができると思い、参加することに決めました。

伊藤

私もこのプログラムの「言語のバリアフリー化」という点や、新しいプログラムだという点に魅力を感じて参加しました。また、もともと英語がとても好きだったこと、以前から英語を使って思いをかたちにしてみたいと考えていたことも参加を後押しした理由ですね。

 
Q

では、「KIYAMACHI WALKER」が完成に至るまでの経緯や苦労したことなどを聞かせてください。

二階

まず、私たちは外国の方が不便に感じていることを調査するために、留学生や外国の方を対象に学内や街頭でインタビューを行いました。その結果、有名な観光地には英語版ガイドが用意してあるにもかかわらず、英語でのガイドがほとんどない観光地もあることがわかりました。

 

そんな中、私たちは政策科学研究科がまちづくりの研究拠点として展開する「木屋町研究拠点」があり、政策科学部ともゆかりの深い木屋町の英語版ガイドブックを作成することに決めました。なぜなら、木屋町は京都で最も古い歓楽街と言われるほど歴史の深い場所で、観光資源もたくさんありますが街頭インタビューでは外国人旅行客から木屋町があまり知られていないということを知ったからです。

 

掲載する内容を決める際にも外国の方の生の声を参考にし、「店に英語を話せる人はいるか」、「英語版のメニューは置いてあるか」、「ベジタリアン用のメニューはあるか」などの情報を載せました。写真を多用し、店の看板から目的の店を探せるようにするなどの工夫も盛り込みました。

 

また、ガイドブックには幕末の歴史にも載せてあるのですが、これは今回のプロジェクトに協力して下さった木屋町共栄会の塩山大介会長に、「歴史について載せてみたらどうか?」とアドバイスをいただいたことがきっかけでした。この幕末の歴史の部分はメンバーが様々な文献を読んで研究し、それを自分たちで英訳しました。その中で「幕藩体制」など、英語化しにくい言葉がたくさんあり、伝わりやすい表現にするのにとても苦労しましたが、幕末の木屋町の雰囲気を少しでも伝えることができたかな、と思っています。

 

 

高瀬川桜祭りにて

 

伊藤

取材は主に夏休みの間に行いました。全部で36店舗の飲食店に取材を行ったのですが、木屋町共栄会の協力を得て一軒ずつ電話でアポをとり2人1組で取材をしました。メンバー全員、取材をした経験が無かったので、予めマニュアルを作るなど準備をしました。ほとんどのお店は好意的で、快く取材を受けてくださったのですが、中には「外国の方に来ていただいても対応できない」というお店や、一見さんお断りなどの京都独自の風習を大事にしていらっしゃるお店もありました。これも京都の古き良き伝統の一部とはいえ、文化の違いから外国の方が拒まれてしまう一面があることもわかりました。

 

全ての取材を終え、ガイドブックの制作を進めていた11月末、政策科学部で1年間の研究成果を発表する研究発表大会があり、その中の「研究入門フォーラム選考会」に私たちも出場しました。ですがそこではあまり良い結果がだせず、自分たちの研究は独りよがりのものだったのかと落ち込んだ時期もありました。しかし同じ時期に自主的に出場した大学コンソーシアム京都主催の政策系大学・大学院研究交流大会「京都から発信する都市政策」というコンペティションでは、パネル発表部門での最高賞にあたる大学コンソーシアム京都理事長賞を受賞しました。この受賞によって、自分たちがこれまでやってきた研究は間違っていなかったのだという自信につながり、研究に打ち込むことができました。その後も1月、2月と研究を続け、3月にガイドブックが無事完成したときは本当に嬉しかったですね。

 
Q

少人数で制作したにも関らず、大きな成果や評価を得ることができたのですね。では最後にこのプログラムを通してお二人は自分自身のどこが成長したと思われますか? また、ガイドブックの反応はどうですか?

二階

私はこの研究を通じて、英語のコミュニケーション能力の向上を実感しました。やはりフィールドワークを通じて実践したことは、授業で学ぶよりも身に付いたと感じています。4月6日(日)に行われた高瀬川桜祭りでこのガイドブックを配布したのですが、多くの外国の方々に手をとって読んでいただき、喜んでもらえたのでとてもやりがいを感じました。外国の方だけではなく、日本人の方からもこのガイドブックが欲しいといって貰えたのが印象的でした。ホテルの従業員の方が「長期滞在の外国のお客様にぜひ渡したい」と言ってくださったり、五条警察署の方が「観光案内用に置いておきたい」と言ってくださったりと、自分たちのガイドブックが木屋町を飛び越え、予想以上にさまざまなところで役立っているのが嬉しかったです。

伊藤

私も英語力が伸びたというのが一番の成長点だと思います。また、お店のしきたりなども学ぶことができたことから、これまでは気に留めていなかったことにも関心を持つようになるなど良い社会勉強ができました。様々なガイドブックやフリーペーパーなどにも興味を持ち、見かけると、手にとる癖もつきましたね。その冊子を見て「こんな見せ方や切り口があったのか!」と、ついつい思ってしまいます。

 

今後は自主ゼミとしてこの研究や活動を続けていく予定です。2008年前期はさらなる情報収集やアンケート結果に基づいてホームページの修正を行い、内容を深めていきたいです。後期にはホームページを更新し、さらに新しい情報を載せるつもりです。また、これはあくまで希望なのですが、新しい冊子を作ることも考えています。この体験を通じて得た経験やノウハウを、これから「Decoding Kyoto」に参加する学生にも伝えていきたいです。

 

Link 「KIYAMACHI WALKER」ホームページ
取材・文/樫村英理子(国際関係学部2回生)
RS Webアンケート実施中