輝いています、ときの人 #120 PNCI屋上農業事業部 代表 森崎巨樹さん(政策科学部3回生)、広報担当 立松裕規さん(政策科学部3回生)
農業を活性化させたい そのための努力がwantをcanに変える
屋上で京野菜を作る学生がいる。
ヒートアイランド現象に対して有効な手段である屋上緑化。
そして近年叫ばれている日本の農業問題・食の安全。
この3つに屋上農業という形で新しい道を示した彼ら。
PNCI屋上農業部の森崎巨樹さんと立松裕規さん(共に政策科学部3回生)に話を聞いた。
(2008年11月7日掲載)
 
Q

お二人が屋上農業を考えられるまでに、どのような道のりがあったのですか?

森崎

僕たちはもともとPeer Nest (PN)という学生団体に所属していました。その中で一部のメンバーが学生ベンチャービジネスコンテストに出ようと集まったのが、このPeer Nest College Incubator(PNCI)屋上農業事業部の始まりです。僕の出身地である福岡県久留米市城島町は農業が盛んな地域で、以前から農業について関心を持っていました。また、世間では環境問題が多く取りあげられていた時期でもあり、これを関連づけた何かが出来ないかと考えていたんです。その時このベンチャービジネスコンテストのことを知り、仲間を集めて応募をすることを決めました。そのときは屋上緑化カフェとして企画を詰めていき、ベンチャービジネスコンテストの決勝まで進むことができました。

立松

僕たちが考えている企画を実行に移すには資金が必要でした。そこで起業家支援奨励金に応募しようと考えたんです。ベンチャービジネスコンテストの一次予選を通過すると、起業家支援奨励金の応募資格が与えられ、僕たちは応募資格を得ることができました。しかし、実際に企画を実行しようと思ったとき、今まで考えてきた企画では何かが足りないと感じ始めたんです。カフェだけでは足りない。では自分たちがやりたいことは何だったのか、これをもう一度みんなで考えた結果、出てきたのが屋上農業でした。屋上緑化自体が環境問題に、そして屋上で農業をすることで、低迷している日本の農業の活性化につながる企画だと考え、プレゼンテーションをし、起業家支援奨励金をいただくことができました。

 

 

 

Q

起業家支援奨励金を得てから、この屋上農業を実行に移され、どのような苦労や喜びがあったのでしょうか?

森崎

まず、この事業を始めてからすぐに、朱雀キャンパスの7階にも店舗がある京野菜レストラン「Tawawa」から野菜を受注することが決まりました。その時はまだ野菜を作る場所が確保できていなかったため、嬉しい反面、早く実行に移さなければ、という焦りもありました。それからは、とにかく場所探しのため、毎日が営業の日々。そんな中、京都市生涯学習総合センター・京都アスニーから場所を提供していただくことが決まったときは、農業をする場所が見つかった嬉しさと、これから本格的な農業が出来るという期待で胸がいっぱいになりました。それからは人手を集めて本格的にプランターで野菜作りを開始。初めは僕の経験や、みんなで調べながらの手探りで始めた農業でした。農業自体が重労働で、さらに、農業をしたことがないメンバーがほとんどで本当に大変でしたね。その分、野菜を収穫した時の達成感は大きいものでした。そうした試行錯誤を経て、農業を全く知らなかったメンバーが農業の方法を覚えていってくれたことも喜びの一つです。

立松

そうして農業に専念していた頃、下京中学校の先生から総合学習の時間に授業をやってみないか、という話が舞い込んできました。初めはとても驚いて、何をしようか悩みましたが、僕たちの目標の一つであった「京野菜を広める」絶好のチャンスだと思い、生徒のみなさんと一緒に水菜を作ることにしたんです。それでも、「ただ知ってもらう」、「単に教えにいく」のでは意味がないと思い、生徒それぞれが「気づき、学ぶ」ことを大切にしながら授業を進めました。そうした授業の姿勢を生徒たちも喜んでくれ、僕たちを受け入れてくれました。また、実際に野菜作りをすることで、普段はおとなしい生徒が体で感情を表現するようになって、私たちもあらためて農業の持つ力について学ぶことができました。

 
Q

屋上農業が社会貢献にもつながったということですね。では、最後にこれからの活動の目標と在学生へのメッセージをお願いします。

森崎

これからはTawawaとのコラボレーションが本格的に始まりますし、生産も拡大していきたいと思います。これからもっともっと私たちの屋上農業を広めていきたいですね。この活動を広げていくことによって、多くの若い人たちに「かっこいい農業」というものを知ってもらいたいです。

 

僕はこの活動で様々な人々とのつながりや、大切な仲間を得ることができました。でもそれは特別なことではなく、誰もが行動すればできることです。努力をすれば必ずしもすべてが叶うわけではありませんが、可能性は見えてくるはずです。みなさんも可能性を信じて、行動して欲しいと思います。

立松

僕は今後、屋上農業をビジネスコンテンツとして確立させたいと思っています。日本独自の農業ブランドとして、世界にも発信する。そんな日本の農業の先駆けとして、この手法を拡大していきたいと思います。

 

チャンスはどこにでもあります。ですが、そのチャンスは自分から動かなければ見えません。答えを求めすぎるよりも、まずは行動してみること。WantをCanに変えるのは自分の行動力です。まずは一歩を踏み出して欲しいと思います。

 

 

取材・文/川口菜摘(経済学部3回生)
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