輝いています、ときの人 #125 射撃部 世界大学射撃選手権 日本代表 木下泰治さん(情報理工学部4回生)
研ぎ澄まされた集中力で、世界の壁に挑む
10月8日(水)~11日(土)、中国・北京市において世界大学射撃選手権が開催された。
この大会には世界各国の選手が参加し、熱い戦いが繰り広げられた。
今回のときの人は、この大会に日本代表として出場された射撃部の木下泰治さん(情報理工学部4回生)。
木下さんは日本代表の選考基準となった日本学生選抜ライフル選手権大会で、優秀な成績を修め、この切符を手にした。
このインタビューでは世界大会での様子や、大会に向けての練習の日々、射撃の楽しさ・魅力などについてお話を伺った。
(2008年12月12日掲載)
Q

世界大学射撃選手権、お疲れ様でした。この大会の試合内容についてお話を聞かせてください。

木下

世界大学射撃選手権は、28カ国の各国トップレベルの現役大学生が集まり競い合う大会です。男子の大会種目は、50m3姿勢120発競技と50m伏射60発競技、10m立射60発競技の3種目で、今回は日本から男女合わせて8名が出場しました。この大会の代表選考がかかった日本学生選抜ライフル選手権大会の時は、あまり世界大会のことを意識せず、今出せる力を出し切ろうと、落ち着いた気持ちで臨めた結果、代表になることができたのだと思います。世界大会に向けて苦手な伏射という床に寝そべった状態で撃つ姿勢で、いかに同じ姿勢を保ち続け、安定して撃てるかが最大の課題でした。大会までに2回の強化合宿を通して、納得いくまで自分の弱点を中心に練習、克服していきました。

 

世界大会初日は、緊張から思うように引き金が引けなかったり、心拍数が上がってコントロールを図るのに苦労した場面もありましたが、2日目以降は落ち着いて普段通りの力が出せたのではないかと思います。最終的に、1種目のみ入賞を果たすことは出来ましたが、実力は周りの国の方がはるかに高く、世界の壁を実感させられた試合でもありました。他国の選手のプレーなどから多くのことを学び、他国のレベルに近づくべく、闘志と練習へのやる気がまた、ふつふつと沸いています。今後は筋力トレ-ニングにも力を入れ、海外選手との体格面の差をカバーしたいですね。

 

また、試合以外の時間では、他国の選手たちと交流の機会もあり、特に韓国やスイスチームと親交を深めることができました。「もう少し英語を勉強しておけば、もっと交流できたのに・・・」とも思いましたが、ジェスチャーを交えコミュニケーションをとり、互いに打ち解け合うことができました。今日着ているユニフォームもスイスチームと交換した思い出のものです。高校時代に出場した日韓交流戦で知り合った、良きライバルとの再会もあり、また再び世界の舞台で競い合う約束を交わし合いました。

 

 

 

Q

木下さんは射撃をどういった経緯で始められたのでしょうか?また日ごろはどんな練習をされているのですか?

木下

中学では陸上ホッケーをしていましたが、あまり良い成績が出せず、高校では個人競技をやってみようと思っていました。高校時代の担任の先生が射撃部の顧問であったことと、このスポーツの珍しさから入部しました。最初の半年はただ決められた練習をこなしていくだけでしたが、1年も終わりに近づいた頃、各校の強化選手として選ばれ、次第に射撃にのめり込むようになりました。

 

現在、射撃部の練習は柊野総合グラウンドで行っており、平日のうちに衣笠は9時間、BKCは6時間の個人練習をすることを定めています。土曜日には全体練習を朝9時~夕方6時まで行い、部員同士でフォ-ムを確認、アドバイスをし合っています。私が1回生のときは、20人に及ばない小規模な団体でしたが、今はメンバーも40人近くになっています。ここ2、3年で大学から射撃を始める人が増えていて、現メンバーの約半数も大学から射撃を始めた人々です。練習で特に意識しているのは、筋肉感覚、引き金を引く動作=(トリガリング)、撃った後の余韻を残す=(フォロースルー)の3点です。射撃は、撃つ際の安定した姿勢づくりがとても重要なので、外から見て気になる点においては、監督や周りのメンバーが注意してくれます。しかし、人によって骨格に違いがあるため、誰かをベースにしてもみんなが同じことをできるわけではありません。そのため、内側の微妙な調整は自分の感覚だけが頼りで、どれだけ筋肉感覚を保ちながら練習できるかにかかっています。

 

また、技術面だけではなく、極度の緊張と集中を課せられる射撃においては、最後まであきらめない根性と集中力、イメージ力も必要です。大切な試合の前には、集中を高めるため、目を閉じて試合の流れを意識し、精神を落ち着かせています。技術は練習を重ねていけば、身についていくと感じますが、精神面をどう鍛えていくかという点が最大の課題ですね。また本物の銃を使うスポーツなので、取り扱いには猟銃・空気銃許可証、また病院から出してもらったメンタル面の診断書の提出等が必要になります。銃は、試合や練習以外に持ち運べないようになっていますが、持ち運びの際には銃と弾は分け、目立たないようにするなど厳重な取り扱いをしています。

Q

射撃は特に精神面が大切なスポーツなんですね。木下さんの今後の目標を教えてください。

木下

射撃は日本でまだ馴染みが薄く、他のスポーツと比べ、比較的全国規模の大会への門が広く設けられていると感じます。試合数も多く、各地で試合が開催されるため、努力次第でレベルを向上させ、様々な人たちと交流を持つことが可能です。また、個人の成績が点数として表示されるため、自分の記録にどれだけ挑めるか挑戦しながら、自分の成長、練習の成果を実感しやすいことが魅力です。

 

現在は卒業研究もあり、思ったように練習の時間が取れませんが、その分、1発1発の質を重視して、ロンドンオリンピック出場も視野に入れ、練習に取り組んでいます。いつも頭のどこかに射撃のことがあり、自分にとって射撃は生涯続けていきたいスポーツで、もはや人生に欠かせないものですね。

 
取材・文/長谷友香(経営学部2回生)
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