それはチームメイト、そしてファンのみなさんがいたからだと思います。僕が今季絶望だと分かったすぐ後の関西大学との試合(関大戦)では、チーム全員がフィールドに立てない僕の気持ちも一緒に背負って戦ってくれました。また、関大戦で僕がもう試合に出れないことを知ったファンの方々が、次の京都戦から「浅尾を日本一の主将に!」というスローガンを立てて応援してくれました。こうした周りの人の気持ちがあったからこそ、フィールドの外からキャプテンとして、なによりチームの一員として戦う決意をすることが出来たのだと思います。
ようやく迎えた宿敵、関西学院大学(関学)との試合。メンバーも関学に勝つことを1つの目標として練習してきただけあり、今までの全ての想いが入った良いゲームでした。しかし、関学に勝利し、一度完全燃焼してしまった部分もあったため、次の試合に移るための気持ちが少し緩み、改めて士気を高めるのに苦労しました。甲子園ボウルに向け「俺たちはここで終わるチームじゃないだろう!」とメンバーを奮い立たせ、法政大学に勝利し、学生日本一になることができました。
こうした戦いを終え、1月3日、社会人選手との試合で本当の日本一を決めるライスボウルを迎えることができました。対戦することが決まったパナソニック電工インパルスは、日本代表選手やパンサーズのOBも多く在籍している強豪チーム。ディフェンスもオフェンスも学生とは比べ物にならないほどの実力をもったチームでした。そんな強豪チームと対戦するにあたり、チームやメンバーが「ここまできたんだから」というあきらめの気持ちを持つことを一番恐れました。士気を高めるためにも「相手は強いが、どこかに隙もあるはず!試合はやってみないと分からない!気持ちの面だけでは絶対に負けないようにしよう!」と何度も何度もみんなに言い続けました。今まで何度もチームで話し合ったので、みんながついてきてくれると思っていましたが、全員の気持ちを一つにするためにも、4回生一人ひとりの顔を思い浮かべながらメッセージを書き、試合前日に渡しました。
そうして臨んだライスボウル。約34000人の観客が見守る中、今年のパンサーズの強みであるディフェンス力を生かし、パナソニック電工と互角に戦うことができました。最後のインパルスのパスは危なかったですが、必ずチームメイトが取ってくれると信じていました。そして日本一になれた瞬間、嬉しい気持ちが強すぎて、不思議なことに涙も流れませんでした。僕たちが実力で勝るインパルスに勝つことができたのは、一人ひとりが強い気持ちを持っていたからこそです。メンバーや支えてくれた方々が「浅尾を日本一の主将に!」と言って戦い、応援してくれたことへの感謝の気持ちでいっぱいですね。この勝利は、選手やトレーナー・裏方として支えてくれたメンバーも含め、全員で掴んだものだと思っています。
私自身、今回の経験を通じ、「人の気持ちを動かす難しさ」を感じました。ただ、みんなに対してぼくが出来る事は、「良いものは良い、悪いものは悪い」と、嘘いつわりなく自分の気持ちを伝える事だと思い、ずっと実行してきました。今回、キャプテンとしてチームの気持を一つにするために自分が1年間やってきた事は間違っていなかったと今改めて感じています。 |