大学入学後、1回生まではリード(※1)をやっていました。初めて大会に出た時も、国体で3位を取ったのも、種目はリードでした。
ただ、高校から始めた自分は、もっと早く始めている他の選手と比べて経験が少なく、高校を卒業してから、なかなか思うように結果が出ず悩んでいました。そんな中、ボルダリングをやる機会があり、リードよりも楽しいと感じました。
この競技は自分に合っていたようで、2006年度の第2回ボルダリングジャパンカップでは強豪選手やプロ選手も出場していた中で優勝することができました。
その後も国内の大会に挑戦し、修士課程前期生の時にスイスで行われたW杯で初めて世界に挑みました。会場では外国人選手の強いオーラに圧倒されました。国内の大会とは全く違う雰囲気、そして想像を超えた体格差を前に萎縮してしまい、実力を出し切ることができませんでした。これが世界の壁なんだと強く感じました。
その悔しさから、外国人選手に負けない体を作るため、まず世界大会後はウェイトトレーニングに重点を置き、基礎的な部分を強化していきました。
そして、徐々に負荷を上げ、クライミングに特化したトレーニングに移行し、最終的にはかなり質の高い練習を行う事で、世界で通ずる体や筋肉をつくっていきました。
この競技をやっていく上で、どうしても避けられないのが、指や腕・肩の故障です。ただ練習を3日間も休んでしまうと、すぐに他の筋肉が衰えてくるので、故障した部分が治ってもすぐに練習に取り組めるように、他の場所の筋肉を鍛えることは怠らないようにしています。
今年4月、埼玉県加須市で行われた国内初のW杯はリベンジでした。前回、不十分だった減量にも成功し、心の準備もしっかりして挑みました。予選、準決勝、決勝が2日間かけて行われました。プレッシャーと緊張に押しつぶされそうになりましたが、約40名の参加者の中から準決勝に残り、更には6名の決勝進出者に選ばれた時は、とても嬉しかったですね。体格差が歴然と力の差に出るボルダー男子競技は、日本人が決勝に進むこと自体が珍しいことなんです。
決勝を迎えた日もトレーニングの成果が出たのか、それほど力の差を感じませんでした。みんな強いので「楽しんで、思い切り競技に取り組もう」と思いました。結果2位になれて、よかったと思う反面、驚きもありましたね。昨年、あれだけ感じた純粋な力の差も、トレーニングの成果が出たのか、それほど感じませんでした。とにかく勝ちたいという一貫した気持ちを持っていたからこそ厳しい練習に耐えられ結果に繋がったのだと思います。
※1「リード」とは・・2人1組になり、ロープを使って壁に設置してある金具に自分でロープをセットしながら登るクライミングです。 |