輝いています、ときの人 #159 日米学生会議に出席 二橋千尋(にはし・ちひろ)さん(法学部4回生)
紛争を目の前にして感じた「人と人とのつながりの大切さ」
2008年の夏、「国際社会で活躍する人材養成特別プログラム」でパレスチナ、イスラエルに約3週間滞在した二橋さんは、
2009年3月末から9月末にかけて、再びイスラエルに渡り、現地の研修機関でインターンシップに参加した。
今回は、二橋さんがイスラエルに興味を持ったきっかけや、現地での活動内容についてお話を伺った。
(2010年1月8日掲載)
Q

これまでに2度もイスラエルを訪問されたということですが、そのきっかけと経緯について教えてください。

二橋

1度目は受講していた岡本行夫客員教授による「国際社会で活躍する人材養成プログラム」のスタディーツアーで訪問しました。この時は、約3週間の滞在でしたが、帰国後、「パレスチナ、イスラエル問題」について「もっと知りたい」という思いが強くなりました。

 

もともとユダヤ人に興味があったのですが、この経験で身近に感じ、さらに「追求してみたい」という思いが強くなりました。そんな時、イスラエル・ガリリカレッジ学長Joseph Shevel氏が来日。イスラエルの問題について立命館大学で講演しました。そのお話の中で現地の研修機関でのインターンシッププログラムの存在を知り、応募してみようと思いました。

 

2度目の訪問を一度は決意したものの、2008年末にガザの空爆があったことで両親の猛反対にあい、「家族に心配をかけてまで本当に行きたいのだろうか」と悩みました。ですが、「もう一度行きたい!ここで行かなければ後悔する!」という強い気持ちから、必死に両親を説得し、渡航することができました。

 

 

 

Q

現地では、どのような活動をされていたのですか?また現地で感じたことを教えて下さい。

二橋

インターンシップの活動は、主にデスクワークが中心でした。日本人向けの中東政治学習プログラムの企画、広報、運営に携わっていました。初めは現地のスタッフとの仕事のスタイルの相違や言葉の壁に戸惑うことも多く、職場との往復以外は、部屋に引きこもっていることも多かったです。休日も外に出ずに悩んでいた事もありましたが、3ヶ月経った頃に現地のスタッフの国民性やスタイルの違いを理解して受け入れられるようになりました。それから徐々に職場の仲間ともうまくコミュニケーションが取れるようになり、仕事にも前向きに取り組むようになりました。

 

異国で活動するにあたって、日本の常識のみで考えるのではなく、その国の文化、スタイルを理解しようと努め、"違い"を受け入れ尊重することは、とても大切なことだと学びました。これをきっかけに、職場の同僚だけでなくイスラエルに在住、または留学している日本人の方や、日本に興味を持っている現地の方と交流する機会を積極的に持とうとするようになりました。この頃から、友人の輪がどんどん広がり、滞在生活が一気に有意義なものになっていきました。この時に改めて自ら積極的に行動することの大切さを実感しましたね。

 

また、6ヶ月の滞在の中で、パレスチナ人、ユダヤ人間の紛争を目の当たりにし、最も強く感じたことは、「対話の重要さ」です。現地では、数年前にあったような緊張状態はある程度緩和され、日本とほぼ変わらない日常生活が営まれています(パレスチナ人自治区の状況は別)が、両者の溝は深いままです。そんな中で、私の友人の一人がパレスチナ人と一緒に仕事をしたときの話しがとても印象的でした。彼女は、それまで一度もパレスチナ人と直接話しをしたことが無かったのですが、仕事を通して話をするうちに、それまでパレスチナ人に対して抱いていた負のイメージが変わったといいます。生活が安定するにつれて、紛争の事実から目を背けてしまう動きも見られ、両者の距離は拡大するばかりといった状況下で、和平への第一歩としてやはり重要なのは直接会って話をしてみること、「対話」ではないかと感じました。

Q

イスラエルでは本当に多くの経験をされたのですね。では、二橋さんの今後の目標について教えてください。

二橋

今回の経験を通して最も強く感じた事は、「異文化理解の大切さ」と「対話の重要さ」です。将来は、日本と諸外国とのよりよい関係構築のため、相互理解を促進できる仕事がしたいと思っています。

取材・文/大屋祐子(法学部3回生)
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