輝いています、ときの人 #160 珠算部  主将 そろばんクリスマスカップでチーム優勝 杉山祥一朗(すぎやま・しょういちろう)さん(政策科学部2回生)
和菓子で伝える「感謝」のこころ  京菓子「晴れ姿」にのせる、新成人の「ありがとう」
成人式に「感謝」を伝える和菓子を。今回紹介する杉山祥一朗さん(政策科学部2回生)ら学生7名は、
政策科学部フォーラム「Small Business Support Center」プロジェクトに所属。
京都の老舗京菓子「長久堂」と共同で、成人式に合わせた若者向けの商品を企画した。
「温故知新」という言葉があるが、和菓子の伝統ある文化を残しつつ、広く普及させるため、
大学での学びがどのように生かされたのか。
また、企画から完成までの道のり、今後の抱負について伺った。
(2010年1月22日掲載)
Q

まず、活動のきっかけを教えて下さい。

杉山

もともと京都の文化に興味があったので、京都の和菓子をプロモーションし、顧客層を広げるというテーマのゼミを選択しました。
私たちはまず、メンバー全員で和菓子について調べ、和菓子職人へのヒアリング調査や市場調査を実施しました。そしてその中で「オーダーメイドシステム」に注目しました。これは、従来からあったものですが、和菓子に関する知識がないと活用しにくいものでした。そこで、和菓子を知らない方や若い年齢層でも注文できるようなシステムを作成しました。

 

このシステムは主に、見本帳、データベース、オーダーシート、オーダー診断表、かわら版の5つからできています。見本帳はパスタなどのカタログを参考にして作りました。和菓子を買いに来られた方は、見本帳を見ながらオーダーシートに作ってほしい和菓子を記入。その要望に、職人が診断表を使って色や形で表現していきます。和菓子は季節感や色合いなどを大切にするので、お客様と職人の間で交渉を行って作成に移ります。

 

 

 

Q

企画された商品について教えて下さい。

杉山

11月にオーダーメイドシステムが完成し、和菓子普及の機会を探しました。カレンダーを見ながら色々と考える中で「成人式」に着目。メンバーのほとんどが今年、成人式を迎えるということもありましたし、実は、和菓子には「贈る」という意味合いの文化があります。私はすでに成人を迎えたのですが、その時は祝ってもらうばかりで、感謝の気持ちを伝えることができませんでした。そこで、感性や情緒を表現する和菓子は、新成人の「感謝の気持ち」を伝えることができるのではと考え、成人式にあわせた商品企画を行いました。

 

開発にあたって、職人の村上さんに「成人式がどういうものか考えてみたら」とアドバイスをいただきました。私たちにとって成人式は一種のお祭りですが、昔は元服という厳粛な儀式だったそうです。また村上さんは「和菓子には、よいものとして残されてきた『型』がある。『型』を破ることは奇をてらうこと。和菓子を知る『心ある人』にも理解されるお菓子を作りたい』ともおっしゃっていました。

 

特に「色合い」については、私たちの考えたデザインと職人さんとの間にギャップがあり、すり合わせるのに苦労しました。ですがその一方で、和菓子を若い人にも食べてもらわないと、今後衰退していくという認識があったことで、お互いに分かり合えることができたと思います。

 

できあがった商品「晴れ姿」は、男女の晴れ着やほほえみ、寒さの中での照れを表しています。売れ行きについては、1月10日の時点で目標であった50個を販売することができました。

Q

では、今後の予定について教えて下さい。

杉山

バレンタインデーや母の日のように、日付と関連した商品企画を「型モノ」というのですが、これを新たに開拓し、定着・浸透させること。メンバーのほとんどが3回生でも服部ゼミに入る予定なので、今後も活動を進展させていくつもりです。ムードメーカーやアイデアマン、まとめ役といった、それぞれのメンバーが自然に補い合い、最後まで諦めずに続けることができました。今回の経験で見えてきた反省点は「オーダーメイドシステム」の改善に生かしていきます。また、和菓子の普及にも力を入れていき、少しでも多くの人に和菓子のよさに親しんでもらい、若い人に食べてもおいしいものだということを知ってもらいたいです。

 

この活動は企業と連携して行うものでしたので「中途半端なことはできない」という思いで取り組みました。記者発表のときはたくさんのメディアに囲まれましたが、メンバーがいたのでそれほど緊張せず、度胸がついたところが自分で成長したと思います。注目されることが多かったので、はじめは想像できなかった全国展開も、今は夢ではないかなと思い始めました。今回の活動を通して「諦めないこと、妥協しないこと」はとても大切なことだと思いました。

取材・文/大舘 匠(法学部3回生)
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