輝いています、ときの人 #162 立命館大学体育会スキー部 全日本学生スキー選手権大会 ジャイアントスラロームで優勝 小林大郁(こばやし・ひろむ)さん(経営学部2回生)
自分のペースで好きなことをやり続ける
100分の5秒。
その一瞬で勝負が決まるアルペンスキー競技。
選手はだれもが一瞬一瞬に勝負をかける。
そんな戦いの中に身を置く立命館大学体育会スキー部、小林大郁(ひろむ)さん(経営学部2回生)が、
第83回全日本学生スキー選手権大会の男子1部ジャイアントスラローム(GS)で初優勝に輝いた。
今回はそんな小林さんに好きなことを続けながら結果を出す秘訣やスキーに対する想いをお聞きした。
(2010年1月29日掲載)
Q

優勝、本当におめでとうございます。
小林さんがスキーをはじめたきっかけやこれまでの経緯を教えていただけますか?

小林

今回の優勝は本当に嬉しかったです。
実は立命館大学への進学を決めた時、周囲から「なぜスキーの強豪校に行かないのか」と言われました。実際、高校3年生の時に国体で優勝していたのでスキーの強豪校からの誘いはありましたが、自分のペースでスキーをやっていく為、自分が決めた大学に進学したいと思っていました。今回は結果を出せて本当によかったと思います。

 

僕がスキーに出会ったのは幼稚園の時、母の勧めでスキースクールに入ったのがはじまりです。そのときは滑るのが楽しくて仕方がなく、小学校に入ってからは「玉越ストリーム・ジュニアレーシングスキーチーム」という所に自分から入って競技にも挑戦するようになりました。出場する大会ごとに1位や2位になることが出来たのが嬉しくて、もっともっと好きになりましたね。同じレーシングチーム内にもう1人スキーの上手い子がいて、ライバルとして競い合うことが楽しかったのもあります。しかし、小学校の高学年になると周りは一気に成長期を迎えて、リーチの差に苦しみました。

 

立命館慶祥中・高校に進学後、中学1、2年生の時は勝てない日々が続き、自分自身でも落ち込んでいました。コーチにある事で怒られ、スキーを止めようかと本気で悩みました。何度も考えた結果、「スキーを諦めることが出来ない」と改めて思ったんです。コーチに「もう一度スキーをやらせて下さい。もう一回、全国を目指します」と頭を下げました。

 

それからはひたすら練習に打ち込み、中学3年生の時にやっと全国大会に出場することができました。
ただ、高校にはスキー部がなく、所属していたレーシングチームも活動に参加できるのが、中学生までだったので再び悩みました。スキー部がある高校への推薦の道もありましたが、他の所で自分のペースを守ってスキーをやっていけるか不安だったので、その正直な気持ちをコーチに話すと、高校でも練習を見ていただける事になりました。そのため、同じレーシングチームのライバル達がスキー部のある学校に行っても不安はありませんでしたね。
学校が終わったら練習に行く日々が続き、遊びたいと思う時もありましたが、やっぱり滑るのが楽しくて、やめたいと思うことはありませんでした。
そして高校3年生でやっと国体へ出場、優勝することができました。

 

 

 

Q

国体で優勝してから、周りの環境も変わったんですか?

小林

優勝後は、周囲の期待を感じるようになりました。それを表すかのように、スキーの強豪と言われる大学からも推薦の誘いがきました。それまで競い合ってきたライバル達が強豪校に次々と進学を決める中、「自分はどうするべきなのか」進路について悩みました。
でも、「自分のペースでスキーをやっていきたい」という気持ちが決め手でした。

 

自分のペースを崩してしまったら、きっとスキーを好きなままではいられなかったと思います。大学に入学後も大変なことはたくさんありました。
慣れない一人暮らし、コーチのいない練習、自分で練習メニューも考えたりするので、今までとは違う環境の中で戸惑いもありましたが、それでもとにかく練習に打ち込みました。2回生になると前期は授業に出て、夏はニュージーランドに海外遠征。11月からはテスト期間を除いて出身地の北海道に戻り、小学生からお世話になっているコーチの下で練習しました。大学に入って2年、スキー一筋に打ち込んできました。
そして挑んだのが今回の全日本選手権だったんです。

 
Q

強い決意をもって挑まれた大会だったんですね。その大会に出場されてどうでしたか?
そして、これからの目標も聞かせてください。

小林

これまで練習に打ち込んできたこともあって、出場する3種目のうち、GS(大回転)とスーパーG(スーパー大回転)には自信がありました。緊張もなく、落ち着いた気持ちで自分の順番を待つことができました。「100分の1秒」というタイムの差が順位を大きく分けるアルペンスキー競技はメンタルも強くなければ勝てません。この時はしっかりと集中できたこともよかったのだと思います。優勝だとわかった時は本当に嬉しかったですね。

 

大学の仲間も、家族も、そしてずっと支え続けてくれたコーチも、みんなとても喜んでくれました。こうした多くの人に支えてもらったからこそ今までスキーを続けてこれたのだと思います。自分のペースを守って続けてきたことも、今回の優勝にも繋がったのだと思います。やらされている感覚でスキーを続けていたら、スキーを嫌いになっていたかもしれません。大事なのは、「自分からやること、自分のペースを守ること、自分で決めること」だと思います。大切なのは自分自身だと思います。

 

これからは、来年2月にある大学生のオリンピック「ユニバーシアード」に出場するためにも、3月の全日本スキー選手権大会での上位を目指し頑張ります。
そして、これからも自分のペースでスキーを続けていきたいですね。

Link アルペンスキーのルールはこちら
取材・文/川口菜摘(経済学部4回生)
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