薬学部HP 化学系薬学

薬用植物中の生物活性成分の探索研究

生薬学研究室

担当教員/池谷 幸信

新薬開発はゲノムサイエンス時代といわれていますが、薬の多くは植物成分、あるいはそれをリードとして創製されたものです。人知を超えた多様性に富む成分を含有する薬用植物は、現在も新薬探索の素材として注目され、サプリメントとしても利用されています。生薬学研究室では、最先端の植物成分の分離技術を活用し、薬理学を専門とする研究室と協力し、薬用植物から新薬開発の種となる先導化合物を探索しています。また、数種の生薬(動植物などの薬用部位)が組み合わさった日本の伝統薬である漢方薬は、長年の使用経験から人に対する経験的な有効性の知見は豊富ですが、近代的な試験による有効性のデータは十分ではありません。そこで、本研究室は、漢方薬の有効性の科学的証明の一環として有効成分を解明し、漢方薬の普及に貢献したいと思っています。

高速液体クロマトグラフィーによる植物成分の分析

微生物がつくる未知の生理活性物質を見出す

微生物化学研究室

担当教員/今村 信孝・川﨑 崇

微生物由来の生理活性物質は、抗菌や抗ガン抗生物質のように、医薬品として数多く使われています。これらの微生物産物は、生産する微生物自身の増殖・生命維持には無関係なので二次代謝産物と呼ばれ、作るか否かは微生物次第です。また、ユニークな化学構造のものが多いことも特徴です。最近、幾つかの抗生物質生産菌の全ゲノム解析から、生産物以外の二次代謝産物の遺伝子が、多数コードされていることが明らかになりました。未知の二次代謝産物生産能を、微生物が秘めていると考えられます。本研究室では、抗ガンや抗アレルギー物質などを目的とした評価方法を構築し、微生物産物から新たな生理活性物質を探索、単離し、化学的な解明を行うとともに、その生合成遺伝子の解析を行い、応用へとつなげることをめざしています。

新規生理活性物質の探索

タンパク質の構造形成および異常構造形成に関する物理化学研究

生体物理化学研究室

担当教員/加藤 稔

生命現象を担うタンパク質分子が細胞内で誕生するとき、その長い分子鎖は自ら折りたたみ、固有の立体構造を形成します。これにより生理機能を発現します。その折りたたみの機構はいまだに謎に包まれています。また、間違って折りたたまれた場合、アルツハイマー病、プリオン病などの疾患の原因となることが最近の研究で明らかになってきました。タンパク質の折りたたみ問題は難病とも関連するライフサイエンスにおける最重要課題の一つです。折りたたみの原理を解明するには溶液中でのタンパク質やその凝集体の構造変化を追跡する必要があります。高分子であるタンパク質の構造解析は容易ではありません。最先端の計測法や理論的方法を駆使します。さらには、人工設計タンパク質・ペプチドも活用し総力戦でこの難問にチャレンジしています。

生体分子解析用顕微分光測定

有機合成の力でくすりの潜在能力を最大限にひきだす

精密合成化学研究室

担当教員/北 泰行・土肥 寿文

有機合成化学には新しい創薬リード化合物を生み出したり、くすりの望みとする能力を最大限に引き出したりする力があります。現代は、ゲノム情報やコンピュータの発達も相まって、欲しい医薬品や生物活性物質を理論的に設計する時代が到来しつつあり、創薬の場においてますます有機合成の活躍する環境が整ってきました。
医薬関連物質へのアプローチに際しては、常に人体や環境への影響を考慮する合成法の発展が不可欠です。私たちはこれまでに、有機合成の知識と技術の伝承に携わりながら、創薬研究に役立つサスティナブル精密有機合成を一つの指針として追究してきました。これらの方法を用いて優れた生物活性を持ちながら微量にしか得られない天然物や生物活性物質を合成し、創薬リード化合物とする医薬品開発研究に挑戦しています。

ターゲット化合物の分子設計

有機合成の力でくすりの潜在能力を最大限にひきだす

生薬学研究室

担当教員/田中 謙

和漢薬は多数の成分が非線形的に相互作用しながらまとまって活性を示すいわゆる「複雑系」です。このような系では、成分間及び成分と生体間の複雑な相互作用とその非線形性のために、特定成分の活性や含有成分の化学的性質だけからは予測できない多様な生物活性が自己組織的に発現したり、系内のごく些細な成分変化が系全体の活性を変化させたりします。従って、和漢薬を有効活用するためには、従来の要素還元的手法とは異なる情報の切り取り方が必要です。本研究室では、和漢薬中の複雑な成分をLC-MSなどにより網羅的に解析して、生薬の基原植物の成分化学的性質の違いや「薬」としての品質の違いなどに関する新たな「情報」を抽出し、薬効に関する情報と融合させることにより、和漢薬の新たな評価基準の創出するための研究や、和漢薬成分のシナジー効果の解析、方剤化の意義などの解析を行っています。

高速液体クロマトグラフ─質量分析計(LC-MS)

生体での反応を分子レベルで明らかにする

生物有機化学研究室

担当教員/民秋 均・山本 洋平

本研究室では、生体機能を分子レベルで解明することを目標としています。現在のところ、主として光合成にターゲットを絞って、天然色素を生体から抽出単離し、これを有機化学的に修飾することによって、より単純化されたモデル系を構築し、その構造と機能を解明し、この結果をもとに、
 1.生体系の解明
 2.新しい反応系の開発
 3.新素材の創出
 4. 人工光合成の創製
などをめざしています。

600MHz核磁気共鳴装置

糖鎖機能の解明が再生医療を新たなステージへ導く!

生体分析化学研究室

担当教員/豊田 英尚・小嶋 絢

糖鎖はタンパク質をはじめとする多くの分子と結合して、生体内で重要な生理的機能を担っています。糖鎖構造の異常によって、ガン、アルツハイマー病、糖尿病、筋ジストロフィー、免疫応答疾患など多くの疾患が引き起こされていることが明らかになっています。このような背景から、新たな医学領域として注目を集めている再生医療分野への、糖鎖研究の応用が期待されています。我々はiPS 細胞表面やES 細胞表面に発現する糖鎖が、細胞のリプログラミングや分化に果たす生物学的役割を解析しようとしています。その結果を基に、より効率的で安全、簡便な細胞培養技術を開発し、再生医療に寄与することを目指しています。

ヒトiPS細胞

蛋白質のかたち(構造)と働き(機能)を研究し、病気になるメカニズムを解明する

生体分子構造学研究室

担当教員/北原 亮

蛋白質という分子は細胞のあらゆる生命活動において中心的役割を担っています。蛋白質が異常をきたすと、アルツハイマー病に代表される神経変性疾患や癌など様々な病気につながります。蛋白質の構造を原子レベルで理解することにより、機能発現や病気のメカニズムが解明できると考えられています。研究室では、数千気圧の高圧力実験から、蛋白質が示す構造変化を調べるという独創的な研究を行っています。構造変化は、構造の化学平衡の変化を意味し、分子の機能の高さや凝集性などその性質と直接関係します。このような蛋白質構造の研究から、新しい医薬品の開発につながることを期待しています。

酵素の立体構造変化
(基質結合部位の開閉運動)

生体を超えた機能を持つ人工分子と超分子集合体の創製をめざす

超分子創製化学研究室

担当教員/前田 大光

分子と分子の間に相互作用がはたらくことによって超分子集合体は形成され、 個々の分子には見られない物性や機能性の発現を実現します。そこで、巧みな 分子集合体システムからなる生体システムを参考にし(バイオインスパイアードケミストリー)、自発的な集合化が可能な機能性色素分子、および特定の化学種(分子やイオン)の「認識」やセンシングが可能な分子を、有機合成を駆使して創製しています。さらに、超分子集合体を基盤とした、外部刺激応答性ナノスケール組織構造(ゲルや液晶など)の形成および電子材料への展開をめざした研究を行っています。

研究を遂行するキープレーヤーであるラボのメンバー

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