記述編目次→「2.学部教学-現状と課題〜7.文学部」
 

  7.文学部

 
これまで文学部では、「人間とは何か」という古くて新しい根源的な疑問に対して、人文科学の様々な分野から深く思考し、分析し考察することを教学の理念としてきた。しかし今、世界は大きな転換期を迎え、人文科学においても新しい可能性をめぐっての模索が始まっている。このような転換期にこそ、伝統的な人文科学を深く学ぶ必要があり、また一方で新たな分野や枠組みに積極的に取り組む方向も重視されるのである。
 2001年度は、かかる理念のもと、伝統的な人文科学の継承と共に、新しい分野の展開を目標に、その実現にむけて組織・条件の整備を行ったことが大きな特徴である。




上記の理念・目標を実現するために、伝統的な人文科学の各分野間のいわゆる「垣根」を低くし、相互に交流することができる組織・条件づくりを実現した。
まず、人文総合科学インスティテュート(以下、人文インスという)の改革を行った。従来の人文インスを学際プログラムとして位置づけ、それに国際インスティテュートを国際プログラムとして加えた。更に総合プログラムを新設して、3つのプログラムから成る人文インスを立ち上げた。特に総合プログラムはこれまでにない特徴的なプログラムで、3回生になる時点で、そのプログラムを続けるか、他の10専攻や学際プログラムに変わるかを選択することができる。逆に、10専攻や学際インスティテュートから、総合プログラムへの移籍も可能になることはいうまでもない。文学部では、このような流れを一層促進させるための別の改革も検討中である。
また、ライティング指導を正課の科目の中に取り入れることとした。文学部には、教学の最終到達点としての卒業論文を必修科目としている。そのために、基礎的な伝える技術であるライティングを早い時期から取り入れるべきであると考え、2001年度に実現させたものである。前期セメスターには学部全体で共通の講演を素材とし、後期セメスターには各専攻で独自の指導を行った。現在のところ、1回生の研究入門科目の一部を割いて実施しているが、将来的には別個の独立した科目にしたいと考えている。
他学部に比して遅れていたインターンシップについては、新しく自治体とマスコミとの間で立ち上げた。インターンシップは、文学部の学生の教学に資し、将来の進路を考える手段として位置づけられる。この他にも、英語副専攻と言語教学の展開、研究入門の栞の作成、夜間主時間帯カリキュラムの検討、連続講演会の実施などを行った。




人文インスの改革については、細分化された人文科学の各分野を総合化させる新しい試みとして、他大学などから問い合わせがあるなど注目されている。入学試験では、改革初年度で広報活動が充分にできなかったためもあって、予想より少なかったことが課題となった。また、ライティングに関しては、学生からの評価が高く、必要性も高いために、将来的には独立した科目に移行することを検討している。インターンシップの評価は、まだ実績が少ないため難しいが、今後とも実施先を増加させる取り組みが必要となる。




文学部の理念を実現させるための「垣根」を低くする試みは、一定の成果を生みつつある。しかし、もう一方の伝統的な人文科学の諸分野の充実については、まだ課題が残されている。今後、各専攻における議論を経て、文学部全体の中で教学を内実化させることと、効果的なカリキュラムの検討を行うことなどが当面の課題になろう。

 

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