1999年度は、本学にとって4年に一度の学費改訂方式をめぐる全学論議が行われる年度であり、これにともなって教学のありよう全般にわたって総括と見直しが行われ、学生との間で今後の教学改革の方向をめぐって広範な意見交換が行われた。また1996年度に発足した昼夜開講制について、1999年度より一層昼夜相互履修を進め、幅広く社会人学生を受け入れる改革が行われた。更に1998年度にびわこ・くさつキャンパスに経済・経営両学部が新展開して以降、両キャンパスは徐々に独自の教学的な展開を図りつつある。これらを背景とした個々の実践などについては個別に触れられるが、ここでは全体を通じた特徴的な取組みと到達点、課題について以下に触れておきたい。
(1)確かな学力形成をめざす諸取組み
【理念・目標】
99年度の全学協議会における教学論議において、最も中心的に論議された問題が、学生の基礎学力を一層向上させる問題であった。その中で1回生導入期教育の重要性が共通に認識され、とりわけいわゆる基礎演習・研究入門における導入期教育への積極的な取組みが確認された。同時に基礎学力を向上させていく具体的な手立てとして、各学部において最も基礎的な専門知識の習得のために必要な科目群をコア科目として明示し、かつそこで修得した知識や学力を客観的にはかり、各自の到達度を明確にするための到達度検証の仕組みを作り上げることが合意され、各学部で具体的な検討や取組みが進められてきた。
【現状】
1999年度から2000年度にかけて各学部においてコア科目群の整理が進められ、更にいくつかの学部では具体的な到達度検証の仕組みについて実施段階に至っている。また関連して、成績評価基準の見直しについても具体的に検討され、実施案として確定するに至っている。
【評価】
学生の基礎学力を向上させていく課題は教学全般にかかわる大きな課題であるが、その中でも導入期教育の課題についてはこの間重点的に取組む中で、一定の到達点に達している。今後は,現在の導入期教育における取組みを一層進めつつも、専門教育もふくめた更に総合的な取組みが求められる。
【課題と改善方向】
個々の科目における成績評価基準の明示や、コア科目の内容を充実させる様々な方策の具体化などを、2001年度の課題として具体的に設定する必要がある。また各学部の教学の特徴にあったコア化・到達度検証の仕組みの具体化を目指して、更に個別に取組みを進めていきたい。
(2)両キャンパスでの教学展開
【理念・目標】
本学は1998年度より2大キャンパスに移行し、現在では両キャンパスはいずれも約1万3000人の学部学生を有するキャンパスとして日々の教学実践を進めている。その中で、全学に共通する改革課題に取り組むとともに、おかれている学部の教学上の特色も踏まえつつ、キャンパス独自の展開を図りつつある。
【現状】
@衣笠キャンパス
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衣笠キャンパスでは、2000年度より5学部共同のプログラムとして国際インスティテュートを発足させ、国際社会での活躍を目指す人材育成にむけて学生の受け入れを開始した。また2001年度より、新たな教学分野の展開をめざして、産業社会学部に人間福祉学科、文学部に心理学科を新設するとともに、独立研究科として応用人間学研究科を開設する。また個別の学部では法学部が1999年度からカリキュラム改革を実施し、従来の5コース制を4専攻に再編し、法曹を目指す学生に独自のカリキュラムを設定する等の改革を行った。産業社会学部では人間福祉学科の開設とあわせて2001年度から産業社会学科のカリキュラム改革を行うべく、準備中である。 |
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Aびわこ・くさつキャンパス
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びわこ・くさつキャンパスでは、経済、経営学部と理工学部が同一キャンパスで教学を展開する中で、文理融合型のキャンパスを目指し、学部間の共同の取組みを様々に進めてきている。その核にあたるのが文理総合インスティテュートであり、1998年度の発足以来学部の壁を越えたプログラムを展開している。また1998年度の外国語教育改革以降、びわこ・くさつキャンパスとしての独自の改革を進める中で、理工学部において2000年度より新たに運用能力の向上を目指す外国語のカリキュラム改革を行った。
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【評価、課題と改善方向】
両キャンパスにおいて展開される教学システムはその基本において統一的な運用がされている。この点では、立命館大学の総合大学としての教学資源を最大限学生に提供していくためにも、共通の枠組みを今後も更に追及する必要がある。具体的には例えば遠隔授業等も活用した両キャンパス間にまたがる履修の仕組みの一層の展開などが考えられよう。
他方で両キャンパスが配置されている学部の特徴も活かして、各キャンパスの教育の特色作りを進めてきており,それが各キャンパスの教学内容上の魅力を形成しつつある。インスティテュートを軸にした一層の展開など、今後も更に教学の内容上の独自性を打ち出した教学展開を図る必要がある。
(3)新たな学びのしくみの構築
【理念・目標】
この間新たな学びの仕組み作りの取組みが多様に進められてきているが、その中でもとりわけ特徴的であるインターンシップの取組みと、遠隔授業の取組みについて触れたい。
インターンシップは、学生の学びのフィールドを広げ,学生の視野の拡大を図っていくうえで重要な学びの仕組みである。また、既に遠隔授業や通信教育における単位認定の枠組みの拡大など、法制面での整備も進みつつあるが、遠隔授業やインターネットを活用したネットワーク型の授業展開などは大学の授業のあり方そのものを変えつつある。これら2つの課題について,本学ではいち早く積極的な取組みを進めてきている。
【現状】
@インターンシップへの取り組み |
本学では1999年度に全学インターンシップ教育推進委員会を学内に発足させ、様々な促進の取組みを進めてきている。その結果2000年度には文学部以外のすべての学部で単位認定を行うインターンシップが実施され、更に文学部においても2001年度から同様に単位認定を行う正課としてのインターンシップが実施される予定である。また大学コンソーシアム京都の事業として実施されているインターンシップにも積極的に参加し、正課として単位認定を行っている。また、1999年度からインターンシップオフィスを設置し、様々なインターンシップ情報の集約点とするとともに積極的にインターンシップ先の開拓を進めた。これらの結果として2000年度に正課・正課外を含めてインターンシップを行った学生は500名を超える状況となった。 |
A遠隔授業等への取組み |
本学では1998年度末に明治大学と衛星通信回線を使った双方向型遠隔授業を実験的に実施した。更に1999年度には大学コンソーシアム京都において正課の授業(夏期集中講義)を龍谷大学と通信回線を使って1つの授業すべてを遠隔授業の形式で具体的に実施するなど、具体的な取組みを進めてきている。 |
【評価】
上記のように、インターンシップの正課,正課外での実施人数は全国まれに見る水準に達している。また、遠隔授業においても具体的な正課の中で実施する等,今後の一層積極的な展開にむけた経験を蓄積しつつある。
【課題と改善方向】
インターンシップについては、一定の到達に達しているものの、まだ全学生数に比して十分とは言えず、今後さらに量的な拡大を図る必要がある。また海外におけるインターンシップの開拓や、より長期のインターンシッププログラムの開発、更には個人で学修計画を立ててインターンシップを行いその成果について評価を受ける形の、いわゆるインデペンデントスタディー型インターンシップへの展開など、今後も重点的な課題として一層の展開を図る必要がある。
遠隔授業システムの活用は,アジア太平洋大学の開学とともに一層重要な課題となっており、2001年度にはアジア太平洋大学と立命館大学との間でも遠隔授業を実施する予定である。今後大学の3キャンパスの教学資源を一層活用していく上でも遠隔授業の一層の推進が求められる。
(4)大学教育の改革に向けたとりくみ:大学教育支援センターの活動展開
【理念・目標】
教学改革を進めると同時に、教育内容そのものの質的な高度化を図る意味で、1998年度から、大学教育開発・支援センターが発足した。このセンターでは、
@全学に共通する新しい教育システムの開発 |
A教育効果のアセスメント方法の開発 |
B教学改革および学びの実態に関する基礎調査 |
C広い意味でのファカルティ・デベロップメント活動の展開 |
などを柱に活動をおこなっている。
【現状】
1999年度から2000年度にかけての具体的な活動は、大きく3点に整理される。1点目は大学教育についての総合的調査研究の推進である。学生の高度な基礎学力形成のあり方とそのための仕組み、教育効果検証の仕組みなどを研究する基礎学力プロジェクトの設置や、基礎演習の授業改善を具体的に研究する基礎演習プロジェクトの設置、更には大学教育の有効性を評価診断できるシステム作りを目指すベネッセとの共同研究プロジェクトの設置など、各種のプロジェクトを通じて学生に対するアンケート活動やその分析を行い、報告書に取りまとめるなどの活動を進めた。2点目は、授業改善にむけた取組みである。外国語のオープンクラスウィークの共催、大学コンソーシアム京都のFDフォーラムへの積極的な参加など、多様な活動を行った。3点目はネットワーク活動の推進である。大学コンソーシアムとの連携や他大学・研究機関との交流の推進などを通じてネットワーク形成に努めた。
【評価】
この間の多様な調査活動やFD活動の中で、個々の授業改善にむけた経験が蓄積されつつある。また、個々の授業改善のみならず大学の学びの構造全体を,中等教育あるいは大学院教育も視野に入れつつ改革していくことの重要性が様々な取組みの中で一層明らかにされてきている。
【課題と改善方向】
今後は、これまでの諸調査等の蓄積の上にたち、新たに高大連携の課題などにも取り組んでいくこと、またプロジェクト体制の発展的な改組を図り、より具体的なカリキュラムや教育システムの開発等に取り組んでいくことが課題となっている。