1−2 大学院新展開の現状と課題

【理念・目標】
1980年代後半以降、世界で、環境、エネルギー、民族や宗教対立、生命、人口問題など、20世紀中に解決できない問題が浮上する一方で、急速な情報化・国際化の進展にどう対応するのかが問われ始めている。このことは、わが国において国立大学独立行政法人化や知的・研究面での国際競争力の強化、即ち世界レベルで通用し活躍できる人材の養成、世界でのリーダーとなりうる人材養成、換言すれば、日本の知的・国際貢献、「科学=技術立国」の担い手養成を強化する必要性として現れている。


 特に、1998年10月の大学審議会答申では、学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、高度専門職業人の養成機能や社会人の再教育機能の強化、教育研究を通じた国際貢献の役割が益々高まることが指摘され、2010年には大学院在学者は25万人、将来的には、30万人と予想されている。


  1950年に日本初の新制大学院として出発した本学大学院おいても、1980年代後半以降、従来の研究者養成に加えて、「高度専門職業人養成」の必要性をいち早くかかげ、各研究科に新しいコースを設置し、社会的ニーズに対応してきた。1995年全学協議会文書では、大学院改革を第5次長期計画の基本課題の中に位置づけ「研究者養成や高度専門職業人養成、社会人の再教育の改善をはかっていくこと」の重要性を確認している。


 1999全学協論議の際には、全研究科が教学総括文書を作成・提起するとともに、学園通信特別号(大学院版)『立命館大学院の新たな発展をめざして』が発行され、大学院全体にわたる教学総括と大学院新展開についての議論が行われた。「大学院新展開」は、大学院教学と研究の高度化を目指した取り組みであり、その基本目標を次のとおりとしている。即ち、


  @「卓越した教育研究拠点」(COE)の形成
  A 高度専門職業人養成・社会人再教育機能(プロッフェッショナルスクール)の強化
  B これを支えるための大学院の質的・量的拡充と既存研究科の刷新

(文・社系学部生の約2割の大学院進学、既設研究科を含め毎年100名の課程 博士の輩出) そして、2003年度までの計画として、第1に、プロジェクト研究を中心とした一貫博士課程(人文・社系を中心とした「新構造大学院」(仮称)と理工学研究科のフロンテイア理工学専攻)の設置、第2に、人間化分野の新研究科、ビジネススクール、ファイナンススクール、法科大学院、理工学研究科内の国際産業工学特別コースについての検討を開始した。



【現状と評価】
現在の到達点は、以下の状況である。即ち、
@
2000年4月より法・経営・社会学の各研究科の入学定員増を行った。これにより、立命館大学の大学院は、社系・人文系・理工系の8研究科を擁し、収容定員規模で博士前期・後期課程合わせて2,640名、実員で2,000名を有する総合的大学院となっている。
A
人間化分野の応用人間科学研究科(修士課程2年、収容定員120名)と理工学研究科の一貫制博士課程(収容定員100名)は、2000年12月に設置認可が下り、2001年の設置が決定している。
B
2001年9月設置予定で、アジアからの留学生を主な対象とした理工学研究科国際産業特別コース(修士課程2年、収容定員40名)は、学内合意を得て現在学生募集などの準備を行っている。
C
人文・社系分野における最先端かつ根幹的課題の研究を行なう新構想大学院(仮称)は、2000年12月に設置委員会に移行し、2003年4月設置をめざし、原案の精緻化、開設記念シンポウジウムの準備に入っている。
D
2002年4月設置予定で議論してきたビジネススクールは、ファイナンス分野をビジネススクールに組り込み独立研究科とする方向が打ち出されたが、2002年4月より経営学研究科内のプロフェッショナルコースとして出発させ、実績を積んだ後に本格的なビジネススクールとする方向が確認され、具体化作業が進んでいる。
E
法科大学院は、1999年11月に、推進委員会のもとに司法試験緊急対策小委員会と設置準備小委員会が設けられ、地球市民法曹養成に向けたシンポウジウムを1・4・9月に行い、『立命館京都法科大学院(仮称)構想』を精緻化している。最終的には、司法制度改革審議会の結論を待つことになるが、2001年2月には設置委員会に移行し、カリキュラムおよび教員体制を含め準備は着実に進んでいる。
F
2000年度には、優秀な大学院生の勉学と研究を支援する「大学院新総合援助政策」を展開し、給付型奨学金の拡充を図っている。学内奨学金採用者数が奨学生に占める比率は全国で37%(私大連盟調査。貸与奨学金を含む。)だが、本学の博士前期課程では給付奨学金のみで55%を達成している。
G
また、「入口」(入試・広報方法)-「中身」(教学の特色・システム)-出口(進路・就職)の"三位一体"を成す積極的かつ総合的な大学院入学政策の策定と展開をめざし、本学としては初の「大学院入学政策委員会」が2000年に発足し、翌年1月には大学院ホームページの刷新を行い、発信能力の抜本的強化を図った。
H
大学院教学責任体制についても、1999年に大学院部長が設置され翌年には同部長を補佐する大学院副部長も設置されている。



【課題】
今後、グローバリゼーションのなかでIT(情報技術)を軸とした急速な国際化が進むことにより、「高度」専門職業人の養成と輩出に関わって、世界的な大学間競争が展開されると考えなければならない。また研究分野でも、既存のディシプリンを越えた対象と課題が今後は主要なテーマとなるだろう。APU創設など他私大に例をみない教学創造を行ってきた本学は、こうした流れを前提に、2003年度以降の「大学院教育と研究の高度化」を構想し実現していく必要がある。これに対応する教員組織・事務組織のあり方と大学院全体の管理運営方針の検討も焦眉の課題である。


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