Interview 03

環境にやさしいプラスチックを研究中。培ってきた英語力が今に活きています。

Interview 03

環境にやさしいプラスチックを研究中。
培ってきた英語力が今に活きています。

立命館大学大学院
生命科学研究科 生命科学専攻
小倉 太一さん (2010年卒業) 2021.03.24

Introduction

立命館小学校1期生。立命館中学校・高等学校、立命館大学生命科学部を卒業し、2020年4月、立命館大学大学院生命科学研究科に進学。環境に優しい素材の一つとして世界的に注目されるバイオベースプラスチックの開発に取り組む。趣味はドライブ、映画鑑賞、海外旅行。マイブームは漫画。特技は英会話。座右の銘は「何事も最後までやり抜く」。

Growth Trajectory

入念に準備することで磨いてきた、
英語によるプレゼンテーション能力。

私は中学1年生の時から、スピーチやプレゼンテーションを通して英語力の鍛錬に取り組んできました。そのきっかけとなったのは、動画で観た学内の英語スピーチコンテスト。自分の伝えたいことを聴衆に楽しんでもらいながら理解してもらえるところに魅力を感じるとともに、「かっこいい!自分もやってみたい」と思ったのです。以来、出場、そして優勝を目指して練習に励みました。初めて出場できたのは高校1年生の時。優勝は逃したものの、持てる力全てを出し尽くして得られた達成感は、今でもはっきりと覚えています。また別の機会には、高校の課題であった『納豆で水を浄化する』という研究の成果を海外で発表し、英語で議論するという貴重な機会を得られました。
大学入学後、自分が培ってきた英語によるプレゼンテーション能力がどこまで通用するのか試したいと考えるようになりました。そこで友人とともに、『全国学生英語プレゼンテーションコンテスト』での優勝を目標とする団体『STEP』を設立。発表内容に説得力を持たせるため、コンテストで与えられたテーマについて、その専門家にヒアリングを行うなどして知識を深めました。また表現や構成の面では、聴衆の心を掴み、かつ楽しみながら理解してもらえる工夫を凝らしました。できる限りの努力と工夫を重ね本番に臨み、699名中、トップ50入りを果たすことができました。同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨し、互いに高め合う日々は、相手の気持ちを尊重しながら自分の意見を発信する姿勢を養うことにつながったと思います。私は優柔不断なところがあり、判断に時間がかかるタイプです。そのため、誰よりも入念に準備をするというスタンスを貫いてきました。それは現在も変わりません。「入念な準備は成功へとつながり、結果、仲間を支えることになる」と信じているからです。

ヒトの虫歯菌が作る物質に着目し、
地球に優しいプラスチックを開発中。

生命科学部を志望するに至った理由としては、小学校4年生の時の自由研究が大きかったと感じています。色鉛筆を使い、とことん手間をかけて地球温暖化についてまとめたことをきっかけに、環境破壊や環境汚染に対する興味を抱くようになりました。現在取り組んでいるのは、バイオベースプラスチックの開発。バイオベースプラスチックとは近年、地球環境に優しい素材として世界的に注目を集めているものです。石油を原料とする従来のプラスチックとは異なり、天然素材を原料としていることが特徴です。着手したのは、大学3回生の終わり頃。「微生物を使ってプラスチックを作る」というテーマを選びましたが、その当時、あまり知識はなく「面白そう」というぼんやりとした理由からでした。ですが、関連する論文を読んでいくうちに、その奥深さに気づくことができたのです。私の研究においては天然素材の中でも特に、ヒトの虫歯菌によって生成される物質に着目しています。この物質は歯垢に近い成分なのですが、最近になって、新素材の原料としての可能性を秘めていることが分かりました。もしかしたらほかにも、私たちにとって身近な物質の中に、新しい使い方ができるものがあるのかもしれない。そう考えるとワクワクしますし、『可能性に挑戦できるところ』に、モノづくりの面白さがあると感じています。

得意を生かして英語論文を読み込み、
研究を大きく前進。

虫歯菌からプラスチックの原料を作るレシピは、私が所属する研究室がすでに開発していました。ただしプラスチックの開発自体は、研究室としても初の試みです。まずはレシピの改良に向けて、ゼロから仮説を立てて、実験し、考察するというサイクルを繰り返すところからスタートしました。バイオベースプラスチックの研究における現状や課題を把握するために、並行して、数多くの英語による論文を読み込んでいかなければなりません。『STEP』で磨いた英語力のおかげでスムーズに読み進めることができたものの、100を超える論文を読破すべく、4回生の1年間はまさに研究漬けでした。理解が深まるにつれて、興味はどんどん高まっていきます。例えるなら、「噛めば噛むほど味が出る」といった感じでしょうか。徐々に「この研究がどこまで進んでいるのか」「どのようなことが課題となっているか」が見えてきて、自分の研究が担う役割にまで思いを馳せるようになりました。
研究のプロセスで大事にしていることは、疑問を持つ姿勢です。実験の結果が仮説と異なった時、「なぜそうなったのだろうか」と考えることから、新たな発見が得られることも少なくありません。疑問を持ち続けることは、研究テーマに興味を持ち続けることにもつながります。そうやって研究に対するモチベーションを高く保ちながら、微生物の遺伝子を変えてみたり、生成温度を微妙に調整したりと、多角的かつ入念に準備して取り組んでいきました。結果、レシピの改良において従来の約30倍の効率化に成功。本当にうれしかったですね。自分の研究を目に見える形で残せるモノづくりの醍醐味を体感し、新しい素材の研究開発を通して、持続可能な社会の実現に貢献するという、将来の目標も見出せました。
私の目標は、同じテーマに取り組む他の研究室に先駆けて、プラスチックの開発を成功させることです。その道のりは決して平坦とは言えませんが、レシピ改良で得た「突き詰めれば究められる」という実感を力に、課題を一つひとつクリアしていきたいと思っています。

Column

「英語力を学びたい」という思いが芽生えた原点。

私が英語力向上に力を注ぐきっかけとなったのは、立命館小学校の英語の授業です。英語の音読に取り組むモジュールタイムや、さまざまな国や地域の人と共に過ごすワールドウィーク。共通している魅力は、「英語って楽しい」ということを体感させてくれる点です。その中で自然に芽生えた、もっともっと学びたいという気持ちが私の原点。それは中学以降の鍛錬・挑戦へとつながり、その結果として得られた英語力は、大学・大学院での研究活動に欠かせないツールとなっています。プレゼンテーション能力をはじめ、英語を通して強みを確立できたのも大きな収穫でした。

Goal

持続可能な社会の実現に貢献できる研究者に。

現在、一般的に使われている石油を原料としたプラスチックは、廃棄後に二酸化炭素を排出することから、環境問題を引き起こす一因となっています。私が研究しているプラスチックのように天然素材を原料としていて、かつ、廃棄後に自然と分解される特性を備えた素材ができれば、それが理想ではないでしょうか。目標は、環境に優しい素材の研究開発に携わること。その製品化をもって、サステナブルな社会実現の一助となることを目指します。

Message

入学希望者へのメッセージ

立命館小学校での学校生活を振り返って改めて思うのは、楽しいと感じる授業ばかりだったということ。先生方が熱意を持って創意工夫と努力を重ね、中身の濃い授業づくりを徹底してくださっていたからこそだと思います。そんな素晴らしい先生方との日々を糧とし、将来に向かって羽ばたいてください。

※プロフィールや内容は掲載当時のものです