Interview 05

AIで日本の産業を発展させたい。強い使命感で根気よく研究に向き合う。

Interview 05

AIで日本の産業を発展させたい。
強い使命感で根気よく研究に向き合う。

京都大学大学院
情報学研究科 社会情報学専攻
浅見 幸悠紀さん (2011年卒業) 2021.12.23

Introduction

立命館小学校2期生。立命館中学校・高等学校、立命館大学を卒業し、京都大学大学院情報学研究科に進学。専門はIT×防災の分野で、災害画像データを生成する研究を行う。来春から博士課程に進学すると同時に、AI ベンチャー企業株式会社ACES(エーシーズ)で勤務する予定。趣味は旅行と釣り。特技はスキー。

Growth Trajectory

ロボットの大会がきっかけで
身についた粘り強さ。

物事に向き合う上で私が大事にしているのは、最後まで根気強く取り組む姿勢です。それを培ったのは立命館小学校での体験でした。ロボットを作り、プログラムを組んで動かす授業があるのですが、私はロボット部にも所属し、その面白さにのめり込んでいました。
部ではメンバーが一丸となり、プログラミング制御を競う世界大会を目指します。私は6年生の時に初めて全国大会に出場しました。その時初めて、ロボットには面白さだけではなく、難しさもあると気づきました。というのも、それまでうまく動いていたはずのロボットが大会当日は命令通りに動かなかったのです。練習で成功しても、本番では1000回に1回のミスが出てしまうのがロボット大会の競技だと痛感しました。準備の段階で「これでいい」と満足してしまっていた自分を悔みました。
この苦い経験から、以降の大会では「まだ直せるポイントがあるはず」と、時間の許す限り徹底的に準備をするようになりました。念願の国際大会優勝を果たせたのは5年後、高校2年生の時です。自己満足せず、想定されるあらゆる事態に備えたからこそ、優勝へとつながったのだと実感しています。物事を最後までやり遂げる根気強さはこの経験によって培われ、現在の研究においても重要な要素となっています。
ロボットの大会をきっかけに国際交流にも積極的になりました。初めて国際大会に参加した中学3年生の時のことです。小学校時代から英語を勉強してきて、ある程度自信はあったのですが、隣の席に座っていたマレーシア人との英会話についていけず、ショックを受けました。もっと英会話を上達させてコミュニケーションを取れるようになりたい。そんな思いから翌年カナダへ1年間留学しました。現地のボーディングスクールは、様々な国の人たちが寮で生活しているインターナショナルな環境です。授業で習う英語とは違って、フランクな会話が飛び交っていました。英語を母国語としない国の人も多く、それぞれの国の文化や言語を知れたことも貴重な経験となっています。また、日本のサブカルチャーの話題になり、今まで気づかなかった日本の魅力を知れたのも大きな収穫でした。知らないことを積極的に見てみよう、読んでみようと思いましたし、物事を客観的に見る習慣も身についたと感じています。帰国後は、留学で培った英語力や国際感覚をさらに磨くため、高校のSSGコースに所属し、JSSF(Japan Super Science Fair)や海外研修にも参加しました。
こうして培ってきた英語力は、現在の研究活動には不可欠なスキルです。国際学会での研究発表にも必要ですし、英語で書かれた論文の精読や、英語によるプレゼンテーションの機会も多々あります。きっかけは何であれ、国際交流に力を入れてきて良かったと心から感じていますし、そうでなければ今の自分にはなれていなかったと思います。

自身の力をフル活用し、
大学院の研究とインターンシップを両立。

現在大学院で取り組んでいるのは、空撮画像やドローンで撮影した画像を用い、AIで建物の被害状況を判別する研究です。AIには最初から被害状況を読み取る能力が備わっているわけではなく、読み取り方を学習させねばなりませんが、ここで問題が一つ生じます。災害は頻繁に起こるものではないので、被害状況の写真データが十分に用意できないのです。
私はこの問題を解決するため、AIモデルを用いて災害画像データを生成しています。ロボット制御と共通する部分はあるものの、画像の生成やAIの学習は一筋縄ではいきません。画像生成やAI学習には1週間単位の長い時間がかかるので、試行錯誤しながら調整し、失敗しては再挑戦するという根気強さが必要になります。
ある時、こんな調査を行ってみました。AIが生成した画像を被験者に見せて本物の写真だと思うかどうかを問うたところ、「本物」と答える方が多く、精巧な画像を生成できていることが分かりました。難しいからこそ、こうした結果が得られた時や新たな発見が生まれた時は、心から楽しいと思えます。
インターン先のAIベンチャー企業では、これまでの研究成果を存分に活かして、画像認識を用いた技術の開発や論文内容の実践などに取り組んでいます。Algorithm Engineerとして、画像映像認識AIを用いて現場の情報をデジタル化するプロジェクトに携わっています。例えばスポーツ選手の身体行動をデジタル化する事業では、人間の次の行動をAIが予測して、けがの防止やパフォーマンス向上に役立てます。他にも、工事現場の事故につながりそうな作業員の行動を予測するなど、画像映像認識AIは様々な分野に応用できる技術です。既に一人で任せていただいている業務もあり、実施期間が半年間にも及ぶ大きなプロジェクトにも関わっています。
大学院の研究とはまた異なり、企業での経験は一つひとつが刺激になります。社内で開発した独自技術の実装業務など、技術の習得はもちろんですが、クライアントとのミーティングや社内のディスカッションもとても新鮮です。新たな学びもありますし、緊張感を持って業務に臨んでいます。

チャンスを逃さぬよう準備を怠らない。
中学時代に教わった格言がいつも胸に。

ITと防災を掛け合わせた研究を行っているのは、「社会をよりよくする」という強い使命感があったからです。さらに、AIによる画像生成技術を研究する中で、災害対策のほかにも医療や産業などにおける様々な課題解決に応用できればと考えるようになりました。
日本は現在、少子化で人手不足が問題になっていますが、捉えようによってはAIで産業を成長させるチャンスともいえます。従来は手作業で行っていた仕事をAIによって自動化し、少人数でも働きやすい環境を整えれば、働き手の負担軽減や仕事の効率化、ひいては産業の発展がのぞめるはずです。AIはあらゆる分野で応用でき、社会課題の解決に役立てられるでしょう。
中学時代を振り返ると、学年主任の先生に教わった言葉が思い出されます。「チャンスの女神には前髪しかない」という格言です。「好機をつかめるタイミングは一瞬。逃してしまえば後からはキャッチできない。だから躊躇してはならない」という教訓が込められています。私はこの言葉を常々思い出しながら、チャンスを逃がすことがないよう準備を整えています。大学院への進学もインターン先への就職も、そのような意識があったから選択できたのだと思います。
根気よく取り組むこと。チャンスを逃さないこと。この2つの教訓を胸に、これからも突き進んでいきたいです。

Column

どんな環境にも臆さず飛び込む積極性が形成された。

幼い時は周りから「もの静かな子」と言われていました。そんな私が堂々と海外で研究発表できるようになったのは、小学校の時に英語でのコミュニケーション力とプレゼンテーション能力が養われたからです。小学校低学年からネイティブの先生の英語を聞き、ワールドウィークや留学によって国際交流を経験してきました。そのおかげで異文化に触れることや英語で話すことへの抵抗はなくなりましたし、世界中のどこで誰と話しても相手を理解しようとする気持ちや、怖がらず異文化に飛び込む姿勢が身についたと感じます。また、自然と人前に立つことにも慣れ、自信を持って伝えたい内容を相手に届けられるようになりました。中学から大学院に至るまでのロボット大会や研究発表、インターン先での取り組みなど様々なチャレンジにつながっています。

Goal

研究と就業を両立させ、世界で活躍できる人材になる。

大変ありがたいことに、現在のインターン先である株式会社ACESから、学生を続けながら正社員として働ける時短正社員のオファーをいただきました。来年からは大学院生として研究に取り組みながら就業する予定です。研究と就業の両立は簡単ではありませんが、努力次第で多くの経験を積めると考えています。
現在の目標は、研究とインターンで身につけた力を社会に活かし、日本の産業を発展させること。国際交流の経験も活かして、ゆくゆくは世界での活躍を目指します。

Message

入学希望者へのメッセージ

立命館小学校では、ロボットの授業やワールドウィークといった貴重な経験ができます。私が自分の好きな分野や熱中できるものを発見するきっかけに出会えたのは、小学校での様々な体験があったからです。自ら動いて得られる経験は、みなさんを大きく成長させることでしょう。チャンスが訪れたら逃さずつかむという積極性を持ち、普段から準備することを心掛け、臆さずチャレンジしてください。

※プロフィールや内容は掲載当時のものです