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Interview 07

世界を視野に入れて好きなことを続けられる幸せ。

Interview 07

世界を視野に入れて
好きなことを続けられる幸せ。

レーシングドライバー 太田 格之進さん (2011年卒業) 2024.03.04

Introduction

立命館小学校3期生。立命館中学校・高等学校を経て立命館大学法学部に進学。鈴鹿レーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)を経て、現在本田技研工業契約のプロドライバー。趣味はゴルフ、特技は人前で話すこと。座右の銘は「彼を知り己を知れば百戦殆からず」。

Growth Trajectory

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1,000分の1秒を争う
トッププロの世界。

本田技研工業契約のレーシングドライバーとして、国内レースに出場しています。レーススケジュールはランクごとに異なりますが、シーズンはだいたい4月から11月までで、8〜9ラウンドを走行します。1ラウンドは、金曜日のフリープラクティス(公式練習)と、土日にかけて予選と決勝が行われ、それ以外の日はレース準備に時間を費やします。私は2019年にフォーミュラカーレースの入門レースである「FIA-F4選手権」でデビューして以来、ステップアップを重ね、昨年2023年度は日本で開催される最高峰レース「SUPER FORMULA(全日本スーパーフォーミュラ選手権)」と、「SUPER GT」の GT500クラスに参戦。「SUPER FORMULA」の最終戦鈴鹿大会では初優勝を飾ることができました。
レースというのは芸術的なものだと常々感じています。モータースポーツは、レーサー×エンジニア×メカニックのコンビネーションで成立する世界。三者の総合レベルが高いほどレース結果にも反映されます。しかし、どんなにエンジニアが優れていてもドライバーがその車を乗りこなせなかったら、総合的なレベルは下がり、結果は伴いません。予選コースを1周走るのにかかるタイムはわずか1分から1分30秒ほど。私たちはこの約1分に人生を賭けます。普通に生きていたら、そんな経験はなかなかできないことだと思います。さらに、レース後の結果をチェックすると、1位と2位の差がわずか1,000分の1秒しかないこともよくあります。まさにこれが芸術的だと思える瞬間です。集まるチームはすべて日本のトッププロ。それぞれが最高の仕事をして、それが1,000分の1秒というごくわずかな違いになり、勝敗が生まれる。カーレースならではの面白さの一つだと思います。

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責任を担ってチーム間で対話
レースを勝ち抜く自信につながる。

大会のレース前でもこれといって決めているルーティンはほとんどなく、普段通りサーキットに向かいます。プロドライバーとして大事にしていること、つまり自分が速く走るために最も必要不可欠なことは、「負けないぞ」という自信を常に持つこと。とは言っても、自信は持とうと思って持てるものではありません。それでも私の場合、そもそも負ける気がしないんです。「これだけの準備をして、負けるわけがない」と思える、それだけの準備は徹底して行うようにしているからだと思います。
私にとっての「準備」とは、自分を支えるチームメンバーとの良好な人間関係をつくること。例えばエンジニアはパソコン上のデータを見て数値で状況を説明しますが、車を操るのはドライバーの私です。ドライバーは車に乗ったときのフィーリングで話しますが、そのフィーリングはエンジニアのパソコン上では分からない。だから、何事も「これ、分かるよね?」というスタンスではなく、分かっていないかもしれないという想定で言葉を選ぶ意識をしています。ドライバーのフィーリングと、エンジニアが思う最適解が寸分疑わず一致できるようにすること。これが私の考える「準備」です。
もう一点、プロドライバーとして大事にしていることを挙げるならば、「責任」です。エンジニアとの対話で、頻繁に「絶対こっち!」と自分の意見ばかりを押し通していると、間違う可能性も増えてしまう。強要して結果が出なかったら、ドライバーとしての信頼を損なうことになり、「絶対」の信憑性が下がってしまいます。そういう意味で、先ほど言った「自信」には「責任」が必ずついてくるものだという思いで取り組んでいます。

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次に進むため「諦めの早さ」も大切。
何事も楽しめるように。

私のレーシングデビューは3歳のころ。父親に連れられてサーキットに行ったことがきっかけです。父親はモータースポーツ経験者でもファンでもなく、子どもと長い時間一緒にいられるスポーツだから選んだと聞いています。スポーツクラブに「お願いします」と子どもを預けてしまうだけなのは寂しい。父子で一緒にいる時間が長く、同じ話ができることに魅力を感じたようです。
小学校に入学してからは、平日は普通に学校に通い、週末はサーキットに行く生活。当時、レーサーとの両立という感覚はなく、大変に思ったこともありません。幼い頃から負けん気は強く、学校のスポーツフェスティバルなど勝負欲をかき立てられるイベントには力が入りました。中学や高校ではレース成績を学校で表彰していただく機会もがあり、最初は照れ臭さもありましたが、徐々に慣れて、人前に立って話す練習になったと今では感じています。
正式に仕事としてレーサーになろうと思ったのは、高校卒業後の進路を考えた頃。レーサーになりたいという思いより、レースが好きでやめたくなかったからプロに進みました。厳しいレーシングプロの世界、十数人ほどのドライバーしか走れない椅子取りゲームを生き残るためにはメンタルの強さが必要です。私の場合、諦めが早いという性格が役立っていて、結果に固執しすぎず、負けた時も「次、頑張ればいい」と、気持ちは次の練習に向かっています。切り替えを意識することもなく、一瞬で勝手に切り替わる感じですね。だから、オンオフ問わず今は毎日が楽しいです。仲のいい友人との時間や趣味の時間はもちろん、平均して何でも楽しめる自信があります。

Column

自分のことで泣いてくれる友人

小学生時代からの友人とは中学や高校も共に過ごし、今でも仲良くしています。一緒にいる時間は何ものにも代え難く、一番居心地のいい関係です。よく大人数でレースの応援にも来てくれます。友人にレースの解説を求められるのですが、それが結構難しくて。レースについて知らない人にも分かりやすい言葉を選んで説明するよう続けてきたからこそ、チーム内での対話の重要性にも気づけたと今は思います。
昨年のシリーズ最終戦で1位になり優勝した時は、友人が観客席で号泣していたと聞きました。自分が頑張ったことで友人が泣いてくれることなんて、人生の中でそうありません。感謝の思いがあふれ、幸せな気持ちになりました。

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Goal

世界を目指す

現在活動の舞台となっているSUPER FORMULAは日本最高峰のカテゴリーです。まずはここでチャンピオンになること。そうすれば、世界への道が開きます。国内のスター選手から世界のスーパースターになる、というのが今の目標です。できるだけ長く、大好きなレースドライバーという仕事を続けたいですね。

Message

入学希望者へのメッセージ

小学校で仲のいい友人をつくることはとても大事。立命館小学校は、協調性を育む環境が整っています。私自身、小学校からの友人たちやそのご両親とも長くお付き合いが続いていて、今でも出会いに感謝しています。成長期のこの時期は、勉学だけでなく「関係性づくり」も大切にしてほしいと思います。

※プロフィールや内容は掲載当時のものです