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2022.03.11

アジア日本研究国際シンポジウム2022コアセッション“Ritsumeikan and Meridian 180 as an International Policy Think Tank”を開催しました!

アジア日本研究国際シンポジウム2022 “Asia Japan Research Beyond Borders: Global Sharing of Local Wisdom towards Human Longevity”におけるコアセッション、“Ritsumeikan and Meridian 180 as an International Policy Think Tank”を立命館大学アジア日本研究所の主催で開催しました。

司会:森裕之教授(立命館大学政策科学部)
開会挨拶:徳田昭夫教授(立命館大学副学長・立命館アジア・日本研究機構副センター長)
ゲストスピーカー:
吉田友彦 教授(立命館大学政策科学研究科)
タイトル:“Smart & Shrinking Cities”
永野聡 准教授(立命館大学産業社会学部)
タイトル:“Gerontology and Social Technology”
阿良田麻里子 教授(立命館大学食マネジメント学部)
タイトル:“Social Development and Science Technology for Food /Agriculture”
コメンテーター:アリ=ヴェイッコ・アンティロイコ 教授(フィンランド・タンペレ大学経営学部)

2022年2月25日 (金) 、アジア日本研究国際シンポジウム2022“Asia Japan Research Beyond Borders: Global Sharing of Local Wisdom towards Human Longevity”のコアセッション“Ritsumeikan and Meridian 180 as an International Policy Think Tank”が開催されました。

コーディネーターの森裕之教授が開会挨拶を行いました。本セッションは、英語で行われ、主に日本から多くの方々にご参加いただきましたが、日本語、韓国語、中国語で同時通訳も行いました。

セッション冒頭では、徳田昭夫教授からもご挨拶をいただき、“Beyond Borders”というキーワードについて、立命館大学の平和、民主主義、生物多様性、創造の基本的な方向性を表現しているということにくわえ、153年前の立命館の始まり、Meridian 180の世界的なフォーラムとしての意義とこれまでのその成果、相互理解のためのネットワークづくりの重要性などについてお話いただきました。

森教授は、Meridian 180について、2011年に起きた東日本大震災への国際的な学術的対応として設立された国際的な政策シンクタンクであることを示しました。Meridian 180が関わる世界的な世界的な国際会議として、“Democracy and Truth”(民主主義と真実)、“Data Governance”(データ・ガバナンス)、“Diversity in Density”(密度の多様性)、“Innovations in Crisis”(危機におけるイノベーション)などが挙げられます。また、森教授は、立命館大学が主催した3つのシンポジウム、“Smart & Shrinking Cities”、“Gerontology and Social Technology”、“Food and Agriculture beyond the Pandemic”を紹介しました。本セッションの講演者からは、これらのシンポジウムの背景とその後の進展などについて説明をしていただきました。

まず、吉田友彦教授からは、立命館大学が主催するMeridian 180プロジェクトとして2019年に開催されたオンライン・フォーラムである“Smart & Shrinking Cities”に関連して、地域の事例を共有したうえで、開催に至った経緯を中心に講演がなされました。

吉田教授は、多様かつ活発な参加者が様々な情報を持ち寄り、異なる地域の人々の間で資源や発見を共有できるオープンなデータソースを使用することで可能となる開かれた透明性のある統治モデルとそれに基づく都市のヴィジョンを示し、民間企業や政府の間の民営化や秘密主義などの様々な障壁を克服するための潜在的な解決策を示しました。くわえて、吉田教授の講演では、世代間の社会移動や都市の縮小に伴う新たな住宅問題から、高齢化社会におけるスマート技術の導入によって京都市がどのように変化したかに関する事例研究に至るまで、多くの点に言及していただきました。最後に、吉田教授は、シンクタンクの政策を強化・拡大するためには、国内と国外の学問の間にコミュニケーション・チャンネルを開く必要があることを強調しました。

次に、永野教授から“Gerontology and Social Technology”に関する取り組みについて、2050年には世界人口の16%が65歳以上になるという国連の報告書の予測に関連させてご講演をいただきました。講演では、人とのつながりや意見の共有を容易にし、高齢化問題を効率的に解決する方法としての「社会的技術(Social Technology)」という視点が強調されました。それに加えて、永野教授は、高齢者がより積極的な役割を果たす地域社会を構築するために必要なこととして、高齢者の技術リテラシーの向上を挙げました。結論として、永野教授は、長寿の健康と老年学(gerontology)の理論と実践は、生活に根づきつつ、幅広い問題領域をカバーするものであることを示しました。

最後に登壇した阿良田麻里子教授からは、“Social Development and Science Technology for Food /Agriculture”のタイトルのもとで、食農科学の発展に関連するさまざまな活動を紹介していただきました。食農ビジネスマネジメントは、食料と農業のサプライチェーンにおける食料と農業のサプライチェーンにおける共同的な事業活動を研究するものであり、現在注目を集めている分野です。阿良田教授は、どのようにして既存のアグリビジネスがコミュニティ中心の食料生産と流通に徐々に取って代わられていくのか、また、グローバルな食品市場とアグリビジネスとの関係で、地域の食糧システムがどのように発展していくのかに焦点を当てて議論しました。

すべての講演の後には、アリ=ヴェイッコ・アンティロイコ教授から、非常に洞察に富んだ解説をしていただきました。アンティロイコ教授のコメントは、今日の世界の課題に対応するために、ローカルとグローバルの両面、技術面の問題、問題解決のために政府と企業または地域の人々にどこまで頼ることができるかなどについて把握するなかで、差し迫った社会問題に対処していくための最適な枠組づくりを早急に始める必要があることを強調しました。同時に、アンティロイコ教授は、市場の要求に従うだけでなく、社会的イノベーション、地域性(ローカリティ)、人々中心の問題解決へのアプローチとともに、制度や政府による介入などの方法を採用していく必要があるという点について、本セッションの登壇者と意見を共有しました。

また、アンティロイコ教授は、吉田教授によるスマートシティについてのプレゼンテーションについて、単に技術志向の都市構想であるというよりも、より包括的な「縮小都市」 と呼ばれる社会的・構造的な現象を含んでおり、すべての先進国が直面しなければならない問題であることを示している点で重要であるとコメントしました。同時に、オープンなデジタルプラットフォームが具体的に何に寄与するのか、われわれが協働したい利害当事者は誰なのかといったデリケートな問題に関して、

アンティロイコ教授は、オープンなデジタルプラットフォームが具体的に何をすべきなのか、あるいは、われわれが関与したい利害関係者は誰なのか、などのデリケートな問題については、可能な限り最善の方法を確立する必要があり、慎重に取り組んでいくべきだと強調しました。同時に、アンティロイコ教授は、これらの問題が、新たな都市構想と社会問題をめぐる先端的な問題になるであろうことを指摘しました。

永野教授の発表に関して、アンティロイコ教授は、高齢者の健康だけでなく、高齢者の社会への貢献とその価値をも考えるべきかどうかを論点に挙げました。そのうえで、アンティロイコ教授は、技術のリテラシー、世代間関係、高齢者の市民としての位置づけを考えていくべきであるという点を強調しました。それと同時に、私たちはダイナミックな成長過程か制度設計に依拠すべきなのか?高齢者がクリエイターの価値を認識するために、どのような活動が必要なのか?また、高齢者の社会とのつながりや交流をどのように広げていくべきなのか?アンティロイコ教授、これらの重要な問いかけをしました。

最後に、アンティロイコ教授は、阿良田教授の講演について、グローバルな時代であると言われているにもかかわらず、それぞれの人が地域社会に生きているという、人間の生の基本的な状態を示しているとコメントしました。地域の食品システムと世界の食品市場やアグリ事業との関係をどのように理解すべきかということは重要な問題です。アンティロイコ教授は、食料生産とその配分の共同体単位を単位とした発展について、今後ますます重要になって来る課題であろうことを示唆しました。