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2022.08.01

【レポート】国際シンポジウムを開催しました!“International Symposium of Meridian 180 on City, Public Value, and Capitalism”

 7月23日(土)に国際シンポジウム“International Symposium of Meridian 180 on City, Public Value, and Capitalism”を立命館アジア・日本研究所(AJI)とノースウェスタン大学バフェット研究所との共催で開催しました。会場は立命館大学大阪いばらきキャンパスのクロノトポス(B棟5F)を拠点とし、立命館大学とノースウェスタン大学、そして、各国のMeridian 180のメンバーらを対面とオンラインのハイブリッド形式で実施しました。

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当日の会場の様子

 本シンポジウムは、立命館アジア・日本研究所が4年がかりで取り組んできた都市研究プロジェクト“Smart & Shrinking Cities”の成果であるMori, H., Yoshida, T., and Anttiroiko, A. (eds.), City, Public Value, and Capitalismが刊行されたことを受け、その出版記念イベントとして企画されたものです。
(電子版のリンクはhttps://city-public-value-and-capitalism.northwestern.pub/)

 シンポジウムの冒頭に、森裕之教授(立命館大学政策科学研究科長)が開会の辞を述べ、続いて徳田昭夫教授(立命館大学副学長)からのVTRメッセージが配信されました。それに続いて、森裕之教授がCity, Public Value, and Capitalismの刊行に至るまでのプロセスを図示しつつ、立命館大学が主催してきた国際カンファレンスやMeridian 180を通じたオンライン・フォーラムやグローバル・サミット、編者・執筆者会議などの様々な取り組みが同書に結実したことを説明しました。

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司会の森裕之教授

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開会式にて招聘者に歓迎の言葉を述べる徳田昭雄教授

 国際カンファレンスの最初のセッションとして、ノースウエスタン大学バフェット研究所長のアナリース・ライルズ教授による基調講演が行われました。ライルズ教授はMeridian 180の開発・運営責任者であり、City, Public Value, and Capitalismの刊行においてもレビュアーの選定、電子書籍システムの開発・改善、出版社との交渉など、全面的かつ献身的な協力を行ってきた本プロジェクトの責任パートナーです。ライルズ教授は、本書の意義について述べられた後、今後の都市政策に関わる政府のあり方などの残された課題について言及されました。

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新刊を手に基調講演をするアナリース・ライルズ教授

 続くセッションでは、City, Public Value, and Capitalismの編者である吉田友彦教授(立命館大学政策科学部)およびアリ-ヴェイッコ・アンティロイコ教授(タンペレ大学経営管理学部)による同書の内容紹介ならびに学術的意義と課題についてお話しいただきました。

 吉田教授は、同書の1章で示されている市場―コミュニティの四象限モデルを用いて、各章で紹介されている様々な都市の実践を応用した場合に見えてくる研究方向をわかりやすく示しました。

 アンティロイコ教授は、本書の全体を貫く都市の変化がpost-capitalismにおける公共価値の創造にあるとし、未来社会においては幸福と公共価値が経済指標に代わる新しい都市の指標となり、そのための積極的な役割を都市自身が果たしていくことの重要性を強調しました。

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会場で報告する吉田友彦教授

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オンラインで報告するアンティロイコ教授

 次のセッションでは、City, Public Value, and Capitalismのレビュアーを務めたクロヴィス・ベルジェー教授(ノースウェスタン大学カタール校)およびニコラ・ドゥエイ教授(グルノーブル大学、シカゴ・フランス総領事)による総括コメントが行われました。

 ベルジェー教授は、同書の書かれた背景にある縮小都市に焦点を当て、そこで展開されているイノベーション空間としての意味や社会的包摂の重要性について言及し、現代都市のもつ複雑性やダイナミクスを踏まえた政策の必要性について示唆されました。

 ドゥエイ教授は本書の整理に基づいて、将来の都市政策に関するプロセス-目的の四象限モデルを提起し、プロセスには政治的-技術的、目的には移行-成長の軸を描きつつ、現在起こっている都市の実践を整理していくことを論じました。

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会場にて報告を行うベルジェー教授

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オンラインで報告を行うドゥエイ教授(画面右側)

 休憩を挟んだパネルディスカッションでは、質問として出されたCOVID-19の都市に与える影響について議論され、とくにリモートワークの普及が都市や地域にどの程度の変容をもたらすのかが焦点となりました。これに対して、吉田教授は徳島県神山町の事例などをとりながら、リモートワークの展開が都市の抱える遊休資産の活用と新しいイノベーションを切り拓く可能性を示唆し、それが普及することによって都市構造は大きく変わることにもつながると論じました。また、コーディネーターである森教授がパネリスト全員に対して、同じような事例が各国や各地域で展開していないかどうかを尋ね、いくつかの事例紹介とともに今後の展望について話されました。

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パネルディスカッションでの登壇者の様子

 本シンポジウムの最後には、小杉泰教授(立命館アジア・日本研究所長)から閉会の辞が述べられ、この都市研究の意義とそれを支えたMeridian 180の発展への期待、そして、パートナーとしてのノースウェスタン大学との連携協力のさらなる強化について話されました。

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閉会の辞を述べる小杉泰教授(画面左およびスクリーン内)

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刊行された書籍を手にシンポジウム前に参加者とともに集合写真を撮影