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2022.10.13

【レポート】第48回AJI研究最前線セミナーを開催しました!青井大門氏が3次元計測点群の半透明立体視における視覚ガイドとしてのエッジ強調について発表。

  2022年10月11日(火)、第48回AJI研究最前線セミナーがオンラインで開催されました。今回は、青井大門氏(立命館大学大学院 情報理工学研究科・博士課程)が「3次元計測点群の半透明立体視における視覚ガイドとしてのエッジ強調」と題して、研究発表を行いました。

 医療や科学、エンターテインメントなど現代社会のさまざまな領域で使用されているCG(Computer Graphics)ですが、青井氏は文化的建造物の内部構造を可視化するためにその技術を用いる研究を行っています。今回は、3次元データで再現された内部構造の奥行をいかに実物に近づけるかという技術的問題の克服を目指した興味深い発表が行われました。発表では、青井氏が取り組んでいる京都・祇園祭で使用される山鉾の内部構造が対象として取り上げられました。青井氏の研究は、山鉾の内部構造を半透明に可視化し、その実物の立体構造を3Dデータで再現することを目指すものです。

 半透明可視化技術には、3次元データを通じて対象の内部構造を明瞭に把握することができるというメリットがある一方で、奥行の長さが過小評価される、つまり、実際よりも奥行が浅く認識されることがわかっています。この問題に対して、青井氏は、対象物のエッジ(接線、へり)に赤色の強調線を加える技術的操作を通して、3次元データの立体感が視覚に対して強調され、それに伴って奥行への知覚が正解値に近づくことを実際の研究データから立証しました。さらに、青井氏は、現状では見えにくい立体構造の背面を可視化する際、エッジの表示にさらに工夫を加えることで、より正解値に近づくための研究が必要であることを強調しました。今回の発表では、CG技術を使って文化的建造物の内部構造を可視化することの社会的意義や、実際のCGの画像がたくさん紹介されたことで、専門外の参加者にも非常にわかりやすく、また、知的好奇心を刺激する大変興味深い発表となりました。

 発表後の質疑応答では、すでに、ほとんど消失した対象の全体を断片情報から再現することの可能性、また、その中で奥行が過小評価されることの意味、また見る角度によって物体の立体感が崩れてしまう可能性など、本研究の本質に関わる質問や、可視化技術の正解値を判断する基準が人間の視覚機能に依存するという事実が青井氏の研究に与える影響といった、人間と技術の関係をめぐる哲学的な問いまで、多岐にわたる有意義な議論が交わされました。

フロンティア48青井2
発表を行う青井氏