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2023.05.26

【レポート】立命館大学・オーストラリア国立大学公開講演会を開催しました!“Election Observation: Its Role in Measuring and Promoting Electoral Integrity”(Dr. Kerryn Baker,2023年5月18日)

 5月18日、オーストラリア国立大学 (ANU) のケリン・ベイカー先生(Dr. Kerryn Baker)をお招きして、立命館大学で、ANUによるパプアニューギニアにおける選挙監視についてご講演いただきました。講演では、選挙監視が選挙の公平性かつ透明性を担保するために重要であるだけでなく、公平な選挙を研究するための貴重な方法でもあることについての議論が示されました。国際的な選挙監視は、政府や地方の関係者による不正行為を抑止し、選挙制度に対する国民の信頼を高めることによって、選挙プロセスの質を高めるために不可欠です。くわえて、ベイカー先生によれば、特定の国の選挙制度の質を明らかにするには、選挙の公平性に関する普遍的な知識と現地固有の文脈に即した知識を実践的に組み合わせることが極めて重要です。

 ベイカー先生の講演では、公平な選挙の定義と選挙監視の重要性について説明がなされた後、ニコール・ヘイリー(Nicole Haley、オーストラリア国立大学)教授が主導したパプアニューギニアにおける国政選挙の選挙監視に対する、ANUが行った研究アプローチが紹介されました。ANUの研究アプローチの特徴は、長期的 (ANUは何十年にもわたってPNGの選挙監視に関与してきた)かつ大規模であること、また、複数の方法 (投票前、投票中、投票後のキャンペーンの観察、主要な選挙関係者へのインタビュー、投票前後の市民への調査) を含んでいることです。また、このアプローチは、選挙関係者とつながりを作り、国際監視員よりも地域文化に詳しい市民監視員を採用するところにも大きな特徴があります。こうしたアプローチを通じて、パプアニューギニアにおける選挙の性質が地域によって異なることを明らかにしました。その研究結果によれば、一部の地域では、他の地域よりも多くの選挙不正や不正操作が行われていました。また、投票率の低下も相まって、パプアニューギニアの選挙の公平性は徐々に悪化してしまいました。

講演を行うベイカー先生(@立命館大学衣笠キャンパス)
講演を行うベイカー先生(@立命館大学衣笠キャンパス)

 講演の総括では、このような研究プロジェクトは費用と時間を要するにもかかわらず、こうした包括的かつ大規模な研究が選挙制度の完全性を分析するうえで極めて重要である点が強調されました。そのためには、現地な知識を現地の人々から学ぶことが不可欠であることも強調されました。というのも、国際監視団が存在するだけでは必ずしも不正選挙を抑止できず、市民監視団は国際選挙監視団よりも選挙の質を高める上で価値があるからです。この点に関して、ベイカー先生は、国際監視団の役割は依然として重要であるものの、その役割をもっと明確にしなければならないことも指摘しました。

ベイカー先生との記念撮影
ベイカー先生との記念撮影(右:小杉泰教授(立命館アジア・日本研究所所長)/左:足立研幾教授(立命館大学国際関係研究科教授)