2010年12月27日更新

人に優しいエスコート型リハビリロボット

永井 清
立命館大学理工学部ロボティクス学科教授
永井 清(立命館大学理工学部ロボティクス学科教授)
博士(工学)。1959年埼玉県生まれ。1987年京都大学大学院工学研究科精密工学専攻博士課程退学。米国スタンフォード大学客員研究員、英国レディング大学客員研究員などを経て、2007年から現職。研究テーマは、次世代ロボットの開発。
「旅行が好きなので、年に数回の外国出張が一石二鳥。父を連れて季節の花を見に行くことが増え、2011年も正月の水仙から始める予定です」
ロボット医療

ロボットの応用範囲は無限といってよく、最近は様々な福祉ロボットも発表されている。しかし、「実用化されているのはごく一部。現場では、違和感なくすぐに使えて、何よりも人に優しい道具でないと受け入れられないのです」と永井清は語る。

すでに、障害のある人が自分で車イスからベッドなどに無理なく移乗できる「パワーアシスト装置」などを開発してきたが、目下の課題は、英国研究者と協力して取り組んでいるリハビリロボットだ。写真の装置は先端を前腕に取り付け、腕の運動機能回復訓練を支援する。試作品なのでゴツく見えるが、予想外の急な力で肩を傷めないように人のわずかな動きをすばやくキャッチして、腕を誘導する繊細さを備えている。関節内部で2つのモーターの動きを組み合わせ、あたかも理学療法士が寄り添って行うように腕を柔らかくエスコートしてくれるのだ。

脳卒中の発症後には、病床で行う急性期リハビリから、自宅で行う維持期リハビリに至る一連の支援が重要となるが、このロボットの構造であれば、座る姿勢を保ちにくい急性期リハビリにも適用可能であり、装着も簡単で持ち運べるサイズに改良できる。日本は超高齢化が進行しており、脳血管系の障害も増加していくと予想されるが、リハビリ医や理学療法士などの数は十分とはいえない。早期にポータブルな実用化を期待したいロボットなのだが、さらに永井は脳神経系を加えた総合的な研究に取り組んでいる。

「生体信号とロボットの両面からリハビリを支援する仕組みです。たとえば腕を動かそうという脳信号をキャッチしてロボットが動作を支援する。その腕の動きが今度は脳神経にフィードバックされる。この繰り返しで効果的なリハビリが可能になります。これから3年以内に完成したいですね」

人がユーザーとなって使うリハビリロボットやパワーアシスト装置の開発に取り組む一方で、超高速で動くメカニズムも開発している。半導体製造ロボットなどに応用できるこの技術は、動きがあまりに早過ぎて人間の眼では残像しか見えないため、分身の術ができる「NINJA(忍者)」と名付けた。

「様々な制約がある中で、現場の要求を満足させるためには、いくつもの連立方程式を同時に解くことが必要。だからロボットは基本的にゼロから開発します。既存の借り物で解決できることは少ないですから。言葉では表現できないニーズもあるので、介護施設で皆さんの行動を一日中座って観察したりもします」

ロボットといえば技術開発と思いがちだが、永井は「実はソリューション、問題解決が我々の仕事です」

AERA 2010年12月27日発売号掲載 (朝日新聞出版)
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半導体製造装置分野への応用が期待される超高速ロボット「NINJA(忍者)」


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