2011年2月28日更新
ヒントは映画『スター・ウォーズ』のずん胴型ロボット「R2-D2」だったという。ちょっとカタチは違うが、ロボットがビルの中で人間の先回りをして、行き先を示す矢印を壁などに投影。レストランに行きたいと思えば、地図で探さなくても目の前に矢印が現れ、目的地まで連れて行ってくれる。
この新しい情報掲示ロボット「Ubiquitous Display」を開発したのが李 周浩だ。
「携帯電話の普及や電子端末の発展によって私たちはいつでも情報を得ることができます。ただ、常に機械を持ち歩いて、機械に聞かなければならない。だから、ロボットそのものを『動く情報メディア』として使うことを考えています」
「U.D」はプロジェクターを搭載した移動ロボットだが、人間の位置や視線を把握し、最も効果的な場所に欲しかった情報を映してくれる。
たとえばオフィスの受付からの案内はもちろん、来訪者の興味に合わせて業務内容の詳しい紹介も可能だ。街頭で「この店はどんなところかな」と立ち止まれば、即座に視線の先に店内の様子と扱っている商品やメニューなどを映し出すこともできる。あちこちの繁華街や名所旧跡でそんなロボットが活躍すれば、外国人観光客の間でも、すぐに人気者になるはずだ。
「人間が情報を入手するのではなく、情報が自らそれを必要とする人間に近づいていくこと。それが私の基本テーマです」
その発展形が、タイムマシンである。李が「知能化空間」と呼ぶ研究室がそれだ。室内には数十台のカメラや各種のセンサーがあり、人間の動作や発言内容、その時の表情まで全て記録し、データとして蓄積している。それだけではない。裸眼でもみえる3次元映像技術も開発した。
「記録できる情報量を増加して検索性を高めれば、現在の自分が映画『アバター』のように、過去の世界を自由に動き回れるようになります。つまり、バーチャル(仮想空間)なタイムマシンですよね」
仕組みと理論はすでにあるので、これは決して遠い未来のことではない。子供の頃の曖昧な思い出を明確に再現して、その世界を追体験することも可能だ。『ドラえもん』のエピソードにあったように、亡くなったお婆ちゃんと再び会話もできるほか、トラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心的ダメージを原因から根本的に解消する医療への活用も考えられる。
「『いつでも、どこでも、誰でも』使えて、生活を便利に楽しくするためのアイディアはまだまだあります」
李の研究室は、SF映画の世界をも実現する、まさに「未来工房」なのだ。
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