2011年3月14日更新

以心伝心でつながる!「未来型パートナーロボット」

島田伸敬
立命館大学情報理工学部准教授
島田伸敬(立命館大学情報理工学部准教授)
博士(工学)。1969年北海道生まれ。1997年大阪大学大学院工学研究科電子制御機械工学専攻博士課程後期課程修了。2004年から立命館大学。研究テーマはヒューマンインターフェース、知能ロボットなど。中学生の頃、SFアニメに刺激を受けて、ロボット研究者の道に。「ゴルフが好きだったんだけど、最近はインドア派。それでもアメフトなどスポーツを見るのは大好きです。最近では『ロケみつ』のブログ旅に夢中になってます」

写真/島田が両側に抱えているのはNECが開発したロボット「PaPeRo」。このマシンに内蔵されたコンピューターのソフトウェアを開発することで、人間の顔認識や複雑で高度な会話機能を持つ「パートナー・ロボ」が誕生した。
ロボット

以下はロボットと人間の会話だ。

ロボ 「こんにちは。伊藤さん」
伊藤「久しぶりだね、ロボ君」
ロボ「なんだか元気がないね。どうしたの?」
伊藤「実は、友達に借りた本が見つからなくて……」
ロボ「それはどんな本?最後はどこにおいたの?」
伊藤「青い表紙の本だよ。お昼休みにこの部屋で読んでいたんだけど。似たような本があったから、誰かが間違えてしまったんじゃないかなぁ」
ロボ「じゃあ、お昼休みに来た人たちに聞いてみるよ」
伊藤「ありがとう!助かるよ」

人間の生活を支える様々なロボットが誕生している中で、対話ができる知能を搭載しようとしているのが島田伸敬である。冒頭ではロボットが人を「伊藤さん」と認識して、友達のように会話を展開している。

対話能力をもった知能ロボットとのデモンストレーション

「設定した条件の中で応答させるのは簡単。会話の内容や表情から相手の気持ちを読み取って、話しかけてくれるロボットを作っています」

さらに、島田は多くの人が出入りするオフィスなどで、大量に記録した映像データから必要最低限の指示を行うだけで、目的のシーンを検索できるシステムも開発している。このシステムに「青い表紙の本を持って行ったのは誰?」と聞くだけで、そのシーンを割り出すことができるのだ。これらを組み合わせれば、すぐに「青い本」は伊藤さんの元に戻ってくるはずだろう。

「何が大切なことかを考えて、自ら情報を集めて判断するロボットを目指しています。たとえば2人の人がいて、それぞれ会議をやる場所を勘違いしていたら、会話の内容からズレを発見して『会議室ではなく研究室ではありませんか』と修正してくれるわけです」

なるほど。職場などにこのロボットがいれば、些細ないざこざを解消してくれるに違いない。

「秘書としての役割はもちろんですが、将来的には誤解を解いてケンカを仲裁したり、人間集団の中でキーマンを見つけて、より合理的な組織行動を促すといったことも考えられるでしょうね」

様々な情報が蓄積されていけば、長く暮らした夫婦のように「あれ」「それ」と言うだけで何のことか正確に理解したり、悩んだ時には親友のように励ましてくれるロボットにもなるという。

「ロボットの形をしたコンピューターではなく、ちゃんと人格を持って感情だって理解してくれる。人間の真のパートナーになれるロボットを育てたいですね」

ロボットと暮らす生活、きっとそれは、ごく近い未来の話なのだろう。

AERA 2011年3月14日発売号掲載 (朝日新聞出版)
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情報システムとのインタラクション


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