2012年12月10日更新

みんなでワイワイガヤガヤ、ITで協働作業の新しいかたちを目指す

高田 秀志
立命館大学情報理工学部教授
高田 秀志(立命館大学情報理工学部教授)
博士(情報学)。1970年山口県生まれ。1991年京都大学工学部情報工学科卒業、1993年同大学大学院工学研究科情報工学専攻博士課程前期課程修了、2001年同大学院情報学研究科社会情報学専攻博士課程後期課程修了。三菱電機(株)産業システム研究所研究員、京都大学情報学研究科研究員(COE)を経て、2006年から立命館大学。2010年から現職。主な研究分野は、協調的活動支援のための分散コンピューティング環境。趣味はドライブと家庭菜園。夏場はトマトやキューリ、冬はダイコンなどの世話に汗を流すという。「実に楽しいですよ。モノづくりの基本は農業にあると思います」
教育IT

カップルがカフェで向かい合って座っているのに、それぞれが無言でスマホいじりに没頭中。こんな光景を見たことはないだろうか。

高田秀志が構築したIT環境を導入した小学校低学年の教室は、それとは対照的ににぎやかだ。たとえば「みんなでロボットを作る」という課題では、児童がマウスを使ってパソコン画面の中で積み木をヒト型に組み上げていくが、他の児童の前にあるパソコンも同じ画面なので、その作業に参加できる。このため教室内には「それじゃ足が短いよ」といった会話や笑い声が絶えないのである。

「児童にパソコンを使わせると、画面に夢中になって他の児童との会話がなくなり、教師も作業の状態が確認しにくいといった問題があります。そこで、普通の感覚で他の児童と連携して作業を進められるシステムを開発したのです」

「隣の子と二人一組でね」などと指示するだけで、「じゃあボクはアタマを作るから」と自主的に作業を分担。その後の作業も楽しそうに進んでいくという。協調心やチームワークの育成に加えて、より高い創造性も期待できるのだが、「今あるパソコンをつなぐだけ」でサーバーなど新規の装置は一切不要という手軽さも際立った特徴だ。

「オブジェクトの動作を他のパソコンとコピーし合うという仕掛けで作られています。複数の人が参加するオンラインゲームと違うのは、画面の積み木を誰かが使えば、それを他の児童は動かせないという現実的な制約。だからこそナマの対話が生まれるわけですね」

こうした協調作業を、高田はパソコンだけでなくタブレット端末にも発展させている。タブレットの端を別の一台に密着させると、ネットワーク接続によって指先一本で写真などを相手に飛ばせるため、旅行の計画をみんなで検討できるなど多彩な応用が考えられる。タブレットを離せば接続は切れるが、この時に「ビリリッ」と紙が破れた音がするのも面白い。冒頭で紹介したカップルも、これがあれば会話が弾んだのではないだろうか。
「ITを紙と鉛筆のような日常感覚にすることが目標。それによって人間同士のコミュニケーションやコラボレーションが、もっと豊かに実りあるものになると思うのです」

AERA 2012年12月10日発売号掲載 (朝日新聞出版)

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