THE INFLUENTIAL READS⽴命館⻄園寺塾で「出会えてよかった1冊」
6期⽣横尾 武士さんの
「出会えてよかった1冊」
ヨーロッパ的普遍主義
ヘーゲルは、「人間は歴史から何も学ばない」ということが歴史からは学べる、と皮肉を込めて語った。歴史を紡ぐ縦糸の視点、同時期に世界を俯瞰する横糸の視点を織り交ぜながら、ファクトに基づいて社会を理解することは西園寺塾の学びの一つである。本書に出会った2019年から随分経過した今もなお、目を背けたくなる状況は無くならず、世界が良い方向に向かっているという実感は得難い。
本書は、前述の縦糸と横糸の現代に至るまでの関係を紐解き、「ヨーロッパ的普遍」という価値観の押し付けこそが人類の多様性を否定することであり普遍たり得ていないという矛盾を指摘している。歴史から学ぶこと自体は人の営みとして行われているはずなのだが、普遍的な価値観が集団の「イデオロギー」として発現する際には、普遍主義が暴走し、ときに暴力も肯定され、他国への干渉も厭わず他者の尊厳を踏みにじってでも敷衍すべきという活動を積み重ねてきた。人類が歴史から学べていないということは残念ながら真実なのであろう。本書の文脈で歴史から学ぶということは、普遍的なものをどのように位置づけるか、これを考えることに他ならない。筆者は普遍的な普遍主義を作り出すことが人類の「チャレンジ」である、と我々に語りかけている。
本塾生はよりよい社会を作るためにそれぞれのフィールドに身を置くものであり、多様な価値観が受容され誰も取り残さない包摂的な社会を、持続可能な形で次代に引き渡す責任を負う。地球上を席巻している価値観の限界に切り込むべく、分断や対立を生まない普遍的な価値観を日本から発信し、織りなす布で傷ついた世界を包み込むことができるのではないか。本書との出会い以降、日常的にこのような変化が内面にもたらされた。本塾の学びのエッセンスはそこにあるという思いから本書を取り上げた次第である。
2024年12月17日
この本を選んだのは…
6期⽣ 横尾 武士さん YOKOO Takeshi
東日本旅客鉄道株式会社 グループ経営戦略本部 経営企画部門 ESG・政策調査ユニット、整備新幹線・幹線鉄道戦略ユニット ユニットリーダー
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