生体機能を分子レベルで解明することを目標としています。現在のところ、主として光合成にターゲットを絞って、天然色素を生体から抽出単離し、これらを有機化学的に修飾することによって、より単純化されたモデル系を構築し、その構造と機能の解明を行っています。また、これらの結果をもとに
・生体系の解明
・新しい反応系の開発
・新素材の創出
・生体分子の代謝経路の解明
・人工光合成系の創製
などを目指しています。
上記のような研究のためには、有機合成の能力は勿論のこと、あらゆる機器を駆使しての構造解析や物性測定などの実験的手法と、コンピュータを用いたデータの解析や結果の予測などの理論的手法とに優れていることが要求されます。
最近では、分子生物学的手法用いた新たな生物有機科学にも積極的に取り組んでいます。
光合成の集光型アンテナ部位については、これまで、色素と蛋白との複合体によって構成されていると信じられていました。しかしながら、我々の研究によって緑色嫌気性光合成細菌の膜外アンテナ部(以下クロロゾームと呼ぶ)においては色素のみが自己集合してアンテナ色素を構成し、蛋白は超分子構造の形成において大きな役割を果たしていないことが明らかになりつつあります。そこで、新たに開発された生体系アンテナ色素分子のモデル化合物を用いた人工クロロゾームの構造とエネルギー移動過程の解明を行ない、さらに本モデル系と生体系とを比較することにより、生体系でのクロロゾームの超分子構造並びにエネルギー移動過程を検討しています。本研究が、現在当研究室のメインの研究テーマであり、国内外からその成果が期待されています。
科学研究費・新学術領域(文部科学省)による「革新的光物質変換」に関する研究支援や平成25年度日本化学会学術賞受賞・2016年光化学討論会特別講演賞受賞も、そのあらわれです。
ポルフィリンなどに代表される大環状π電子系化合物においては、ベンゼンなどに代表される芳香族系低分子化合物とは異なる反応性が見れます。これを利用して、多様な新しい有機反応系の開発を目指しています。
色素分子の自己会合体が、優れたエネルギー移動媒体として機能していることは生体系で見い出されています。そこで、モデル化合物の自己会合体を様々な環境下で調製し、そのエネルギー・電子移動媒体としての能力を検討して、生体を越えるような機能の創出 や人工光合成によるエネルギー問題の解決(科学研究費・新学術領域「人工光合成」による研究支援)を目指しています。
新しい発想に基づく太陽光電池の開発、金属錯体を用いた生体分子の認識、生体分子の多様性から生命進化の探求、化合物ライブラリー構築を指向した(創薬研究も視野に入れた)コンビナトリアルケミストリー、糖鎖による生体情報伝達に関する研究、ゲノム情報に基づくタンパク質発現とその結晶構造と機能(酵素反応)解析[立命館発信の初のNature論文(Nature, 2010, 465, 110)!]など。